第4話 ①甘いブドウはみんな好き

 爺さんは植物の成長促進というスキルを持っている。魔法は何を持っているのか知らない。毎年、丈夫な台木に、甘かったり大粒のブドウをならせた枝を接木して、1年育てる。普通は3年ほどしないと実はならないが、爺さんのスキルをかけて1年あればぶどうの実はなるので、成果が確認できる。


「じっちゃんは、祝福で魔法は何をもらったの」

「生活魔法だよ」

「それって役に立ってる?」

「かまどに火をともすときとか」


 先代も成長促進スキルを持っていたそうだ。ブドウは甘くなるほど上質のブドウ酒が作れるらしい。



〇×△


 200年ほど前、この農家というか荘園を経営していた祖先が、小作人を開放した。普通、小作人はブドウの農園の手伝い的な役割しか持っていず、自分の土地はない。収穫したブドウも、荘園主の搾ぼり機を借りてワインを作る。搾ぼったワインも荘園の低温倉庫に寝かせるし、販売するのも荘園主だった。

 何を思ったが当時の荘園主は、小作人に土地を分けた。もちろんただではないが、作ったワインで支払ってもらうという形で、10年から20年をかけて、小作人は自前の農園を持つことができた。


 次の世代になったとき、この荘園と、自前の農地を持った人たちのブドウの収穫量は3割も向上し、ワインの質も向上したという。


〇×△


 2週間かけて、僕に割り当てられた土地の1列の土を掘り返し、牛糞とか雑草、秋に近くの森から集めたはっぱを集めて作った腐葉土を寝かして作った肥料を混ぜ込んだ。


 台木は爺さん支給で、接ぎ木するのは将来性のあるものの中で爺さんが選んだ10本。接ぎ木をして、女神さまに「甘ーくなってね」と祈りを込めた。日陰で1日置いてから、1列の畝に植えて水やりをした。こんなに働いたのは初めて。


〇×△


 ずーと、幼なじみのシーちゃんが横でちょっかいをしてくるけど、農園の子供、えーと次男だけど、

「ぶどうの育成は身に着ける技術なんだからー、べー」

ってやったら、ひっぱたいてくるし。


 お昼を食べた後は、シーちゃんと悪ガキたちと、いつも走り回っているダックスといつもの川に出かけた。冷えた体をあっためるのに作った小さな池に人が倒れていた。そうーと近づくと、真っ裸なエルフの女の人がいる。どうも、寝ているようだ。

 水面にはぽっかりとおっぱいが浮かんでいる。





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