JS登場

僕が頭をかかえていると、突然、部屋の中に女性の声が響いた。

「何か、お手伝いが必要でしょうか」


「うわっ…?!」

急な声に驚いて僕は周囲をきょろきょろと見回したけど、誰もいない。声だけか…。


声の様子からは、普通の人間と違って感情が感じられない。流暢ではあるが抑揚のない平板な喋り方。

これは、システムアナウンスの声? お助けシステムの登場か!…僕は本能的にそう感じた。

今どきのAIなら生成される自動音声もかなり人間っぽいんだけど、システム音声が平板なのはお約束だな。分かりやすいし。


「ご質問などありましたら、どうぞ遠慮なくおっしゃってください」

「助かります…。なら、えっと、まず…。(呼び方は何がいいだろう?…システムだとは思うけどいきなり『お前』じゃあれだし…システムじゃない可能性もあるかもしれないし…)あなたは、誰ですか?」


「ワタクシは、異世界転生助力システム。通称JSです」

「…その通称には問題あるだろ…」


僕は思わず余計な事を口にしてしまった。


「なぜでしょうか」

「え、いやなんと言うか…。えーっと、その…、ちょっと特殊な趣味嗜好を感じさせるというか…」

「そう感じるのは、ごく狭い世界の人々、すなわち日本人の中の特定の属性の方々だけです。一般的には、JSはJawaSprictのことです」

「なにそれ?」

「プログラミング言語の名称です」

「プログラミング? …それはもっと狭い世界の話なんじゃ…?」


「では、ご質問は以上でよろしいでしょうか」

「待て待て、まともな事は何も聞いてないよ!?」

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