夏休みの宿題とお昼ご飯~その2

―リビング―


「ここでご飯頂くのも久しぶりな気がするわ。お互いによく行き来してたわよね。」


「そうだな。」


「今はうちの母親もおば様も働いてるから、なかなかご飯お呼ばれしてって訳にはいかないわよね・・」


「それはお互い様だな。」


「それにしても・・あなたが料理するなんて一体なんの風の吹き回し?」


「さっき話した一人暮らしもあるが・・将来、好きな人を助ける事が出来るようになりたいからな・・まだまだ先の話だろうが。」


「へぇ・・もうそこまで考えてるんだ。」


「まぁな。」


「・・・・」


「どうした?」


「ん・・あなたの事を色々となじってるけど、あなたに比べて私はどうなんだろうな?思って。」


「焦った事はないだろ?」


「最近のあなたを見てると・・凄く不安になるの。前のテストの辺りからかな?あなたに全ての教科で負けて・・更に宿題はもう済ませてる、夏祭りではアルバイト、そして一人暮らしを視野に入れて料理を始めたって聞いて・・ちょっ前まで私と大差無かったのに、あなただけどんどん変わろうとしてるから。」


「けど殆ど成長ないし、失敗ばかりだぜ?笑えるだろ?」


「笑わない・・笑えない所か・・1人にしないで、置いて行って欲しくないって思う。ずるいわよ、自分だけ・・もしかして誰か・・好きな人が出来た?」


「・・お前には隠せないよな。いるよ。」


ズキズキッ

「そっか・・良いなぁ。」


「お前はどうなんだ?」


「私は・・どうかな。まだよく分からないってのが本当の所かな。恋はするものじゃない、落ちるものだって言葉の意味が分からないからね。あなたの片思い、相手に通じたらいいね。」


「・・・」


「?」


「・・そうだな・・」


「どうしたの?何とも言えない顔して・・」


「何でもない。」


「折角だから今日はあなたの料理、私がジャッジしてあげる!感謝しなさいよ?家族以外の感想聞けるのは貴重なんだからねっ。」


「助かる、頼むわ。」


「で・・食材は何使うの?」


「この辺り。」


「えっと・・玉ねぎ、ピーマン、人参・キャベツにもやし・・どシンプルなラインナップね。てか、私はピーマンと人参はいらないからね。」


「好き嫌いするな。」


「やーだーっ食べたくないっ。」


「子供かっ。」


「だって3歳だもんっ。」


「気にせず盛ろう、どうせ入る。」


「えー・・後で寄り分けて、あなたの皿に移すんだから。」


「叔母さんから頼まれてるからな、ちゃんと食べろよ。」


「なっ!なんでここでお母さんの話が出るの?」


「うちのおかんとツーカーじゃねーか。それが俺にまで話がくるだけだ。」


「そっか、親同士かぁ・・仕方ない、食べるわよ食べたらいいんでしょ!!」


「いい子だな。」

ぽんぽん


「あやすなぁ!!」


「3歳児なんだろ?」


「くっ・・・!!一々揚げ足取らないでよ・・」


「で、ここにいるのか?」


「ここにいる間は休憩させて。暫くはお手並み拝見するわ。」


「まぁいいけど。」


「くれぐれも気をつけてね。」


ザクッ

トントントン・・


ザクッザクッ


ザクッ

ドンドンドンドン・・


「へぇ・・意外と器用ね。全部千切りになってる・・」

ドキッ・・

「!!」


「どうした?」


「何でもないわよ。ちょっとカッコイイなって思ったのは確かだけど。」


カチっ・・ボッ・・


「なんで人参だけ入れるの?まとめて入れたらいいじゃない。」


「火の通りが違うんだよ。まとめて入れたら、人参は生焼け間違いないぞ。」


「そうなの?」


「知らないのか?」


「家庭科の調理実習はカレーとか煮る系ばかりだったでしょ?だから焼くや炒めるは知らないのよ。」


「それ位は知った方がいいかもな。」


「悔しいけど返す言葉がないわ・・」


「とりあえず野菜は1度あげて・・今は避けてろよ、火傷するぞ油はねで。」


「え、油はねする?分かったちょっと避難するわ。」


「それっ!」


「凄い!豚肉入れただけでこんな音出るんだ・・てか、熱くないの?」


「暑い!けど作れねーだろ、こうしなきゃ。」


「そうなんだけどね。てか、フライパンもう1つ出してどうするの?」


「麺は別で炒めるんだよ、俺。」


「へぇ・・全部まとめてのイメージで、麺と野菜を別々に焼く発想無かったから。」


カチッ・・ボッ・・


「・・・」


「まずは肉と野菜を・・」


「野菜全混ぜすると結構な音がするね。」


「最後にひとまとめっ。」


「野菜と麺、最後に合わせるんだ・・」


「概ね完成。」


「おー!!」

パチパチパチパチ・・

「美味しそうね。」

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