第15話 ③マグロを釣り上げる

 若者の名前はエンゾー。少し大きめの船を買ったので、マグロを釣りに出かけないかとブリジッタは誘われた。

 シチリア島と本島の間の流れの急なところから、少し南に船を走らせる。海の色は濃い青色になってきて深そう。

 2時間ほど走ると、エンゾーは、20mくらいの綱に、下駄ぐらいの大きさの木の板を括り付け、それを2本、船尾方向に投げ込んだ。船が走り出すと、木の板は、せわしく海面でほんろうされている様子が小魚がはねているように見えるんだ」


 エンゾーは帆を操ってまっすぐ船を走らせてる。途中、ぐっと後ろに引っ張られる感触。帆を下ろし、綱を引き寄せると、50cmほどの魚が船内に飛び込んできた。円蔵は、かぎづめで頭を押さえ、えらの部分に包丁を入れた。


「マグロの子供だなー。

この大きさだと赤身のところが大半で、でもねっとりと柔らかくって、とってもおいしいはず。

食べてみるか」

といって、3枚におろし身を薄くスライスし、魚醤をちょっと付けた。

トロっとした食感で甘みもあるかもしれない。おいしい。


〇×△


 また走り出し、結局5匹のシイラを釣って、その日は帰島した。

 シイラは大きいけど、あまり人気はないらしく、安く買いたたかれた。

 マグロの半身をもらって帰り、孤児院では、細い策に切って軽く火を通してからみんなで食べた。アンチョビと一緒に食べると、いくらでも食べられそう。

 日が当たったところがひりひりしてきたので、布をぬらしてちょっとだけ酢をたらして腕と足、顔に乗っけておくこと30分。何とか和らいだようだ。

 明日も誘われているけど、長袖・長ズボンにしよう。細長い布を用意して頭と顔を覆うような大きさにカットした。


〇×△


 翌日も、昨日と同じ場所まで来たら、綱を2本船尾から流した。

「お願いがあるんだけど」

「なんなりと」

「手を海水につけて、魚がいそうな方向を探してほしい」

といわれ、チャレンジしてみる。北西の方向に掌がじんじんと反応したのでそっちの方向を指すと、

「風上だから無理っぽいね。

 少し走るよ」

 30分ほどしたら止まったので、また手を海水に入れる。

 今度は真東で反応があった。

「東に強い反応があるよ」

 「みえる。イルカたちだ」

今度は南東方向に、いつもと違うピリピリとする反応があったのでそう伝えた。

「いわしかな。海鳥が群がってきたね。おー、海が盛り上がった。下にマグロがいるかもしれない。いくぞー」


 綱の1本がピーンと張った。エンゾーは綱を引いて回収しているが、その先の波間には大きな魚が見え隠れする。

「悪い、船の反対側に行ってて」

 小舟なので、その魚に引っ張られて、エンゾーの近くが沈み気味。反対の舳先に行って船べりにかじりついていた。

 格闘の末、1.5mほどもあって丸々と太ったマグロが船べりでぷかぷか浮いている。エンゾーは、槍を心臓に挿してかぎづめで船上に引き上げた。


〇×△


 日が傾いている。水を飲んで少し休憩してから、港に戻る。灯台の火がとてもうれしい。

 普通の仕事人の1か月分で売れたそうだ。

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