宇宙の旅
甘茶
第1話 【止まらずに進もうよ】
【止まらずに進もうよ】
〝Hello、World!〟
無機質な機械の声が響く。ここは小さな小さな私の世界。怖くて、怖くて、怖くて。とても美しく可愛く大事な私の世界。
彷徨い続けるこの小さな私の世界で今日も目覚める。いや、今日が今日なのかもわからない。時間感覚など等に捨てた。軽く機械をいじり本日の目的地を設定する。昨日、レーダーに反応を検知した星。怖くて行っていなかったが今更怖がっていたら私の世界に示しが付かないしね。
乙、頑張れ。乙、君ならできる。
自分にそう言い聞かせながら小さな私の世界に大の字に寝転ぶ。少し落ち着いた。落ち着け、落ち着け。
ふう。
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星に着いた。恐怖を抱きながらも私の小さな世界から出てみる。
そこには、白黒の世界が広がっていた。はるか昔に見た本の一節を思い出す。
〝諸君、我々は失敗した。〟
あの本の内容はよく覚えていない。だけど、星に色が〝着いてしまった〟が題材の物語だった気がする。ここはその物語に出てきた色が着く前の世界、に似ている。正直、気が滅入る。
歩いてみる。色があるならば美しく広がっていたであろう木の群生。…なんだっけ…森っていうんだっけ…に足を踏み入れる。色はない。自分の手や服を見ると色はあるのに。気持ち悪い。白黒写真の中に入った気分。木の幹や地面に…おそらくだけど…虫がいたりしたけど私には近づいてこない。
〝私だけ別の世界に居るみたいに〟
避けられてる気がする。…いや。もしかしたらこの星に拒否されているのかもしれない。だって、色がない星に急に現れた色のある存在だ。受け入れられるはずが無い。
そう考えた私はしばらくしたら帰ろう、と思いしばらく経って私の小さな世界の前に戻る。
絶望
私の小さな世界から色が消えていた。あぁ、私はここで死ぬのかも知れない。漠然とそう考えた。
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どれほど時間経っただろうか。1時間かも知れない。1日かも知れない。1週間かも知れない。1ヶ月かも知れない。1年かも知れない。
ただ、私の小さな世界の前で立ち続けていた。そんなある時。
引っ張られてる感覚がした。
そちらの方向を見てみると、奇妙な灰色の生物が私の服を引っ張っていた。
ふむ。私は思考した。
この生物はなんだろうか。愛らしい見た目をしていた。色は置いといて。頭が楕円状に広がっており、体は小さい。私の半分しかないだろう。
そんな風にこの生物に着いて思考をしていた。していたが、結論が出てこなかったので着いて行ってみることにした。
長めに歩くと、この奇妙な生物がたくさんいる場所についた。沢山いる。
皆んなが私のことを見ている。私のことを引っ張ってきた生物に連れられて生物達の真ん中に来る。私は足を引っ張られ何事かと思ったけど皆んなが座り出したのを見て私も座った。
皆んながキラキラした目?目がないからキラキラした思考?を私に向けてる気がする。何をすれば良いのだろうか。そう思っていた時、ある生物から思念が届いた。
【iro!iro!iro!】
炒ろ?居ろ?なんだなんだと私は思考して、悩んで、考えて、一つの結論に辿り着く。そこで私は初めて言葉を発した。
『色?』
わーーーっと、奇妙な生物は喜ぶ。どうやら当たりらしい。でも、どうすれば良いのだろうか。
そう悩んでいたら、奇妙な生物が何か持ってきた。植木鉢だ。もちろん、色が無い。
だけど、乙は。私は本能的に理解した。
瞬間。
私は、それに触れていた。
触れた途端、⬛︎⬛︎⬛︎に色が溢れた。
木の群生地には美しい深緑が広がり、この場所から少し離れた場所にある湖と予測していた所には澄んだ水色が広がる。
【WAーーーーーー!】
奇妙な生物の大きい思念が私を襲った。が、すぐに慣れて目を開けるとそこには黄緑色の小さな生物がいた。瞬間、確信する。この奇妙な生物は【ドライアド】と言うのだと。妖精だったのだ。
可愛い。
皆んなにWAー!と叫んでいる間、1匹のドライアドが私に近づいてきて手を掴んだ。ドライアドが笑った気がした。
私は何故だかわからないが頬に水が流れた。
嬉しかったのだ。
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さて、この星が色を手にした翌日。
私は私の小さな世界に乗り込んだ。ドライアド達は寝ている。昨日は大変だった。皆んなが集まってお祭り騒ぎ。動物もみーんな集まってたな、と思い出していたらくすり、と笑っていた。
少なからすとも私と仲良くしてくれたけど、あの子達の涙を見るのは嫌だな、と思った私は朝早く起き、この小さな私の世界に来た。機械をいじり、空へ飛び立とうとする。その時。
【WA!】
1匹のドライアドがそこにいた。確信。これは私のことを引っ張って連れて行ったドライアドだと。どうして、と言う前にドライアドはこう言った気がした。
【またね!】
それを聞いた私はピタ、と止まり。数秒後に大笑いしていた。わっはっはっ、わっはっはっ。
私がバカだった。別れなら別れで笑顔でまたね、と言えばいいのだ。たったそれだけの事だったんだ。
私は自分のことをバカにした。
私は実にバカだな、と。でも、すっきりした。
私は笑顔で、手を小さくひらひらと振り、そのドライアドにこう言った。
『またね?私の可愛い子ちゃん。』
そのドライアドはぱぁ、と顔が明るくなった気がした。私はそれを見て小さな私の世界に乗り込み、後ろを振り返ることなく、空へ、宇宙へ。飛び立って行った。
end.see you next time。
good bye!【色彩の星】
宇宙の旅 甘茶 @makkuronatake
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