4話 屋上改造、お昼寝サロン誕生
翌日から、ミアは密かに屋上の改造を始めた。
「えーっと、まずは、お掃除からかな?」
ミアは袖をまくり上げて、やる気満々だ。
(お父様の『廃材マジック』、今こそ発揮の時よ!)
貴族でありながら日曜大工が大得意なミアの父。古い建具や家具を魔法のように組み合わせる匠の技は村でも有名だ。ミアは鼻息荒く張り切る。
次に、溜まった落ち葉を箒で掃いていたら、なぜかくるくる回りながら掃除していた。
(回るのって楽しい!猫時代の名残かも?)
さらに、ピクニックシートがわりに絨毯を運び込む。敷き終わると、つい癖でゴロゴロと転がった。
「あー、気持ちいい~♪」
クッションの次は、テーブル?寮のゴミ置き場で宝探し開始!
「あ、これ使えそう!これも!わー、まるで宝の山~」
壊れたところは、父の教えを思い出してトンカチで丁寧に直していく。
「これは、園芸部が使わなくなった植物たち」
しなしなと枯れかけた鉢植えを見つけて、ミアは治癒魔法をそっとかけた。みるみる葉っぱが青々としてくる。
「やった!緑があると癒される~」
名付けてお昼寝サロン。さっそくごろ寝すると、目の前に空が広がり、四月の柔らかな風がミアの頬をそっとなでていった。
*
「えー、なにそれ!? 面白そう!」
手芸部の部員たちも手伝いに入り、屋上はにわかに賑やかになった。
「うーん、働くとお腹減るねー!」
生徒たちは、さっそく持ち込んだおやつを広げている。
「テーブル足りないでしょ?りんご箱をこうするとね」
ミアはりんご箱をひっくり返し、その上にギンガムチェックの布をかけた。即席のテーブルが完成する。
「わあ、可愛い!まるで田舎のピクニックみたい」
「ミアちゃんってセンスあるのね」
褒められて、ミアはありもしないヒゲをピンと伸ばしたい気持ちをぐっと抑えた。
部長がかごに入ったスプリングピーチをみんなに一個ずつ配る。
「わあ、紅水晶みたいなツヤ!」
リリアが取り出したのは、街で話題の幻獣ビスケット。クリーム色の箱に金色の文字で書かれたロゴが輝いている。
「『古代竜』や『ユニコーン』が出ると願いが叶うって噂なのよ」
カードには、可愛い妖精が描かれている。
「今は春の限定版で『春の妖精』バージョン」
箱を開けると、桜の花びらと四つ葉のクローバーの形をした、薄いピンクと緑色のビスケットが顔を出した。
ほんのりと甘い香りに、ミアは目を輝かせる。
こんなの一口でパクリだにゃとは思うが、ぐっと我慢する。上品に味わわなくては。
エマが取り出したのは、有名なキャンディー職人が作る「魔法の棒付きキャンディー」。
「棒に魔法がかかってるって本当?」
「この棒は属性があってね、風、土、火、水のどれかなのよ。途中でキャンディーの味が属性の影響を受けて変わるのよ」
ミアは迷った末に、魚の形をした青い飴を選んだ。
舐めてみると、かすかに塩気のある甘みだ。それが爽やかなレモンの風味に変わった。
(あれ?酸っぱいけど、美味しい!)
猫時代も人間になってからもレモンは苦手だったはずなのに、不思議と好きになっていた。
郷土レストランの娘、ソフィアが恐る恐る取り出したのは、地元の名産品「森のキノコブレッド」。
赤と紫の毒々しい色で、しかもキノコの形をしている。
「これ、見た目はちょっとアレなんだけどね。
でも、すごく美味しいのよ!幻覚じゃないかってぐらい」
いつもは口数の少ないソフィアが、一生懸命説明する。
「ほら、騙されたと思って」
(幻覚?って、正直怖い)
勇気を出してミアが一口食べると、ナッツとチーズに似たコクがじわっと広がり、驚きのあまり頬が緩んだ。
「美味しい!全然見た目と違う!」
「でしょう?見た目で判断しちゃダメなのよね」
「なんか、街のコーヒーハウスや本物のサロンみたい。ううん、それより面白いわ」
「ミアちゃんのアイデア、大成功ね」
春の午後のうららかな日差しの中、みんなでお菓子を食べながらおしゃべりする時間がゆったりと過ぎていく。
(猫の集会はみんなで座ってるだけだったのに。人間のお茶会はとっても楽しいニャ、おいしいニャ)
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