殿下と私





(ガチャリと扉が開かれ彼女が入ってくる)



「は〜い、私ですよっと。殿下、お呼びですか?」



(やってきた彼女に一枚の紙を手渡す)



「なんすか、これ?…ふむふむ、、で、殿下!結婚するんですか!?相手は隣国の公女様っすか…そうっすかぁ。い、いやぁ、よかったっすね!ついにあの殿下も結婚ですか、おめでとうございます!」



(辛そうな笑みを浮かべながら彼女はそう言う)



「え?別になんともないですよ?顔色が悪い?気のせいっすよ〜あ、私別の仕事思い出したんで行ってきます!ちょっと待て?ごめんなさい、急ぎの様なので失礼しますね!」



(パタンと音を立てて彼女が出ていく)









(カランカラン。ベルが鳴り響く)



「よいしょっと…この時計台の階段からなら街はよく見渡せますねぇ。懐かしいなぁ、殿下と登ったの。ふうん…あそこが式場。はぁ、今頃殿下は結婚式ですか。移動願い、陛下に出しとかなきゃ」



「せめて好きです、くらい伝えておくべきでしたかね?まぁ公女様が相手じゃ、勝てっこないですよね。いつかこういう日が来るってわかってたはずなんすけどねぇ…」



「…はぁ、誰ですか?失恋して傷心中の私の肩を叩くのは…!?!?」



(振り返った彼女は面白いくらい顔を赤くして声にならない声をあげる)



「で、で、で、で、で、殿下!?どうしてここにいるんすか!結婚式は!?……へ?私の勘違い?結婚するのは第三皇子殿下で、第二皇子の殿下じゃない?え?え?ほんとっすか?」



(あからさまに安堵した様子でふぅ…と彼女は息を吐く。ボソボソとよかったぁという声が聞こえる)



(しばらくすると彼女は何かに気がついた様で震える声で俺に問いかける)






「ち、ちなみに殿下はいつからそこに?私がそこの階段によっこいしょって腰掛けた時から?さ、最初からじゃないっすか!」



(顔を真っ赤にして、うぅ〜恥ずかしい…と彼女は言う。そんな彼女の隣に腰掛ける)



「ニタニタした笑みを浮かべないでください!殿下のことが好きなんすよ!悪いっすか!」



(半ば逆ギレの様な顔で俺のことを見る。そんな彼女が愛おしくて手を取って抱きしめる)



「きゃ!…な、なにしてんすか?私のこと抱きしめて、、、え?俺も好きだ?ゆ、夢じゃないっすよね?殿下が私のこと好き?一目惚れで、ずっと見つめてた?ちょ、ちょっと待ってください!情報量多すぎてパンクしそう…ほ、ほんとなんですね?」



(大人しく腕の中におさまった彼女は不安げな声でそう聞いてくるのでコクリとそれに頷く)



「ほんとなんだ。殿下が私を…嬉しぃ」



(幸せそうにそう告げた彼女は恐る恐る俺の腰に腕を回す)



「殿下、あったかい…………ようやく腕を回してくれたって?そりゃ、私だって殿下のこと好きなんですから」



「あ、匂い嗅がないでください!マーガレットみたいないい匂い?はぅぅ…耳元でそんなこと言わないでください。今にも恥ずかしくて死にそうなんですから。きっと顔も真っ赤ですよね?林檎よりも真っ赤で面白い?せっかく人が勇気を出してるのに笑うんじゃ無いっすよ!」



(それからしばらくお互いの温もりを堪能する)



「そういえばどうしてこんなところに?式に参加していない様だったから探してくると言って抜け出した?何やってんすか、よくそんな理由で抜け出してこれましたね、第三皇子殿下の結婚式なのに…」



「殿下の結婚式じゃないって気付かなかったのかって?衝撃が大きすぎてそれどころじゃなかったんすよ。あぁ、そんなにぎゅっと抱きしめないでください…苦しぃ」



「大体そんなに簡単に抜け出せるんですか?弟の結婚式でしょう?」



「え?は?私との結婚はもう陛下達に認められてるから当然だ?ちょ、ちょっと待ってください!もう外堀埋まりきってるじゃ無いっすか!あぁもう!どうりで最近皇后陛下がお話ししてくださるわけっすね!」



(声にならない声をあげていたが暫くして彼女はすぅと息を吐き出す)



「でも…迎えに来てくれて、嬉しかったです…私は平民ですしきっと陛下達を説得するのも大変でしたよね?ありがとうございます」



「…あぁ、はやく戻らなきゃダメっすよね。これ以上陛下達を心配させる傍にも行きませんし、、、でも、もうちょっとだけ、このままでいさせてください」



(甘える様にそう告げた彼女を俺が突き放すはずもなかった)












(暫く後に)



「あ〜ポカポカのお日様の下で、私は殿下の腕の中。幸せですねぇ」



(スリスリと俺の胸に顔を擦り付けてくる)



「ん〜気もちぃ…え?なんすか?お前は相変わらず小さいな?喧嘩売ってます?人のコンプレックスを……抱きしめやすくて俺は嬉しい?何言ってんすか!?もう!」



(ぽこぽこと俺の胸を叩く)



「…まぁ今日はこのくらいで許してあげます。小さい女の子が大好きな《ロ リ コ ン》殿下…ふぎ!やめてくらひゃい。そんなにほっぺた引っ張りゃないで…じょうらんれすって、悪かったからぁ」



(引っ張っていた手が離れる)



「はぁ…酷い目にあった。でも実際殿下は私のどこに惚れたんです?は!隠しきれないこの美貌に?それとも博識なこの頭脳?……馬鹿なこと言うな?やっぱ喧嘩売ってますよね!?流石の私も怒っちゃいますよ?まぁ、私はそんなちょっと意地悪な殿下のことも好きなんですけどね」



(むすっとふくれた様子で俺の顔を見上げる)



「あ〜笑いましたね?珍しく私が素直になったんですよ?そこはかっこよく俺も好きだよ。とか言ってくれたっていいじゃないですか。自分で言うなって?いいですよー。どーせ私はめんどくさい女っすよ」



(彼女はむすっと頬を膨らませながらそう言う)



「そういえば…ってどうしたんですか?その語り口には何やらいやぁ〜な予感がしますよ?」



「え?実は告白されるのは2回目?前、ワイン飲んだ時に好きっていうのは聞いてたぁ!?」



(声にならない声をあげて彼女は赤くなる)



「じゃ、じゃあずっと前から殿下は私の気持ちに気付いてたってことっすか!?そうっすか。私の反応見て楽しんでたってわけですか!もう、最悪!絶対お酒飲みません!」



「可愛かった?そんなこといっても絶対一緒に飲みませんよ!恥ずかしいです!え?二人きりの時だけ?キミと飲むの好きなんだけど…って、そんなこと言われたら断れないじゃないですか…はぁ、いいですよ、二人きりの時だけですからね」



(彼女は渋々、でも満更でもなさそうにフフと笑みを浮かべる)



「その代わり、こんなめんどくさい女ですけど、幸せにしてくださいね?」



(物欲しそうに見上げる彼女にゆっくりとキスを落とす)



「ん…大好きです。殿下」







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