[第4もふ]役割分担もゆるふわと

 12個。

 その数字が、まだ胸の奥でぽわぽわと光っている。

「よし、じゃあ役割を決めよう」

 ケモ男がホワイトボードを取り出して、キュッとペンを走らせた。

ケモジ:縫製担当

ケモ男:資材管理&発送準備

ポミイ:デザイン・広報(ついでに応援係)

「うん、いい感じだね!」

「……ちょっと待て」ケモジが眉をひそめる。「ポミイの“応援係”ってなに」

「応援、大事だよ! ほら、集中力も上がるし!」

 私は胸を張った。

 作業はすぐに始まった。ケモジがちくちくと縫い、ケモ男が布や糸を整える。私は横で「がんばれ〜!」と手を叩いたり、おやつの差し入れをしたり。

 ……しかし。

「……ねむ……」

 ケモジのまぶたがとろんと落ちる。

「……あ、針が……」

 危うく指を刺しかけた瞬間、私は慌てて声を張った。

「ケモジ! 休憩タイム!」

 ケモ男が小さく笑う。

「さすがスローライフ。受注が二桁でも、ペースは変わらないな」

「だって、焦ったら針目もガタガタになるしね」

 私はちょこんと座って、並び始めた小さなぬいぐるみたちを見つめた。

 12個なんて、まだ遠い。

 でも、ひとつひとつに心を込めれば、ちゃんと届く。

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