第21話 順調?

 ……気まずぅ。


 俺の妄想では和気藹々とした雰囲気で、のんびりと洋服を見に行く予定だったのだが、現実はどうも上手く行かないらしい。


 俺と希咲良の間には薄い壁が常に存在し、普段であればとても居心地の良い空気が常に漂っているのだが、今日は気持ち悪いとまでは行かないにしても、どこか落ち着かない、そんな少しだけ重い空気が張り付いていた。


 原因さえ……原因さえ分かればなぁ……。


 どうして希咲良が俺を避けているのか、その原因が1時間経った今でも全く分からない。希咲良と仲直りして以来、俺は希咲良に嫌われるようなことも、希咲良に避けられるようなことも何もしていない。


 かと言って希咲良に「俺もしかして何かやっちゃいました?」と聞ける空気ではないし、もし仮にが俺だけが気まずいを感じていた場合────


「優多君は私と居ても楽しくないんだ」


 と希咲良を悲しませ、このことが理央にバレたら俺の大事なところが踏みつぶされてしまう。それだけは絶対に回避しなければならない。


「優多君、ここ見ても良い?」

「もちろん」


 女性用の洋服がずらりと並ぶお店、少し前であれば緊張で体が固まっていただろう。


 しかし、萌花との買い物により俺は免疫を獲得した。つまり希咲良の前で恥ずかしい姿を見せることなくやり過ごすことが出来る。


「わぁ、これ可愛い~」

「お、ほんとだ。希咲良にすごく似合ってそうだな」

「……着てるとこ見たい?」

「え、そりゃまぁ見たいか見たくないかで言われたらすごい見たいけど」


 僅かではあるが、希咲良と目が合う。


「じゃ、じゃあちょっと試着してくるね!」

「あぁうん、いってらっしゃい」


 ……1秒しか目合ってないのに血反吐吐きそう。  

 

 手に持っていた洋服からひょっこりと顔を覗かせる希咲良の上目遣い。希咲良の可愛さに慣れているからこそ耐えることが出来たが、もしこれがそこら辺の男子であれば、理性を失うかあるいは気絶していただろう。


「ふぅ……落ち着け。気を強く持て俺。希咲良が可愛いのは分かり切っているだろう、後は耐えるだけ、耐えるだけだ……」

「ど、どうかな?」


 カーテンの向こうから現れたのはクリーム色のだぼっとしたパーカーと、ベージュ色を基調としたチェック柄のミニスカートを身に纏った希咲良。


「……」

「う、優多君?」

「はっ……ごめん、希咲良が可愛すぎて気を失ってた」


 まずい、意識が飛んでいた。ちゃんと気を張り巡らせていたというのに、まさか持っていかれるとは……。


「その……どうかな?」

「あ、ああ。すごい似合ってるし可愛いと思う。パーカーのダボッとした感じと、丈の短いスカートの対比ですごくフェミニンな感じが演出されてると言うか、可愛さが増してる感じがするし、全体的に色が明るいから優しくて柔らかい雰囲気が──」

「そ、そこまで詳細に言わなくても良いからね!?」

 

 俺のお気持ちコメントに希咲良は顔を赤くさせながら、ストップをかける。


「ごめん、希咲良が可愛すぎて言葉が止まらなくなって……」

「っ……!そ、そんなに可愛い?」

「それはもう、誰にも見られたくないくらい可愛い」

「え、えへへ……。あっ、他にも気になるのがあるから試着しても良い?」

「もちろん。希咲良は可愛いから何でも似合うから楽しみだ」


 そこからは希咲良によるプチファッションショーが開催された。


 可愛い系、綺麗系、かっこいい系、どの系統の服も着こなす希咲良に俺は称賛の言葉が止まらなかった。


 普通であれば似合わない系統の服がいくつかは存在しても良いはずなのだが、希咲良は何を着ても似合うし可愛い。多分そういうチート能力を持っているんだと思います。


「ちょっと早いけどお昼にしよっか」

「うん、わかった」


 時刻は11時30分、お昼ご飯には少し早い時間かもしれないが、この提案をしたのにはちゃんとした理由がある。


「最近できたカフェ、予約しておいたんだ。この前理央と話してただろ?」

「うん、すごい気になってた!」


 出来る男は情報を事前にリサーチしておくもの。ということで希咲良が行きたがっていたお店を予約しておきました。


 ……まぁリサーチと言っても理央からアドバイスされただけなんですけどね。


「それじゃ行こっか」

「うん!」


 希咲良はとても嬉しそうな笑顔を浮かべ、子供の様に勢いよく頷く。

 

 お昼前だというのに既に人で一杯の人気カフェ、予約していなければかなりの時間を待つことになっていただろう。


 理央さんには本当に頭が上がりません、今度何かしら貢がせていただきます。

 

「そういえばもうちょっとで中間テストだね」

「GWは勉強頑張らないとだなぁ」

「私も頑張らないと……特に数学」

「高校に入ってから一気にレベル上がったもんな」


 注文を終え、自然と会話が進んでいく。最初は希咲良に避けられていたが、徐々に希咲良と目が合う回数と時間が増えてきた。なんで避けられていたのか余計に分からなくなったが……まぁよしとしよう。


「……ねぇ優多君、もし良かったらGW一緒に勉強しない?」

「もちろん、喜んで」

「ありがと優多君!あ……それと、ね?」

「ん?どうした?」


 何かを言いたそうに、希咲良は視線を彷徨わせる。それから少し間を置き、希咲良は意を決したのか口を開いた。


「その……今回のテストで、全教科70点以上取れたら、その……ご褒美が欲しいなって」

「俺に出来ることだったらなんだってするよ。なんなら赤点回避したらとかでも良いんだぞ?」

「そ、それはちょっと……」


 なんならテスト受けただけでもご褒美あげるよ?むしろ点数とかどうでもいいからご褒美あげたいです。


「分かった。希咲良が全教科70点以上取れたら、希咲良の願いを一つ叶えるよ」

「……ありがとう優多君」

「どういたしまして、お互い勉強頑張ろうな」

「うん!」

「お待たせいたしました~」


 雑談を繰り広げていると、注文していた商品がやって来た。


「わぁ……」


 やはり人気なお店なだけあって、料理もお皿もすごくお洒落だ。希咲良の注文したドレスドオムライスが1番人気らしく、その評価に相応しい綺麗で美味しそうな見た目に思わず目を奪われる。


 パシャパシャと楽しそうに写真を撮る希咲良に思わず笑みが零れる。喜んでもらったようで何よりだ。


 パシャッ。


 ……ん?今俺撮られた?


 注文したクリームパスタを食べる前に、これまた美味しいと人気のホットコーヒーを飲む。すると明らかに料理ではなく俺に向けられたカメラのレンズとバッチリ目が合う。


 パシャッ。


 ……いや何事も無かったかのように写真撮らないで?





ちはから


少し忙しくて遅れてしまいました!ごめんね!

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