辺境生まれの私は平民生まれの聖女様に一目惚れしました

アイズカノン

第1話 路地裏で出会う辺境聖女と平民聖女

 一目惚れだった。

それはこの国の貴族なら必ず通う義務のある王立魔法学院に向かう道中、急に止まった馬車から降りた時のこと。


「こらっ!!。急に飛び出すじゃない」

「ごめんなさい。ごめんなさい」


 桃色のブロンドヘアを揺らしながら運転手に謝る同い年ぐらいの少女。

白と青の制服を身に纏い、精霊が絶え間なく周りを飛んでいる。


「すみません。何かありましたか?」

「あぁ、お嬢。こいつが急に路地裏から飛び出してきまして……」


「本当にごめんなさい」

「それより怪我はない?」

「(小声)それより……。はい、間一髪でした」

「それは良かった。何かあるといけないからとりあえず回復させるね。【治癒キュア】」


 白く青い光が少女を包む。

すると軽い擦り傷から衣装の汚れまで状態が『少し前の状態』まで回復していく。


「(小声)光魔法……。あなたも光魔法使えるの?」

「うん、使えるよ。私の家系は聖女の血が入ってるからね」

「そうなんですか……。私以外にも使える人が……」

「ただ私のところのはちょっと特殊だから、君のとは違うから、そう意識しなくてもいいよ」

「そうなんですか?」

「そう、それにこれから学院に向かうところでしょ?」

「そう……ですね。ごめんなさい。時間とらせて」

「いいよ。いいよ。私も、今向かってるところだったし」

「えっ?」


 そうして私は少女を馬車に乗せて、王立魔法学院へと向かった。



「えっ!?。リピアさんって聖女だったですか」

「まあ、一様ね。正式には違うのだけど、もしもの時の代わりみたいなものだよ」


 馬車の対面席で口を押さえながら驚く少女。

さっき、急に飛び出してきた(運転手曰く)らしい少女。

彼女の名前はステラ・リアライト。

平民の出の希少な純正な聖女様。

王命で学院での保護及び支援が私のところに要請される程度には希少な存在。

それがこんな形で巡り会うのは幸運と言えよう。


「それで君はどうしてあんな場所から飛び出してきたの?」

「あっ、それはですね。学院に行く途中で困ってるおばあちゃんを助けたら、間に合わなくなって、道を聞いたらここが近道だって言われて……」

「それで、うちの馬車の前に出てしまったと」

「はい、すみません……」


 まあ、だいたい察しはつくが。

ステラはおそらく、何らかの厄災に巻き込まれて、そこで光魔法を発動したことで目をつけられて学院に連れてこられたのだろう。

それにしても災難だと思う。

それまで雲の上の存在だと思ってたのに、急に同じところに連れて来られたのだから、緊張して周りが見えてなかったのは仕方ない。

本当に私の目の前に来て良かった。

これが別の貴族だったらどんな目にあっていたか……。


「そろそろ着いたみたいだね」

「わぁ……。すごい。お城みたい」

「ははは。本物のお城を見たら倒れそうだね」

「えっ!?。あれより凄いの!」

「一応ここから遠目でも見えるのだけど……」

「そうなんですね……。ごめんなさい」

「いいよ。いいよ。これから知っていけばいいから」

「はいっ。よろしくお願いします」


 座りながらも頭を下げてお礼を言うステラ。

やっぱりというか、聖女というだけあって優しくていい子だ。

君に光魔法が使えるのは少し安心した。

本当にこの子で良かった。


「さぁ、手を」

「えっ!?」

「初めてでしょ。エスコートしますよ」

「あっ、はい。(少し小さい声で)ありがとうございます……」


 私に手を引かれて馬車を降りるステラ。

これから肩身の狭い生活を送るであろう彼女にせめてもの祝福を。

そう思って私は彼女の手を引く。

さて、いろいろと考えないといけない。

ステラが苦労しないように根回しをしないといけない。

ここまで自分の権力ちからを使おうと思ったことはなかったけど。

彼女のためならやれる気がする。

だって、私はステラに一目惚れしたのだから。

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