第2話 休日はゴロゴロ作戦
真神リラは悪の秘密結社「黒牙」の女幹部・冷酷元帥ラーリである。
日暮ミナは悪の秘密結社「黒牙」の一般戦闘員23号である。
二人は世界征服の野望と総統のデビルサタンのため、日夜「黒牙」の計画に邁進するのだ。
…………任務の日は。
日曜日の朝。カーテンの隙間から差し込む光が、日暮ミナの顔を優しく照らしていた。
ミナはもぞもぞと寝返りを打つ。その隣には、ミナの腕を枕にして、すやすやと眠るリラの姿があった。制服姿の凛々しさとは対照的に、Tシャツとショートパンツというラフな格好の真神リラは、ミナの腕に顔を埋めて、まるで子猫のように丸まっている。身長150cmと小柄で華奢なリラが、身長170cmのグラマラスなミナの腕の中にすっぽりと収まっている様子は、いつ見ても微笑ましかった。
「ん……ミナ……?」
リラが眠い目をこすりながら、小さくつぶやく。
「おはよう、リラちゃん。よく寝てるね」
ミナはそう言って、リラの黒髪ショートを優しく撫でた。
「ふぁ……もう、起きちゃったの?」
リラは不満げに眉をひそめる。
「今日は日曜日だよ。せっかくの休日なんだから、どこかに出かけようかなって」
「だめ……!」
リラはミナの体をぎゅっと抱きしめ、首に顔をうずめた。
「今日は、一日中ゴロゴロする作戦なの。作戦は、絶対遂行!」
その言葉に、ミナはくすりと笑う。
「作戦、ね。でも、せっかくだから、たまには外の空気を吸わないと」
「やだ! ミナとずっとくっついてたいの!」
駄々をこねるリラに、ミナは根負けした。
「わかった、わかった。じゃあ、今日は一日、リラちゃんの言う通りにしようか」
リラはにっこりと微笑むと、再びミナの腕の中へと潜り込んでいった。
結局、二人は昼過ぎまで布団の中で過ごした。朝食は、ミナが冷蔵庫にあったものでササッと作ったトーストと、リラが淹れたインスタントコーヒーだった。
「んー、やっぱりミナのご飯は美味しいなぁ」
「トーストを焼いただけだよ」
「いいの。ミナが作ってくれたってことが大事なの」
そう言って、リラはミナの淹れたコーヒーを一口飲んだ。普段は冷静沈着な幹部とは思えないほど、彼女の表情は柔和だった。
食事を終えると、二人は再び布団へと戻った。
「ねぇ、ミナ」
「なに?」
「もしもさ、将来、庭付きの一戸建てに住んだら、ミナは庭で何したい?」
リラは、以前から愛する人と二人で暮らすことを夢見ていた。そのための資金を貯めるため、幹部として高収入を得ていながらも、あえて質素な六畳一間で生活している。
「そうだなぁ……」
ミナは少し考えてから答えた。
「ハーブを植えたいな。カモミールとか、ミントとか。リラちゃんは?」
「あたしは……広いお庭で、ミナと二人でBBQとかしたい。あと、可愛いお花をいっぱい植えて……」
リラの瞳は、未来の夢を語るとき、いつも以上に輝く。普段はやや鋭く、猫のような瞳も、このときばかりは優しげな丸みを帯びていた。
「いいなぁ、それ。楽しそうだね」
ミナはそう言って、リラの頭を撫でた。
「でも、BBQはいいけど、あたし、虫は苦手だから……。ミナが全部やっつけてね」
「わかった、任せて!」
ミナは力強く胸を叩いた。グラマラスな体型と、穏やかで面倒見の良い性格が相まって、まるで頼れるお姉さんのようだ。茶髪のゆるふわロングも、長いまつげも、すべてが優しさを醸し出している。
布団の中で、二人は将来の夢を語り合った。悪の秘密結社「黒牙」の幹部と戦闘員という立場を忘れ、ただの恋人同士のように。
「疲れてるんでしょ? リラちゃん、もう少し寝てなよ」
ミナは優しくそう声をかけた。
「うぅ……でも、せっかくの休日なのに、ミナを一人にはできない……」
リラはミナの腕にしがみつき、離れようとしない。
「大丈夫だよ。私はリラちゃんが隣にいてくれるだけで十分だから」
その言葉に、リラは安心して、再び目を閉じた。
結局、二人の「ゴロゴロ作戦」は、夕方まで続いた。
夕食は、ミナが腕によりをかけて作ったカレーだった。辛口派のリラと、甘口派のミナ。今日は、ミナがリラのために甘口カレーを作ってくれた。
「ミナは、本当に優しいね」
「え? どうしたの、急に」
「ううん。なんでもない。ただ、ミナといると、すごく安心するなぁって」
リラはそう言って、カレーを頬張った。
夜が更け、二人きりの六畳一間には、穏やかな時間が流れていた。
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