氷海の絆 〜ドローンが結ぶ友情〜

奈良まさや

第1話

第一章 夢の設計図


東京の小さなアパートの一室で、カイと涼介は深夜まで小型ドローンの設計図を囲んでいた。大学4年生の二人が描く未来は、手のひらサイズのドローンが空を舞う世界だった。


「これで行けるよ、カイ」涼介の目が輝いていた。「このサイズなら配送コストを半分に削減できる」


カイは眼鏡を押し上げながら頷いた。「プロトタイプの試験飛行も成功した。あとは資金だけだ」


二人の手には数万円しかなかった。しかし、夢だけは億万長者のように大きかった。


第二章 別れ道


「投資家のプレゼンは来月だ。絶対に成功させる」カイは資料を整理しながら言った。


涼介は黙って窓の外を見つめていた。家計の厳しさが彼の肩に重くのしかかっていた。父親の借金、母親の病気。夢を追いかける余裕など、本当はなかったのだ。


「カイ、俺...」涼介は振り返った。「ベーリング海峡のカニ漁船の募集を見つけたんだ」


「は?」カイの手が止まった。


「3ヶ月で1,000万稼げるらしいんだ。危険だけど、家族、ビジネスのために...」


「おい、待てよ。今がチャンスなんだぞ!」


涼介は苦笑いを浮かべた。「アラスカの漁業会社が面接してくれるって」

「沢蟹は手摑みです!と履歴書に書いたら直接面接になった」


## 第三章 それぞれの戦場


東京 - 投資家事務所


「このドローンの市場性をどう証明するのですか?」


スーツ姿の投資家たちがカイを見つめていた。汗が背中を伝い落ちる。


「既存の配送システムと比較して、コスト効率が...」


カイの声が震えた。涼介がいない現実が、彼の自信を削いでいた。


ベーリング海- 漁業組合事務所


一方、涼介は漁業組合で面接を受けていた。


「日本人か。カニ漁の経験は?」


「沢蟹ぐらいですね。でも、学習能力には自信があります」


「What is sawagane?」

組合長は涼介の真剣な眼差しを見つめた。何かを感じ取ったのか、頷いた。


「よし、雇おう。だが、ベーリング海は甘くない。覚悟はできているか?」


第四章 地獄の船出


アラスカの港で涼介は震えていた。気温マイナス30度の世界で、彼の息は白く凍った。


「おい、イエロー!お前がジャップの新人か?」


赤毛の大男、ビッグ・ジムが涼介を見下ろした。船のクルーたちが嘲笑している。


「俺の名前は涼介です」


「ここではお前はただの『ジャップ』だ。覚えとけ」


船長のオライリーが現れた。「新人は甲板の掃除からだ!氷を割って、血を流して、ようやく一人前の仕事をもらえる」


涼介が初めて船に乗った瞬間、地獄が始まった。

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