43.勝利の笑み

 ドラゴンは絶対にここで食い止めなければならない。

 比較的安全地帯とされるベイルの町に、ドラゴン殺しが可能なほどの強い冒険者がいないからだ。

 いずれは国が討伐隊を出してくれるのかもしれないけど、その時にはキコルの森が燃えてなくなっているかもしれない。最悪の場合、ベイルの町の人々まで襲われて壊滅してしまうことになる。

 そうなれば……底辺冒険者である俺が食っていけなくなる!


「「「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ♡」」」


 三人の美女のやらしい声が、キコルの森に響き渡った。

 俺の【絶対発情領域ラブエリア・トリガー】が成功した証だろう。ユフィーナとノルンとスーザンの身体が、目が眩むほどの輝きを放った。


「か、身体に力が漲ってくるわ!」


 ユフィーナの結界が強く光る。レベルでも上がったのか、ドラゴンの攻撃にビクともしなくなった。


「おおっ。これならいっぱい魔法を放てそうっすよ!」

「す、すごい……魔力が溢れてくるような感覚……こんな経験初めてだよ……」


 ノルンとスーザンもスキルの効果が表れたようだ。これでドラゴンを倒す準備は整った。

 ……しかし、森に広がった火は止められそうにない。消火活動はドラゴンを倒してからになる。それまで持ち堪えてくれ……とくに俺の収入源になっている薬草の群生地だけでも!


「ゴブゴブゴブアッ!」


 そんな苦渋の決断をしようと、覚悟を決めた時だった。

 俺と何度も拳を交えた、もはやライバルと呼ぶに相応しいゴブリンが颯爽と現れたのだ。

 ゴブリンは全身の筋肉を膨張させて、弾丸のようなスピードで駆ける。燃える木に向かって拳を放ち、その拳圧で火を消した。


「ゴブーーッ!」


 ゴブリンはニヤリと笑い、俺に拳を向ける。まるで「ここは俺に任せろ!」と言っているようだった。


「なんなんすかあれ! 動き方キモッ……。あれってゴブリンなんすか!?」

「いや、無理があるでしょ! 見た目はゴブリンの進化形態に見えなくはないけど……、動きがモンスターのものじゃないよっ!」


 ノルンとスーザンは初めて目にしたゴブリンのインパクトにパニックになっていた。やっぱりあのゴブリンって普通じゃなかったんだなぁ……。


「あのゴブリンに敵対の意思はない! 今はドラゴンへの攻撃に意識を向けるんだ!」


 俺の声に反応して、ノルンとスーザンがドラゴンに杖を向けた。

 弾切れのない魔法攻撃。反撃は姫騎士の結界でシャットアウトできる。


「グ、グギャアア……」


 雨あられの魔法攻撃に、さすがのドラゴンもダメージを負ったようだ。


「攻撃は中断だ!」


 ドラゴンの高度が下がったのを見て、俺は駆け出した。


「え、ジェイル!?」


 俺が結界を通り抜けたのを目にしたユフィーナが声を上げる。


「……」


 あのドラゴンだって、ラインハルトに狙われなければ大人しくしていたかもしれない。

 こうなってしまった以上、放置はできない。けれど、人間がやらかしたことだと思うと、悪い気もする。

 ドラゴンのブレスが止んだ。接近してくる俺に警戒したのだろう。翼を広げて高度を上げやがった。


「ちっ、届くと思ったのにっ」


 飛行するモンスターにどうやって近づくか。警戒しているドラゴンは空で迎え撃つ体勢になっている。


「ゴブゴブ」

「オーケー、頼むぜ相棒!」


 俺が走る先に、ゴブリンが仰向けになって足の裏を空に向けていた。

 意図が伝わった俺は、迷いなくゴブリンの足の裏に飛び乗った。


「ゴブブ……」


 ゴブリンが膝を曲げてパワーを溜める。


「ゴブアーーッ!!」


 ゴブリンが俺を蹴り出す瞬間、俺もタイミングを合わせて跳躍した。

 予想を超えたスピードと跳躍力。ドラゴンに反応される前に上空を通過し、背後に回り込むことができた。


「グオッ!?」

「終わりだ。……こんなこと、俺だってしたくなかったんだぞ」


 ドラゴンの背中に乗ることに成功した。振り払おうとするが、背中にくっついた相手を剥がすのはモンスターだって難しいだろう。

 俺はドラゴンの鱗に触れる。


「【絶対発情領域ラブエリア・トリガー】……フルパワー!」

「グヤアアアアアアアァァァァァァァァンッ!!」


 ちょっと喘ぎ声が混じったかのような叫び声を上げるドラゴン。

 ビクンビクンと激しく痙攣したかと思えば、力を失って地面に落下した。

 ドオォン! と土埃を上げて大きな音と衝撃に襲われたが、上手く受け身を取れたようだ。我ながらタフだぜ。


「ジェイル! 無事なら返事して!!」

「大きい声出さなくても聞こえてるって」


 ドラゴンと一緒に落下したもんだから心配してくれたのだろう。ユフィーナが風を置き去りにするスピードで真っ先に駆けつけてくれた。


「えっと……ドラゴンを倒したのよね?」

「ああ。俺たちの勝利だ」


 地面に倒れて巨体をビクンビクンと痙攣させているドラゴン。通用するかわからないからフルパワーでやっちゃったけど……やりすぎたかな?

 とにかくこれで危機は去った。ほっとすると一気に身体から力が抜ける。


「おっと……」

「ジェイルったら……危ないわよ?」


 ふらついた俺を、ユフィーナが抱き留めてくれる。

 寄りかかれる人がいるのは、案外良いものなんだな。安心したせいなのか、笑顔が止まらなかった。



  ───


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・Amazonほか電子版SS

「危険人物がいるプールでの楽しみ方」

※2巻本編プール回と合わせると面白さが増す話(文字数だけなら今回一番多い)


エロ漫画の悪役の発売日が近づいてきていますので、皆様ご購入を検討してくださいませ~(そして買おう!)

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