がらんどうのザクロ

新人 琉生(アラヒト ルイ)

プロローグ

 白い雪の上に、朱い血が散らばっている。点々と、バラバラと。それはまるで、弾けたザクロの実が散らばっているようだ。

 鮮やかな赤は冬の山道にぽつりぽつりと転がって、その行く末を辿るほどに、零れた血の数は多くなる。その赤を辿るようにして、また一つ足跡が増える。


 雪が白いのは、決してそれが純粋であるからでも、神聖であるからでもない。それは決して何かに染まるための色ではない。雪の白は、山にあるもの遍くすべてに舞い降りて、悉くその温度を奪い去り、覆い隠してしまう色だ。生命を受け入れぬ、拒絶を表す色。すべてに平等に、冷酷である色。それが、雪の白という色である。


 ゆえに、今山道に倒れこんでいる人の上にもまた、雪は等しく降る。真っ赤に染まったその胸に。虚ろに空を映す瞳に。擦り切れていくつも傷ができた手足に。浅い呼吸を白く染め上げ、擦り傷だらけの手足から血の気を奪い、かさついた唇から温かさを盗む。

 土気色の顔にもはや生気は薄い。あたりに散らばったザクロ色の血に、色という色は抜け出してしまったようだ。その血の赤も、数日後にはすべて雪に覆われ、隠されてしまうだろう。

 血の鮮やかさも、浅い呼吸も、わずかに残った体温も。そのすべてが失われる前に、殺人鬼は銃口を突きつける。

「お前は――だ」

 風に騒めく木々が押し黙り、ただ鬼の言葉だけが雪に染み込んでいく。

「だから、こんな殺人鬼なんかに殺されるんだ」

 引き金に指をかけ、決して外さぬよう猟銃を相手の眉間に押しつける。かじかんで赤くなった指が、黒い鉄をゆっくりと握る。目の前の相手に残された、最期の灯火を吹き消すために。


 そうして一拍の緊張のあと、銃声が轟いた。その中で、鬼と呼ばれた者は、ただ笑っていた。

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