第23話 ②あんまり遠くに飛ぶので
大砲製造の職場に戻って、朝、座学に呼ばれた。新しい訓練生が聴講している。
なぜか私のときにはなかった観測者が使う望遠鏡の原理を解説している。
午後、実弾発射訓練場に行くと、軍曹から、この望遠鏡で覗いてみて、と渡された
「遠くて確認しづらいですね」
「そうだとも、初期モデルの大砲では十分だったんだがね」
つまりだ、砲弾が遠くに飛ぶようになって、着地点を知らせる役目の観測者の望遠鏡の能力が足りないので何とかせよと。
〇×△
使っているのはガリレオ式。筒の先には凸レンズ、目の前には凹レンズが使われる。凹レンズは小さくて製造がむずかしいそうだ。なので、倍率を上げられない。
両方とも凸レンズにすると製造もしやすいし、明るくて倍率を上げられるらしいのだが、像がさかさまになってしまうので、役に立たないと。
「レンズは、ここで作ってるんですか」
「ガラス自体は別のところから購入しているけど、ここで磨いてるよ」
〇×△
すぐに解決するわけでもなく、数日、図書室に通った。ヒントさえない。
「本部のある街の図書館へ出張したい」
往復2週間。何も成果がなかった。
簡単な話、ひっくり返っているなら、もう1回ひっくり返せば正常な像になるはず。
ひたすら、凸レンズを増やしたりして実験を続けた。
女なのに髪もとかずに3日、いい加減疲れてきたので、シャワーを浴び鏡の前に立つと、ひらめいた。左右が入れ替わってる。
小さな鏡を何枚も用意して、いろいろな角度や組み合わせる実験を1週間。像が正立した!
〇×△
「軍曹、ガラス職人を呼んでください」
「上から見ると4cmの正方形、厚み20mmのガラスを用意できますか」
「時間はかかるが大丈夫だ」
「それを対角線で切断してください」
1週間後、出来上がった。
この二つのガラスの塊は、光を全部反射する形で使い90度ずらしておくと、4回反射し、像がひっくり返るのだ。できたー。プリズムと名付けた。
〇×△
凸レンズ+凸レンズという構成の望遠鏡で、目の前の凸レンズの前にプリズムを置くと、成立した像が見れるし、像は明るい。
鏡筒を折り曲げて、その部分いプリズムを置くと、望遠鏡が短くなった。鉄でできていた鏡筒が短くなったので軽くなり、ハンドリングもよくなった。良いことづくめである。
まー、製造コストと時間が大幅に上がったが、それは知らぬこと。
個人的に、実験と称して、小さなのを2個作ってもらい、両眼で遠くを見れるものを作ったけど、少佐に見つかって奪われてしまった。
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