第7話 振るわれる未来の暴力③
-接近する敵影多数 各種兵装の使用を推奨-
-イソノカミ 戦闘支援開始-
「さぁ来やがれ…!」
センサーには全方位から向かってくる夥しい数のアラクネが映り、警告表示が視界の端で瞬いている。
「Gyuiiiiiaaaaa!!!」
とんでもない迫力だ。人の手が入らなくなってから大増殖したにしても、A級モンスターが大挙して来るのは中々異常事態ではなかろうか?ただこんな数でもクオンの前には一撃で殲滅されかねないため、念の為釘をさしておく。
「クオン、ちゃんと手加減しろよ。一撃で薙ぎ払うとか呼び寄せた意味なくなるからな」
「分かっています。ダンジョンという閉鎖空間での広域殲滅兵器の使用は、我々にも被害が及ぶ可能性がありますし」
「…それダンジョン外だったら使うって意味?」
「どうでしょう、ダンジョン外で使うとしたらスタンピード時などでしかあり得ないのでなんとも言えませんね」
言って微笑むクオン。……不安だ。
-対多殲滅戦闘プログラム “タソガレ” 起動 〈
-目標1番から368番 ナンバリング完了-
-共同戦闘リンク確立 対象ユニット クオン イソノカミ-
-動力炉出力上昇 各駆動部へエネルギー優先供給-
俺とクオンは背中合わせに身構え、俺は兵装を展開し、クオンは亜空間ゲートを周辺に顕現。頭上にはイソノカミが浮かび、万全の迎撃体制で俺達はアラクネの群れを迎え撃つ。
「…心配しなくても、私がマスターの
「はっ、なら良いんだけど…なっ!!」
-戦闘行動開始-
地響きを立てながら目の前まで迫ったアラクネの突進を躱しつつ俺はブレードを振るう。
超密度の粒子はアラクネの組織を容易に切断し、手応えという程の抵抗は感じることなくアラクネを真っ二つに両断した。
-目標1番撃破 攻撃継続-
続けて着地と共に俺は左腕に装着した
(これなら俺でも当てられるな)
俺の本来の姿…〈武装強襲兵コトワリ〉の主任務はその殆どが射撃戦を必要としないため俺の射撃機能はオミットされ、銃を始めとした狙いを定める兵装の使用は基本想定されていない。そしてこんな俺でも扱える貴重な射撃兵装が、この3式粒子拡散砲だ。
ただ実際、強力な近接武装と装甲外骨格、更に量子再構築機能をもって前線で大暴れするのが俺の役割であり、射撃戦を担うのは———クオンだ。
「…次はどいつを…『-警告 後方よりクオンによる大火力砲撃-』は!?」
「発射」
拡散砲で仕留めたアラクネ達を横目に俺は新たな目標を定めようとした次の瞬間、餌食となったアラクネの死骸を轟音と共に光条、いや熱線が呑み込んだ。
熱線は死骸を消し飛ばし、その奥にいたアラクネ数十体も蒸発させ奥の壁に着弾、大崩落を引き起こす。
「〈4式空間制圧砲〉次弾準備」
「いや待て待て待て。やり過ぎ!」
「?一撃で殲滅はしてませんが」
「それはそうだけど!そうだけども!」
もう少し加減してくれ!東野さん黙っちまったじゃねぇか!
************
-目標368番撃破 周囲半径500m 敵影無し-
あれから戦闘すること数分。最後の一体を両断しブレードを格納した俺は、アラクネの死骸の山を見上げ呟く。
「ふぅ……完全にやり過ぎたな」
もうただの虐殺なのよ。クモ型モンスターらしく糸を用いた魔法攻撃とか、牙で噛み付いて毒を注入しようとしたりとか、色々やってきたけど全て効かないし、そもそも当たらないっていう。
最後の方は必死に逃げるアラクネの背中に拳を叩き込んで申し訳なくなった。
(クオンはクオンで容赦ないし…すまないな)
心の中で手を合わせ謝り、せめて安らかに眠ってくれと願っているとクオンが話しかけてくる。
「マスター、アラクネのデータ収集完了しました。次はどうされますか?」
「…そうだな、正直なところさっさとエンペラーに向かいたいんだよな。名付き武装使えてないからさ」
名付き武装とは階層をぶち抜く時に使用したフツノミタマのような強力な兵装のことで、最初は通常のアラクネ相手に使うつもりだったけど標準兵装ですら過剰だったため諦めたのだ。
ただアラクネの駆除も兼ねてるから慣らしばっかやるわけにも…
『…そういう事なら、139階層まで一気に駆け抜ければ良い。途中の階層の駆除は我々が担うとしよう。それに、130階層まで一気に来ているのだから正直今更だろう?』
通信機から響く東野さんの声、まぁ確かに130階層までのモンスターは全て無視してここに来たからな…
「分かりました、ありがとうございます」
さて、さっさと移動しよう。
************
八王子ダンジョン 139階層
やっと辿り着いたか…131階層からl38階層までクモの巣だらけでかなり移動に手間取ってしまった。通路を2重3重どころじゃなくて20重30重にクモの巣が塞いでるんだぜ?途中からめんどくさくなって突っ走ったし。
さて気を取り直して、俺は周囲を見回しセンサーを走査させる。辺りに採掘機械などが散乱するこの階層は、これまでの階層と違い天井の高さが100mを超えている広大な階層であった。
-警告 方位2-3-2 距離230 大型敵反応あり-
(見つけた)
センサーが反応を示した方向へ移動し視線を上げた先、直径200mはある巨大なクモの巣がまず目に入り、その中心には全長20mを超えるアラクネ・エンペラーがこちらを睨み鎮座していた。
「来ます」『来るぞ!』
東野さんとクオンの声が重なり、アラクネ・エンペラーから糸の束が俺達を絡めとらんと放たれた。
即座にブレードを展開し切断を試みるが…糸束が太すぎるが故切れたのは3分の2程までで、残りは俺の体に巻きつき、電流を流し込まれつつ凄まじい力で引っ張られる。
「うぉっ!?っの野郎!!」
-各駆動部負担増大 出力上昇-
-高電圧警報 装甲最外装による絶縁問題なし-
-イソノカミ 亜空間リンク接続-
慌てて踏ん張りアラクネ・エンペラーの巻き取りに抵抗、幸い膂力ではこちらが上回るようで、俺はそのまま徐々にアラクネ・エンペラーを引きずり、最終的には巣から剥がし地面へ墜とすことに成功した。
「Gyuiiiiiiii!!!!」
地面に落ちたアラクネ・エンペラーは長い脚を振り上げこちらを威嚇する、見た目ジョロウグモでやられるとシュールだなおい。
『…かなりお怒りのようだな』
「ですね、でも少しくらい怒ってる方が…コイツには丁度良いです」
-供給兵装 対艦大型切断機構 “アメノハバキリ”-
顕現した背丈を超える大剣を構え、防護マスクの下で俺は笑った。
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