第20話 ②初めて食べるもの

 大砲を作っているところは山の中層にある樹海の秘密のダンジョン。そこから港町までは、やっぱり外が見えないようにした馬車で移動した。町の北側の入り口で降ろされ、来るときに使った宿舎が1週間利用できると告げられた。

 特に荷物もなかったが、一度宿舎に入り、そこから街の南側に散歩に出る。


 この城壁で囲まれた町ラグーサは、千年ほど前は、北側から白人の奴隷が海を渡った先にある大陸へ輸出されるのでにぎわったようだ。南の大陸は今より涼しくて緑がいっぱいで綿花とか栽培されていたので、奴隷が必要だったらしい。ダンジョンにいるとき、図書館で少し歴史ものを読んで知った。


 その後、本国やその東側の民族との戦争が頻繁に起きていて、海には海賊たちが出没するようになって数百年たっているらしい。いつの時代でも、豊かな人からものを奪うのは一番簡単だ。もちろん対価は自分の命だけれど。


〇×△


 海岸が近づくと、いい匂いがしてくる。

「その白っぽいのください」

「おお、ウナギの白焼きだね。そこのレモンを絞って振りかけるとおいしいぞ」

 蒸したようで、ウナギの油臭さはなく、塩味がいい。

「隣のたれを1本」

「このたれは最近でてきたんだ、どうぞ」

 あまい。身が柔らかいけど、蒸したのを一度焼いたのだろうか、皮がこおばしい。


 隣の屋台で赤ワインを購入して、ベンチに座って飲む。人通りが多いけど、南側に広がる港には船がたくさん浮いていて、岸では人が忙しそうにしている。

 目の前を二人組の警ら隊が通っていく。腰に差しているのはレイピアだ。

 隣の屋台で買ったタコの足をもぐもぐやっていると、子供たちが目の前を走り抜ける。治安はいいようだ。それなりに魚が獲れて、みんなの懐が潤っていいるのだろう。

 本国の北ではミラノ、フィレンツェ、ジェノヴァなどの街が高い経済力を誇っているらしい。

 屋台の中には、きれいな色彩のツボや皿も売られているし、ガラス製品も見られる。

 小さな筒があったので中をのぞくと幾何学模様がキラキラしてて、回転させると模様がころころと変わる。きれいだと思ったけど、高価なのであきらめた。特に使うつもりはなかったが、虫眼鏡を買った。レンズの枠の装飾がきれいだった。


 1週間の休暇はすぐに終わってしまった。













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