第48話【宰相オルダス視点】最後の駒
玉座の間の巨大な扉が開き、あの忌々しい娘――セレスフィア・フォン・リンドヴルムが入ってくる。
全てが、終わった……?
馬鹿な。この私が、こんな小娘一人と、ただのスライム一匹に、敗れるだと?
断じて、あってはならぬ。
「陛下! 何かの間違いです! 全ては、あの娘と魔物が仕組んだこと! あの魔物こそが『災厄の匣』の呪いを解き放った元凶! 今は民衆を騙せても、いずれ真の災厄がこの国を覆うでしょうぞ!」
私は、最後の悪あがきとばかりに叫んだ。だが、覚醒した獅子王の目は、微塵も揺るがない。騎士たちが、私を捕らえんとじりじりと距離を詰めてくる。
くくく……良いだろう。ならば見せてやる。
真の絶望というものを。お前たちが弄んでいた盤そのものを、この手でひっくり返してやる。
「陛下、あなたも、先代と同じだ! 己の権威のために、忠臣の死すら忘れ去る愚王よ!」
私は懐に隠し持っていた、最後の切り札を取り出した。それは、どす黒い水晶のような塊――私が長年かけて『災厄の匣』から抽出し続けた、呪詛の核石。私の心臓と魔術的に繋がった、我が身そのものだ。
「父の無念を晴らす! 愚かな王家もろとも、この国を一度混沌に還し、私が作り直してくれるわ!」
私は呪詛の核石を、自らの胸に突き立てた。
「ぐおおおおおおっ!」
絶叫と共に、私の体は内側から引き裂かれ、黒い瘴気が奔流となって溢れ出した。人としての形は失われ、骨は歪み、肉は膨張し、玉座の間を満たすほどの巨大な呪詛の怪物へと変貌していく。
もう、宰相オルダスではない。私は、この国に終焉をもたらす、歩く災厄そのものだ。
絶望に染まる王族たちの顔が、実に愉快であった。
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