10話 ギルド
数分後、荷ほどきを終えたロミオが階段を下りてきた。
「ユーリ、お待たせ」
「早かったな、もういいのか?」
「うん、荷物も少ないから……」
「そうか、……じゃあギルドへ行くか、案内よろしく頼むな」
「うん、任せて!」
ロミオは握りこぶしを作り、笑顔を見せた。
俺たちは家を出てギルドへ向かった。
ちなみに、ギルドへは俺の家から徒歩10分程度でたどりつける場所にあるらしく、都市の中心部にあるようだ。
俺の家の周りもかなり、人で賑わっているが、中心部へ近づくにつれ、建物や出店、通行人などがどっと増えてきた。
そして歩くこと10分。
俺たちはギルドまでたどり着いた。
そして……
「……おおお、すげぇ……」
俺はまたもや、声が漏れ出ていた。
ギルドは俺の想像よりもはるかに大きかった。
小さな城のような外観で、外壁はレンガ調でできている。
学校とは違って、少し年季の入っている様子だが、不思議なことに、古臭いなどといった印象を抱かない。
「学校にも驚いたが、この国にあるものは全てがでかいな」
「そうだね、ここバラドールは北東最大の大国だからね」
ロミオは俺と違い、落ち着いている様子だった。
きっとこういったところに慣れているのだろう。
なんというか、心強い。
周りを見渡すと、騎士や魔法師だろうか?
学校の制服とは違った服を身にまとった人たちが、3人ほどギルドへ入っていった。
ここへ来たということは、きっとクエストを受けにきたのだろう。
学校といい、ギルドといい、建物の規模に圧倒されっぱなしだが
こんなところで後れをとるわけにはいかない。
俺は特級騎士になって、S級クエストへ行くんだ!
「よし入るか」
「うん」
俺は覚悟を決め、正面の両開きの扉を開け、中に入った。
中もやはり、めちゃくちゃ広かった。
正面から入ってすぐの左手にはカウンターがあり、女の人が3人、カウンター越しに立っている。
カウンターの上にはクエストカウンターと書かれていた。
クエストを受注する受付ってことか。
そして、正面の壁にはA、B、C、D、Eと書かれた大きなボードがそれぞれあり、ボードの上に無数の貼り紙が貼られている。
「ロミオ、あのボードに貼られている紙はクエストか?」
「うん、そうだよ。ちなみにあのボードはクエストボードといってね、クエストのランクごとにボードが用意されているんだ」
「ってことは、上のアルファベットはクエストのランクを表しているということだな」
「うん、そうだね」
「S級クエストはないのか?」
「えっと、S級クエストは特級騎士か特級魔法師にしか受注できない特別なクエストだから、そこのクエストカウンターで、直接クエストを選んで受注するようになっているらしいよ。僕も実際に受注している時は見たことないんだけどね」
ロミオは小声で続ける。
「S級クエストはとても恐ろしい内容のものばかりで、上級騎士や中級騎士がクエストの内容を見て絶望しないように、あえて見れないようにしている、というウワサもあるんだけどね」
なるほど。
S級クエストの恐ろしさを知ってしまい、特級騎士・魔法師を目指す人が減ってしまってもいけないということか。
「そういえばレイラ教官がA級クエストも上級騎士か上級魔法師でないと受注できないって言ってたな」
「そうだね、僕たちはAから下のB~Eランクのクエストしか受注できないよ」
……つまり、下級騎士の俺はA級クエストすら受けられない。
早くなんとかしないと。
俺たちはクエストボードの近くまで歩いていくと、周りに俺たちと同じ学校の制服を着た生徒たちが10人ほどいた。
クエストの紙が破けるんじゃないかと思うほど吟味している生徒もいる。
俺たちと同じように午前で学校を終え、そのままここに来た生徒もいるんだろう。
「ロミオ、俺らの他にも学生が結構いるな、みんな何をしてるんだ?」
俺はロミオの方を見ると、ロミオは少し驚いたように俺を見つめていた。
あれ……
俺、何か変なこと言ったか?
「ユーリはレイラ教官から、クエストの必修単位の話は聞いてないの?」
「必修単位? なんだそれは?」
そんなものは初めて聞いたぞ。
「えっとね、僕たちは学校で定期的に行われる実技と筆記の試験をクリアすることで単位を取っているんだけど、……それ以外にも、クエストの必修単位というものがあって、……この必修単位を落とすと、2年に進級することができないんだ」
「そ、そうなのか、あの教官、そんなこと俺に一言も言わなかったぞ」
俺は今朝、教官室でのレイラ教官とのやりとりを思い出した。
特級騎士になればその年で卒業できるとか、そういった話はしていたが、
進級に必要なクエストの必修単位なんて説明は一言もなかった。
……あの鬼教官め。
いや、これ以上はやめておこう。
ロミオは少し表情を曇らせ、口を開く。
「ちなみに、僕たち1年は年間で20単位クエストをクリアしないといけないんだ、・・・もし1単位でも落とすと、……留年、もしくは……強制退学」
「な、なるほど……20単位というのは今一つわからないんだが、クエストを20回達成すれば取れるものなのか?」
「えっとね、クエストのランクによってそれぞれ単位が決まっているんだ、例えばE級クエストなら1単位、D級は3単位、C級は5単位、B級は10単位、という感じでクエストのランクが上がれば、上がるほど単位も大きくなっていくんだ。……だから難易度が高いB級クエストなら、1年のうちに2回クエストをクリアさえすればそれで必修単位は落とさず済むってことだね」
なんだかいろいろあって、難しいが……
簡単な話、B級クエストを2回クリアすれば単位は落とさずに済むという話だな。
うん、シンプルでわかりやすい。
「せっかくだし、少し見ていこうぜ」
「うん」
俺たちは右端のE級クエストボードに近づき、E級クエストの内容を見た。
『E級クエスト』
家の子(猫)を探してください。 報酬―3千
ノルベ山に咲いている極草を30本ほどお願いします。 報酬―5千
―――――――――――――――――――――――
E級クエストは、その何というか、あまりぱっとした依頼がないな。
クエストという感じがあまりしない。
ここは正反対にあるA級クエストを見てみるか。
俺たちは左端のA級クエストボードに近づき、内容を見た。
『A級クエスト』
ブラックウルフの討伐 10体 報酬―12万
オークの討伐 5体 報酬―15万
洞窟に巣くっているゴブリンの討伐 ―全て― 報酬―20万 (パーティー専用)
―――――――――――――――――――――――
A級クエストは討伐クエストがメインだな。
報酬もE級に比べると、天と地の差だ。
やはり、こっちの方がクエストといった感じだ。
だが、(パーティー専用)というのは何だ?
俺はロミオへ問いかけた。
「ロミオ、このパーティーってのはなんだ?」
「えっとね、簡単にいうと仲間内でチームを組むことだよ、パーティー専用と書かれたクエストは、上級騎士でも単体で受注することはできないんだ。 同じランクのクエストでも難易度が高いクエストほど、このパーティー専用と書かれたものが多い傾向にあるよ」
「なるほどな。そのパーティーってのは誰とでも組めるのか?」
「うん、組みたい相手が承諾してくれればだけどね」
「じゃあ、パーティーメンバーに上級騎士がいた場合は、その人がA級クエストを受注すれば……下級騎士の俺たちもA級クエストに行けるのか?」
「えっと、一応そういうことになるね。……でも、下級騎士と上級騎士がパーティーを組んでいるのなんてあまり見たことないよ」
そうなのか。
仲間内でチームを組むってことは、力関係や騎士の位はほとんど同じか、近い位だったりするのだろうか。
「ロミオはパーティーを組んでいるのか?」
「……え? 僕は組んでないよ」
ロミオは少し俯き下を向いた。
「じゃあ、俺と組まないか?」
ロミオは顔を上げ苦笑いを浮かべながら
「僕だとユーリの足を引っ張っちゃうよ、……ユーリにはもっと相応しい人が―」
「俺はロミオと組みたいんだ」
ロミオは少し顔を赤くした。
「え? そ、それは、どういう―」
「俺たちは同じ家に住むんだし、パーティーを組んで同じクエストに行った方が、単位も同時に取れて一石二鳥じゃないか?」
それに信頼を寄せている相手でないと自分の背中は預けられないしな。
するとロミオの表情から明るみが消え、ロミオは淡々と話しだした。
「……あ、うん。そうだね」
あれ?
心なしかロミオの機嫌がよろしくないような……
そんなことを考えていると。
ダァン!!!
と、ギルドの扉が勢いよく開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます