前世(変態)の記憶を思い出したので固有魔術で異世界最強を目指そうと思う〜日課の魔力枯渇をすると、何故かみんなドン引きするんだが〜

肉離れ大陸

第1話 才能はあるんですよ

 11歳の誕生日、俺は憂鬱な気分で廊下を歩いていた。


 俺は、サン・マゾヒスト。

 男爵家の三男で、次男である兄さんからいじめを受けている。


「はあ、また呼び出しか」


 俺がいじめられているのには、理由があった。

 それは、俺が5歳の頃と、10歳の頃まで遡る。


  ◇ ◇ ◇


 5歳の誕生日、俺は領内の教会へ来ていた。

 魔術適正の鑑定を受ける為だ。

 その鑑定では、その人の魔力についた属性を見ることで、適性を検査する。


 魔力をそのまま使う無属性魔術を除き、この儀式で適性が出なかった魔術を扱うことはできない。


「では、サン・マゾヒスト。こちらの水晶に手をかざすように」


「はい!」


 司祭の指示で、多くの人に見守られる中水晶に手をかざした。

 水晶の光る色により、どの魔術に適性があるかわかる仕組みだ。

 

 手をかざしてしばらくすると、水晶か光り始めた。


 水色に。


「こ、これは!?」


 司祭は、よほど驚いたのか思わず声を上げていた。


「水色は、4大属性の誰にも属していません。つまり、他の誰も使用することのできない固有魔術です!!」


 基本的に人類は、『水、風、火、土』の4つの属性のどれかに属することがほとんどだ。


 しかし、そのどれにも属さない魔術的性を持つ人間も現れた。

 そしてその魔術のことを、人々は『固有魔術』と呼ぶようになっていった。


 固有魔術は、どれしも最強と呼ばれる強さを持つ魔術で、その時代に10人もいれば良い方と呼ばれるほどの希少さだった。


 そんな固有魔術の適性が、俺にあると分かったのだ。


「すごい!さすが私の息子ね!」


「お前が固有魔術を扱えられれば、我が男爵家は伯爵家レベルまで上がることだってできるかもしれないぞ!」


 それから、みんなが俺のことをもてはやし始めた。


 しかし、そんな日々は10歳の誕生日に終わりを迎えてしまう。



   ◇ ◇ ◇


 10歳の誕生日、俺はまたも教会に来ていた。

 魔力量を鑑定する為だ。


 魔力量は9歳ごろまで増加を続ける為、基本的に増加の終わる10歳の誕生日に鑑定する決まりになっている。


 固有魔術を扱う人は、扱えられるだけの魔力を持ち合わせていることがほとんどだ。

 そのため、まさかそんな結果になるだなんて誰にも想像できなかったのだ。


「では、サン・マゾヒスト、この水晶に手をかざしてください」


 魔力を計る水晶で、どれだけ強く光るのか、皆が息を呑むようにその瞬間を見ていた。


 よし、いくぞ。

 覚悟を決め、水晶に手をかざした。




 確かに、手をかざしたのだ。




 しかし、水晶が光ることはなかった。




「え、えー。サン・マゾヒストは、魔力ゼロです!」


 静まり返った教会に、司祭な声が響き渡った。


 魔力を持っていない人間は絶対に存在しない。

 しかし、水晶を使用して鑑定できないような量しか魔力を持っていない場合を『魔力ゼロ』と呼ぶのだ。


 魔力ゼロでは、固有魔術どころか4大属性魔術、さらに無属性魔術すらも扱うことができないのだ。


 その瞬間、周りの接し方は全て変わった。


「ええい、この役立たずが!」


「なんのために産んだと思ってるの!?」


 今まで優しかった家族は、掌を返したかのように冷たくなった。


 必要最低限の会話しかしなくなり、罵倒されることがほとんどだった。


 一番ひどかったのは、1つ上の兄だ。


「やっぱりお前はゴミだったんだよ!」


 そういいながら、木刀でいつも殴ってくるようになった。

 一つ上の兄は、魔術に適性が全くなくいつも剣術を学んでいたため、毎日体の節々が打ち身にされた。


 長男は、俺が4歳の頃に王都にある魔術研究学園へ行っているため人柄すらわからない。


 こうして、屋敷にいる家族は全員敵になった。



   ◇ ◇ ◇


 本当にうんざりする。


 兄からの呼び出しは、屋敷の裏へこいと言われていたな。

 いつもは剣術の訓練をする練習場へ呼び出されるのに。


 一体なんなんだろう。





「よお、サン。誕生日おめでとう」


 屋敷裏につくと、兄が何やら大きな道具を持って待っていた。

 もう日が暮れそうな時間で、周囲には人一人いなく、とても不気味だ。


「兄さん、今日はなんなんですか」


 誕生日おめでとうなんて、絶対裏がある。


「せっかくだから、お前に誕生日プレゼントを持ってきたんだ」


 そういって、手に持っている道具を見せてくる。


「これは、相手の魔力を吸い取る魔道具だ。死刑囚とかに使われるようなものなんだよ」


 兄さんは、にちゃりと気味の悪い笑顔を浮かべ、ジリジリとこちらに歩いてくる。


「魔力ゼロと診断されたお前に使ったらどうなるんだろうな?」


 っ!

 まさか俺に使うつもりなのか!?


 聞いたことがある。

 あの魔道具は、対象者の魔力を吸い取ることで対象者に廃人になるだけの苦痛を与え、二度と罪を犯さないようにする道具だったはずだ。


「兄さん、なんでそんな物を持って!?」


「この領地で死刑囚が出た時に使う為のやつを貰ってきたんだよ」


 くそっ。

 どうにかして逃げないと…


「俺はお前が憎かった。固有魔術を持っているお前が。」


 兄さんはどんどん俺に近づいてくる。


「俺には魔術の適性がなかったんだよ。きっと全部お前に吸われたんだ。」


 やばい、もう後ろは屋敷の壁だ。

 逃げ場が全くない。


「お前のことが許せないよ、サン」


 そう言いながら兄さんは、俺の腕を掴んだ。


「やめろ!」


 必死に腕を払おうとした。


「お前のことを憎んでも当然だよな。殺したって当然だよな」


 しかし、その抵抗も虚しく俺は魔道具を取り付けられてしまった。


「じゃあな、サン」


 そう言って兄さんは俺をおいて屋敷から遠くへ走り去っていく。


 そして、夕焼け空に吸われるようにして消えていった。


 魔道具のスイッチを押して。


「______________対象者を発見しました、これより魔力の吸収を開始します」


 屋敷の裏では静かに機械音声が響き渡っていた。





___________________________________

 あとがき


初投稿です!

これから頑張ります。


19時06分と20時06分に投稿予定です。


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