第24話 ニコニコのニヤニヤ、大興奮の魔獣たち?

 後ろを見れば、無表情のレオニード・カステル。そして強面だけどニコニコのニヤニヤ、大興奮で地面を叩いたり、しっぽでバシバシしたり、ステップを踏んでいる、彼の家族魔獣たちが。


 そう和也さんが、とりあえず戦闘を見せると言った人物と、みんなが可愛いを見せよう、ちゃんと見れるかなと言っていた人物。それはレオニード・カステルと家族魔獣たちだったんだ。


 もともと次にゲートが開かれた場合は和也さんが付いて、俺たちの戦闘の仕方を、軽く見せる予定だったらしい。だからちょうど今日ゲートが開かられから、レオニード・カステルたちを連れてきたんだ。


 そして魔獣たちはここまで移動してくるまでに、クルルたちのいつもの登場のポーズとセリフ。それから攻撃の叫びを聞かせてほしいって、クルルたちに話してきて。

 クルルたちはこれはやっぱり、自分たちの可愛いについて、会って話しを聞きたかったのでは? と思い。不貞腐れていたけれど、しっかり可愛いを見せようとしていたんだ。


 それで今の魔獣たちの興奮ぶりだ。まさか本当に可愛いが目的で、クルルたちに会いたいと言ったのか? 確かに元々の亡命理由が、クルルたちに興味があってだったもんな。ただ……、本当に可愛いで? 


『さぁ、次は誰がやる?』


『ピィスケは1番最後が良いんじゃないかな? 今日は広範囲でバラバラに攻撃するんじゃないでしょう? 同じような場所で攻撃するから、ピィスケが先に攻撃すると、みんな滑っちゃうかも』


『確かにそうですね。他の皆さんが滑る動きを取り入れて攻撃するなら別ですが、そのままの攻撃をするなら、その方が良いかもしれません』


『じゃあ、次はおいらが行くだぬ。それであとはピースと、まったり応援するだぬ』


『じゃあその次、オレなんだな!!』


『さ、最後、ぼくやるです』


『じゃあ決まり!! ぽん吉、頑張って!!』


『可愛いまったり攻撃やっちゃえ!!』


 次の攻撃はぽん吉に決まり、ぽん吉がビルの端まで行くと、家族魔獣たちがさらに盛り上がる。


『いくだぬよ~』


『ぽん吉がんばってぇ。お茶用意してるよぉ』


『うんだぬ!! ……ぼくの番だぬ? ぽんぽこもふっと頑張るだぬ!!』


 お腹をぽんぽこ叩いたあと、ペタッとうつ伏せに寝転がり、どこからか湯呑みを出して、飲む真似をしたあと、ふはぁと溜め息を吐いたぽん吉。ぽん吉の可愛いはこれらしい。


 可愛いというかまったりだ。まったりのぽん吉だから、どうしてもこうなったって。今他の可愛いポーズを考え中だと。


 そうして、一瞬動きを止めた異世界人と魔獣たちだったけど、ミミナに続き馬鹿にされたと思ったんだろう。まぁ、あのまったり姿じゃな。さっきよりも勢いよく、攻撃しようとしてきた。


『いくだぬよ!!』


 コロコロ寝転んだまま移動したぽん吉。


『何に変わるだぬ? ぽんぽこぽ~んのだぬだぬよ~!!』』


 言葉には少しは勢いがあるものの、そのままの格好でビルから降りて行った。いや、落ちて行った。ただ、落ちている途中で、ブラッドハウルに変身。しかも分身すると、一気に魔獣たちを襲い始めた。


 そんなぽん吉の攻撃に、異世界人と魔獣たちが慌て、間違えて本当の仲間の魔獣を襲ったり、誰を攻撃すれば良いのか分からずに躊躇し、その間に変身ぽん吉に倒されたりして。

 あっという間にミミナと同じくらいの異世界人と魔獣を倒すと、ぽん吉はビルを駆け上り、可愛いまったりポーズをとった。それにクルルたちが拍手をする。


 これがぽん吉の攻撃だ。ぽん吉は実際に見たことがある物なら、人だろうが魔獣だろうが、変身することができるんだ。しかも匂いまで完璧に真似ることができるため、異世界人だけじゃなく、魔獣の鼻も騙し、攻撃をすることができる。


 それに分身する能力も持っていて、最大100まで変身できるから、かなりの戦力になるんだ。本人の性格はまったりなのに、実は戦闘能力抜群なのがぽん吉なんだよ。


『さすがぽん吉なんだな!!』


『あっという間だったね!!』


『ぽん吉、お疲れ様ぁ。はい、お茶入れといたよぉ』


『ピース、ありがとうだぬ!』


 ぽん吉と一緒にお茶を飲み始めるピース。その姿にまた大盛り上がりの家族魔獣たち。レオニード・カステルは……、相変わらず無表情だ。ぽん吉たちを見て、どう思っているんだろう?


『次はオレなんだな!! ルーナお兄ちゃん頑張るなんだな!!』


『うん!! あたち、楽しみなの! それにいっぱい応援なの!! ユキも応援ねなの!!』


『ユキくん応援する!! 頑張れ頑張れなのぉ!!』


『『なのぉ!!』』


 ルーナとユキの応援にニコニコ、ニマニマ、デレデレなランガ。


「おい、デレデレし過ぎてると、怪我するかもしれないぞ」


『大丈夫なんだな。ルーナとユキ応援なのに、しっかり攻撃しないなんてないんだな! 完璧に決めるんだな!』


 すぐにキリッとしたランガ。そのままビルの端まで堂々と歩いていく。そして……。


『もこふわカッコ可愛いランガ、ビシッと参上なんだな!!』


 そう言い、ちょこんと座ると足の間に両手を置き、首をこてんと倒して、完璧なぬいぐるみになった。


『お兄ちゃん、カッコかわいいなのぉ!!』


『いいなのぉ!!』


 バシバシ、ドシドシ、パタタタタッ! とルーナとユキと一緒に盛り上がる家族魔獣たち。そんなルーナとユキを見てニコッと笑ったランガ。そのままビルから飛び出して行く。


『ふもわこビリビリ、お兄ちゃんのカッコ可愛い攻撃なんだなぁ!!』


 そしてビルの中間くらいまで降りたところで、『グオアァァァッ!!』と圧のある咆哮を上げると。それにより異世界人たちと魔獣たちは、その場から動けなくなり。

 動けなくなったところに、雷攻撃で広範囲攻撃をし、感電させ一瞬にしてたくさんの敵を倒す。雷の攻撃が強すぎて、燃えている敵もいる。


 だが、それだけじゃ終わらない。雷で倒すことができなかった、咆哮と感電で動けなくなっている異世界人と魔獣たちを牙で攻撃。そうして攻撃が終わると、さっきのぽん吉のようにビルを駆け上がってきて、最後に可愛いポーズをとった。


『お兄ちゃんカッコいいなの!! 凄いなの!!』


『凄いなのぉ!!』


『ふへへ、お兄ちゃん頑張ったんだな。今日の攻撃も完璧だったんだな』


『ランガお疲れ様!』


『あ、ねぇねぇ、なんかあの魔獣、ランガの方見て、めちゃゃくちゃニコニコしてるよ』


『本当だくま』


『今までで1番ニコニコぷー』


 見れば家族魔獣の1匹が、確かに今までで1番ニコニコしているように見えた。何だ? ランガの攻撃が気に入ったのか?


『さぁ、次で最後。ピィスケ頑張ってね』


『残りは……あれくらいなら、ピィスケもササッと終わるね』


『今日は突進だけ? 槍もやる?』


『せっかくだから、どっちもやったら?』


『あっ、でもスピード出てると、突進だけで終わっちゃうかもなんだな』


『そうですわね。今回はそこまで広範囲ではないですわ』


『じゃあやっぱり突進だけ?』


『う、うんです。え、えと、ツルツルいっぱい練習したでしょです。だ、だから、どれくらい良く滑って攻撃できるか、やってみるです』


『そか!! そうだよね。いっぱい練習したもんね』


『一生懸命練習したぷー』


『じゃあ突進攻撃、頑張ってね!!』


『う、うんです!!』


 最後ピィスケが攻撃に向かう。俺たちが倒す予定の異世界人と魔獣は残り4分の1。ピィスケなら問題ないだろう。


 俺はピィスケが準備に入るまでに、家族魔獣とレオニード・カステルを見る。家族魔獣たちは、さっきまでとても喜んでいたけど、今はピィスケを応援してくれていた。ここにくるまでも、ここにきてからも、魔獣のこんな様子を初めて見たから、ちょっとビックリしたよ。


 レオニード・カステルの方は、会った時から今までずっと無表情だから、何を考えているか分からないけど。


 まぁ、この感じなら、今度別の日に会って話すのも問題はないかな。どうせならこの感じのまま会いたい。


『ピィスケやっちゃえ!!』


『シューッ! シュパパッくま!!』


『頑張れですわ!!』


 みんなの声に前を見る。ピィスケがビルの端に立ち翼を広げた。

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