第8話 墜ちた皇帝の最期





-両腕部 アメノハバキリ運用形態-


-動力炉出力上昇 ターボパワー起動-


巨大な剣であるアメノハバキリを振り回すため、体が専用の状態へと変化していく。実体部の刃渡が3mを超えるこの剣ならアラクネ・エンペラーを一撃で両断することも可能だ。


そんな刀をアラクネ・エンペラーへ向け、言い放つ。


「さぁ…殺り合おうぜ」


-両脚駆動部エネルギー充填 戦闘行動開始-


に駆られるまま走り出した俺は軽く音速を超え、衝撃波を伴いながらアラクネ・エンペラーの目に前に移動しアメノハバキリを上段から振り下ろす。


「Gyiiiiiiii!!!」


「チッ、流石に大振り過ぎたか」


しかし振り下ろした刃はアラクネ・エンペラーの脚に弾かれ地面へめり込み、爆音と共に濛々とした土煙が俺を包み込んだ。


-警告 後方に敵影-


俺が自分を見失ったと思ったか、アラクネ・エンペラーは大ジャンプで背後を取り襲いかかって来る。生憎、俺のセンサーは土煙程度で見失うほど性能は低くないがな!


「オラァッ!!」


飛びかかって来るのにタイミングを合わせて、腰を落とした構えからアメノハバキリを振り上げた。……手応えあり。


すぐに土煙から脱しアラクネ・エンペラーを視界に捉える。いつの間にか後退していた奴の動きに鈍りはない。が、脚は2本が中途から断ち切られ頭胸部にも裂傷が生じていた。


(咄嗟にバックして致命傷を避けたか。さすがはS級…ッ来るか)


着地して再び構えた俺へ、アラクネ・エンペラーは腹からクモの巣状に糸を放って来た。


(ここは敢えて正面から突っ込む…!)


ジャンプと共にアメノハバキリで巣を断ち切り、切先をアラクネ・エンペラーに向けたまま落下。ヒラリと躱されても追撃が奴を襲う。


ドゴンッ!!


全力で踏み込んだ足が地面を割りアラクネ・エンペラーとの距離が再び縮まる。眼前に迫る奴の顔へ俺はアメノハバキリを横凪に振るい…後方へ吹き飛ばされた。


「グッ!」


(魔法によるカウンターか、自身の牙を打ち鳴らし発生した衝撃波を魔力で増幅しやがった!)


アメノハバキリを地面へ突き立て停止した俺へ、再び脚が振り下ろされた。バックステップで躱すも連続して行われる攻撃は、一回一回が地響きと衝撃波を伴いその威力を物語る。


「Gyiiiiiaaaaa!!!!」


「ヅッ!テメ…!」


-警告 右肩部被弾-


数十の攻撃を躱した末、とうとう右肩に攻撃を食らってしまった。攻撃を受けた箇所は超硬度の装甲が削れ傷がついている。


-量子再構築 修復開始-


————最も、傷は極めて浅く即座に修復されるものだったが。


飛び散った装甲片は量子に還元されすぐさま傷に集まり、再び装甲を構成する。この間実に、0.0003秒。


もし何も知らない誰かがこの場にいたら攻撃を喰らっても傷を負わなかったように見えただろう。


『今のが君達の世界の軍事技術の根幹か』


東野さんの言葉に応えるため一瞬呆然としたアラクネ・エンペラーの胴体へ拳を叩き込み、数十mほど吹き飛ばす。


「…そうですね。装甲、武器、兵士の体…いずれも量子に一度還元して再構築すれば損傷は無かったことになる。丸ごと消し飛ばされてもを破壊されなければいくらでも治せる…まさしく神の技術ですよ」


おまけに俺は今防護フィールドを展開せず攻撃を受けた。もし本気の俺と相対したなら、防護フィールドを突破した上で俺の再構築能力も突破しなければならないという悪夢が始まるって訳だな。


『なるほどな…戦闘を遮って悪かった。続けてくれ』


「いえ、構いませんよ、それよりクオンの様子を見なくて良いんですか?」


『…あれは正直君より理解が及ばん、分かるのはクオン君とまともに戦える存在は殆どいない事位だ』


「まぁ…それは確かに…」


東野さんの諦めたような言葉に同意しながら、俺が視線を向けた先。悍ましい数のアラクネを蹂躙する銀髪の少女の姿があった。


「発射…着弾確認…」


アラクネの高速で放たれる糸や毒、脚や噛みつきなどの攻撃は尽くが届かない。


反対に空間の斬撃0式空間切断機構超威力の熱線4式空間制圧砲、他にも誘導する光条、無数の光弾などでアラクネの群れを薙ぎ払い、まるで無双ゲーの如き光景を繰り広げるクオン。


…ハッキリ言って、俺も東野さんも引いていた。


(上の階層のアラクネ全部呼び寄せちまったからな…仕方ないんだけど…うん)


などと思っている間にもアラクネの群れはどんどん数を減らし、全滅する事となった。


最後の仕上げに全ての死骸を焼き払ったクオンは相変わらずの無表情で言ってくる。


「マスター、現段階で確認できる敵は一体を除いて全て殲滅しました。総撃破数3826、こちらに損害はありません」


「お、おう…ありがとな」


あんな蹂躙劇を繰り広げたのに汚れひとつ付いていない、対多戦闘で言えば本来の俺以上のポテンシャルを持つのも————


「Gyuiiiiiiiiii!!!!」


-警告 敵体内に高エネルギー反応-


———納得だ。と俺が思考した瞬間、仲間を殺された怒りからかアラクネ・エンペラーが咆哮をあげ、黄色い模様を緑に輝かせると腹部から緑色の糸を放ってきた。


速度自体はそこまで早くないから容易に躱せる。けどこれは…


「ヤッバ…」


糸は俺とクオンが立っていた場所の背後にあった大岩をバラバラにし、ダンジョンの壁にクモの巣状の痕を残して霧散した。


『あの緑に輝く姿はアラクネ・エンペラーの第2形態だ。それにあの糸は戦車の装甲も紙のように切り裂くぞ。気を付けろ』


「分かりました」


奴の切り札のようなモノか。糸も凄まじい切れ味だ、恐らく俺の体も斬られるだろう…ならこっちも。


「…アメノハバキリ、光刃展開形態」


-アメノハバキリ 光刃展開形態 動力炉出力上昇-


燐光と共に刀身が割れて蒼いビーム刃が展開、天井にまで到達したこの光刃はすら両断する。


光刃展開形態——対艦切断機構アメノハバキリの本来の姿だ。


「Giiiiiiaaaaa!!!!」


「ハァッ!!」


-光刃展開 状態安定-


再び上方から迫る巨大な巣へ向けてアメノハバキリを振るい、切り刻む。最後に上段から真っ直ぐ振り下ろしアラクネ・エンペラーを捉えた刃は、奴を真っ二つにした上で地面に長大な裂け目を刻んだ。


-生命反応消失 目標撃破-


両断された奴の亡骸は脚で攻撃を受け止めようとした跡が見て取れ、攻撃自体には反応出来ていた事が分かる。


「……良い戦いだった。この経験は無駄にはしない。ゆっくり休んでくれ」


「…マスター」


「あぁ、帰ろうか」



************



九州 阿蘇ダンジョン



日本最難関と言われるこのダンジョンの最下層でS級モンスター、ケルベロスと相対していた黒髪の少女が刀を構えたまま呟く。


「む?アラクネ・エンペラーの魔力反応が消えた…?」


*なんて?*

*アラクネ・エンペラー言うたな*

*急にどしたん?*


「いや、すまない独り言だ。…〈烈風〉」


ケルベロスの3つ首を一太刀で斬った少女は鞘へ刀をしまい、湧き上がる高揚感に笑みを浮かべ駆け出した。


(新しい強者が生まれた気がするな…!)






************



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