第11話 ②まっすぐには飛ばない

 翌日、午後は演習だ。3人は交代で大砲の弾ごめと発射を行う。もちろん、的に当てないといけないので、微妙に大砲を移動させるが、打った瞬間台座は元の位置からずれる。

 全く同じ方向と角度でも、的から大きく外れることがある。

「軍曹、風の魔法陣をかける人はいますか?」

「いるが、おれだけど」

「では、この5cm角の紙に、高熱になったら1秒間に300回転するという魔方陣をお願いします」

「何か意味があるんだろうね」

「もちろん」


 私は、砲弾の底に魔方陣の書かれた紙を貼り付けて装填した。

「おうおうー、それじゃ、発射した瞬間に紙は燃えてしまうぜ」

「ええ、0.1秒だけ魔法が発動できればいいんです」


 それからの砲弾は、より遠くへ飛び、目標近くに5発が5発とも着弾するようになった。


〇×△


 夕食後、軍曹に呼ばれた。

 いつものドワーフと、別のどうも少佐クラスの人が一人同席していた。

「テレサ君、君の指定した風の魔方陣は、どういう役目をしたのだい」

「砲弾に回転を与えたのです」

「それだけで、到達距離が伸びたのか」

「ええ」

「それに、何度発射してもほぼ同じ場所に着弾した」

「ええ、そうです」


「報告書の通りだが、それはどういう理論なのかね」

と、少佐が尋ねる。

「わからないけど、ひらめいたのです」

「なんと。

 君のスキルは確か」

「算術です」

「それだけか?」

「それだけです」


〇×△


 翌朝起きると、座学の前に呼ばれ、

「本来なら今日までの訓練だったけれど、特別に1か月伸びたからね」



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