第22話 眩い光

「ふぅ……」


 俺は設置されたソファに腰かけ、ゆっくりと息を吐く。お洒落なカフェでランチを楽しんだ後、俺は希咲良と別れ、少しの間自由行動を取る事にした。


 希咲良が俺を避けなくなり始め、ここで希咲良にアピールを……と焦ってはいけない。


 ずっと希咲良と居られるのはとても嬉しい事だが、俺が居ては見たくても見れない物、買いたくても買いたい物があるだろうと思い、一度別行動をすることを提案したのだ。


 ……まぁ午前中の気まずい空気のせいで疲れたからとか、一旦気持ちをリセットしたいからという理由も無い訳ではない。


 だがこういう余白を作ることで、大人の余裕というか、そういう気遣いも出来る男だと、希咲良にアピールも出来るという、互いにメリットだらけの時間なのだ。


「とりあえず買おうと思ってた文房具も買えたし、あとはゆっくりしてよう」


 肩から力を抜き、ぼんやりと遠くの景色を眺め始める。


「ねぇお兄さん、もしかして一人?」


 ぼんやりすることわずか数分、俺の方に二人の女性が近付いてくる。


 え……え?


「もし良かったら今から私達とお茶しませんか?」

「お兄さんかっこいいですね、どこの大学に通われてるんですか?私達は────」


 ……どうしてこうなった!?


 大学生らしき二人の女性に声を掛けられ、俺の脳がピタリと止まる。どうやら俺の事を自分たちと同じ大学生だと思っているらしい。


 すみません俺高校生です!なんなら高校1年生ですぅ!


「えっと……すみません、お誘い自体は嬉しいんですけど人を待ってまして。……後俺大学生じゃなくて高校生なんで……」


 ソファから立ち上がり、二人に向かってぺこりと頭を下げる。

 

「え!?そうなの!?私達と同じくらいかと思ってた~!」

「高校生なのにすごい大人びてるね~。もしかして彼女さんとデート中だった?ごめんね邪魔しちゃって」

「彼女ではないんですけど……まぁ女の子とデート中なのでお誘いは断らせてもらいます。声を掛けてくださりありがとうございました」


 二人が傷つかないように丁寧に言葉を選んだせいか、頭が疲労感に包まれる。


 まさかこうやって逆ナンされるとは。2度目の人生でも初めての経験なんですけど。やっぱりお洒落するのって大事なんだなぁ……。


 優多の場合は高校生とは思えない大人びた雰囲気も声を掛けられた原因だとは思うが……本人は全く気付いていないらしい。


「え、彼女さんじゃないけどデートってことは好きな人!?キャー!一番楽しい時期じゃん!」

「こら、変に首突っ込まないの。ごめんね?この子恋バナめっちゃ好きなの」

「は、はは……」 


 断って終わりかと思ったら、謎に食いついてきた茶髪のお姉様に俺は苦笑いを浮かべる。


 まずい、この状況を希咲良に見られたら一体どんな誤解を生んでしまうか……考えただけで背筋がぞっとする。


「ねぇねぇどんな子!?その子のどこを好きになったの!?馴れ初めは!?今どんな感じなの!?」

「あぁ……もう、ほら!困ってるでしょ!」

「あでっ……ちょっとくらい良いじゃ~ん」


 じりじりと近寄って来た茶髪のお姉様を黒髪のお姉様が叩いて止める。


 初対面の年上の女性にどう接すればいいか分からなかったから非常に助かる。ありがとう黒髪のお姉様。


「デート中なんだから邪魔しないの!私たちのせいでその子に誤解されたらどうすんの?」

「それは確かに……ごめんね?つい衝動を抑えられなくて」

「ああいえ、大丈夫で────」


 ごめんと謝る茶髪のお姉様に問題ないと伝えようとした次の瞬間、花の匂いがふわりと広がる。それと同時に俺の左腕に柔らかく、温かい何かが触れる。


「あっもしかして彼女さ────ヒッ!?」


 黒髪のお姉様が言葉を発すると、まるでお化けでも見たかの様に顔を青くさせる。よく見ると茶髪のお姉様も、何かに怯えるようにプルプルと体を震わせている。


「き、希咲良……ちょっ!」

 

 当たってる!当たってますぅ!!

 

 希咲良がお姉様方から離れるように俺の腕をぐいぐいと引っ張る。


 気づいていないのか、柔らかい何かがふにふにと腕に押し付けられ、俺の心臓がバクバクと大きく跳ねる。


 布越しに伝わる柔らかい感触に本能がジタバタと暴れ始めたが、理性が本能の首根っこを掴み地面へと押さえつけ、こう言い放つ。


「この状況、希咲良にどう説明すんの?」


 ……や、やばい。逆ナンされて鼻の下伸ばしてたって思われてたらどうしよう!希咲良に幻滅されて俺の人生が色々な意味で詰む可能性がある。心も体(下の方)も終わる可能性がある!


 な、なんて説明したらいい!?いやお、落ち着け……俺は一応被害者だ!それにちゃんと断ろうともしていた!


 ならば変に説明しない方が得策なのではないか?ここで弁明して怪しまれるくらいだったら、素直に「助けてくれてありがとう」と言う方がなんとかなる確率も上がるのではないか?


 よし、次の行動は決まった。「助けてくれてありがとう」、これを言えば断っても迫って来たお姉様方への対応に困っていたことが伝わり、俺は無罪だと説得できるはずだ。


「希咲良、助けてくれてありが──」

「優多君」

「はい!」


 後2文字のところで俺の喉に急ブレーキがかかる。酷く冷たい声音で名前を呼ばれたら誰でも止まると思います。


 あっ、ちなみにブレーキは踏んだけどこれはおそらく間に合わなかったってやつです。なので私の色々な物が終わると思います。今までご視聴いただきありがとうございました!優多先生の次回作にご期待ください!


 諦めの境地に至った俺は、恐る恐る希咲良の方へと視線を向ける。


 そこには俺の予想とは違い、頬をぷくぅと膨らませ、こちらにじっとりとした視線を向ける希咲良の姿があった。


「今は私とのデート中だから……他の女の子のこと、見ちゃ駄目」


 やばい飲まれっ────── 


 優多は希咲良から放たれる、目を開けられない程の眩い光に飲み込まれていく。


 核や太陽をも凌駕する光に飲み込まれてしまった優多、彼の記憶はここで途切れている。



黒髪JD「こわぁ、今時のJKこわぁ。死んだかと思った……」

茶髪JD「……ふ、ふふふふふふ」

黒髪JD「え、どうしたの急に」

茶髪JD「あの鋭い視線……ゾクゾクしたぁ~」

黒髪JD「え、きも」





ちはから

フォロワー様が700人を超えました!

大台までもう少しってマジ?

ほんとありがとうございます。


デートは次回で終わりです。

今回で終わる予定だったんですけどね、不思議ですね。

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