ホラーやホラー寄りの開幕のミステリー長編で、祭祀やその土地の伝説が語られて事件や出来事に絡まっていく、というのはよく見かける定型のひとつであると思います。
不気味で曖昧で、解決の糸口の見えないその序盤の雰囲気が、実は一番好きです。
謎が解体されて、結局超常的なものが人の事情に収束されるのは残念にすら思うこともある。
なので本作品は、個人的には美味しいトコどり、と言ってよく、とても楽しい。
醜悪な出来事が事実を糊塗されて美談に押し込められたり、不気味な怪談が伝説に関係あるのかないのか分からぬまま起きたり、人の業が垣間見えるのも楽しいところです。