第3話 ③ウナギおいしや

 次男の僕マルコは、将来家業を手伝うことになる。5歳になったので、爺さんが僕専用の畑を持たせてくた。ほぼ10m×10mという猫の額みたいな畑で、ブドウを栽培する。最終的には赤ぶどう酒になる。

 土魔法が使えるので30cmほどの深さを掘り返せるのだが、もちろんすぐばてる。1mほど掘り返せたが、ちょっと気の遠くなる作業だね。


〇×△


 午後は近くの悪ガキと一緒に川遊びに出かけた。収穫の秋といっても、このシチリア島の南はまだまだ暑い。でも、近くを流れる川の水は冷たいので、土魔法で小さなプールを作って、あったまるのを待っている。


 待っている間、遊び仲間のチイちゃんと川エビの捕獲網を作る。網はいたるところに生えているつる性の植物をちぎって水につけておき、3日ほどたって、河原の大きな石の上で柔らかい部分を小石でそぎ落とす。すると、柔らかくて強靭な糸が残るので、これを編んでかごを作る。

 そのなかに、魚の骨とか、穴を掘ったときに出てきた虫を放り込んで、水に沈めておく。


 一緒に網を作っていると、チイちゃんが前かがみになっているときにチッパイが見えたりしてニタニタしてると、殺気が。

 さっと、頭を低くすると、シーちゃんの足げりがスーと通り過ぎる。

「逃げるなすけべー」


 チイちゃんは12歳だそうで、獲れた川エビを港へ売りに行くんだそうだ。女の人が買ってくれて、川エビを餌にして獲れたウナギを分けてくれる。1匹は自分でもらって、1匹を僕に分けてくれる。

 爺さんに渡すと、さばいてくれて白焼きにして夕飯のおかずになる。


〇×△


 じつは、チイちゃんから相談を受けていて、内職をしている。その取り引きのある女の人はブリジッタという名前で、川エビはどうやって獲っているかと聞かれたので、網を作って川に沈めておくんだと説明したら、大きい網は作れないかという依頼が来た。

 まー、本物の網を買うと高価なので、がきんちょたちに作ってもらえということらしい。



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