[第7もふ]小さな1歩
朝。
12個のぬいぐるみは、きれいに箱に並べられ、発送の準備が整っていた。
「やっと……ここまで来たね」
私は箱を見つめてつぶやいた。
ケモ男はダンボールの隅をテープでしっかり留めながら、にっこり笑う。
「緊張するなあ……お客様の手に渡るんだね」
ケモジは黙ったまま針と糸を片付けていた。
でも、その目は少し誇らしげだった。
郵便局まで歩きながら、私たちは少しそわそわしていた。
「ちゃんと届くかな……?」
「壊れないように届いてほしいね」
窓口で荷物を預け、控えめに手を振った。
12個のぬいぐるみは、私たちの手を離れて旅に出た。
数日後。
メールの通知音に、私たちは飛びついた。
お客様からの感想が届いている――!
「とっても可愛いです。ひとつひとつに愛情がこもっているのが分かります」
「待つ時間も楽しかったです。ありがとうございました!」
私たちは顔を見合わせ、思わず笑った。
「待ってくれていたんだ……」
「ちゃんと喜んでくれてる……!」
ケモジも、針を持たない手で小さくガッツポーズをした。
ケモ男はにっこりして、「これで、私たちのぬいぐるみが誰かの幸せになったんだね」と言った。
ゆっくり作ったけれど、ちゃんと届いた。
初めての納品は、私たちにとって大きな達成感となった。
「さあ、次は……もっとたくさんの人に届けようか」
私は箱を見つめながら、静かに未来を思い描いた。
ナマケモノたちの小さな会社は、少しずつ、でも確かに歩き始めたのだった。
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