第3話 院内電話

夜勤の業務を終え、私はようやく机に向かい、疲れた体を少し休めようとしていた。院内電話の電源は切り、机の上に置いたはずだった。


しかし、突然、けたたましいベルが響く。

「……え?」

手を伸ばすと、電源を切ったはずの院内電話が震えていた。画面には『非通知』の文字。


院内のみからしかかかってこないはずの電話が、なぜ非通知で――。

恐る恐る受話器を取ると、ザーッというノイズだけが耳に突き刺さる。声は聞こえない。


背後で、廊下の床を蹴る足音が走る。振り向くと、奈月が慌てた顔で私の方へ駆けてきた。


「愛媛先輩…今着信がきてて……」

「もしかして非通知?実は私もなの」

「え?愛媛先輩も?」

奈月も、先ほどの電話とまったく同じ現象を体験していたらしい。

「非通知で、出てもノイズだけ……?」

「うん」

廊下の蛍光灯がチカチカと瞬き、影が微かに揺れる。

誰かが、確実に私たちに向かって呼びかけているような。

「…これ、終わらないかもしれない」

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