第38話 終幕 中
(天命視点)
私は、意識が戻った時。
自分が誰かにおぶられている事に気がつくまで時間がかかった。
背負われる。そんな状況が物理的に可能なことは知っていたがまさか自分んがされているとは思わなかった。
私は、混乱した。
さらに、私をおぶっている人物がさほどまで交戦していた人物だと言うことも混乱を助長させる事につながった。
「何故、、、?」
「色々とな」彼は私の問いにそう答える。
これも、また数奇な運命の一つなんだろうか?
◇(三人称視点)
作戦会議を終え、
宮園のファンだった男性も、佐伯もそれぞれ『カフェ・アンリミテッド』を後にした頃のことだ。
「話ってなんですか?」
篠宮が声をかける。
マスターはカウンター越しにコーヒーカップを拭きながら、ふと視線を上げた。
「篠宮くん。さっき“じゃあ俺が、天命を足止めする”と言っていましたね」
「、、それが何か?」
篠宮は、自分が足止めをすることを止められるのかと思った。
マスターは自分が——転生を経験したという——特殊なバックグラウンドがあることを知らない。
しかし、マスターから発せられた言葉は予想とは異なったものだった。
「もし運よく気絶させられることがあれば、そのまま背負ってやってください」
「え?」
篠宮は、自分が天命を足止めできる存在だとマスターから認識されていた事に驚く。
「どこまで?」篠宮は、聞く。
当日、どんな経路で車が動くのか会議で話合われはしたものの当日の状況次第となったのだ。
「『狂言街』へ向かう途中で私たちと合流できるはずです」
しばらく、場が沈黙に支配される。
「でも、、」やっとの思いで篠宮が、言葉を紡ごうとする。しかし彼は、言い淀む。
「天命が途中で能力を使うのでは、と心配しているのでしょう?」
篠宮の考えは、マスターに看破される。
「はい、、」
「大丈夫。その頃にはもう車は止まっているはずです。外から妨害が入っているでしょうから」
「妨害……?」
「ええ」
マスターは短く答え、曖昧に微笑んだ。
◇(天命視点)
自分の意識が戻ってからどれ位の時間がたっただろう?
不思議と、私は自分の目の前にいる存在に対して危害を加えようとは思わなかった。
何故だろう、分からない。
恐らく、運命による巡り合わせだろう。
彼が私を運ぶことも。
私が彼に危害を加えないことも。
全ては運命によるもの。
そう考えることにした。
わからないことは、不安だ。
だから運命という万能な言葉に頼って嫌な気持ちを紛らわす。それで今までの人生を乗り越えてきた。
しかし、何故だろう?
今は、とっても不安だ——
「銃、いるか?」
私が不安感に苛まれている時に、目の前にいる男が、そんな提案をしてきた。
「いいんですか?この体勢で銃があれば、何時でもあなたを殺すことができてしまいますよ?」
「いいよ、別に。アンタが危害を俺に加えようと思っていたなら既に加えてるだろ」
そうかもしれない。
ただ——
「態々、私に銃を渡す必要あります?」
「不安なんだろ?」
彼の返答に私は驚きました。
「なんで、、」
分かるんですか
「だって、アンタにはいつも烈火がいただろ?」
烈火、確かにそうかもしれない。
彼と会ってから彼から離れたことはなかった。
「お前にとっての不安ってのは、多分。烈火の不在証明なんだよ」
それが、正しいなら私は常に烈火を求めている事になる。
それは——烈火に恋している。という事なんだろうか?
◇
「グぞガァ」
小さな、呟きだった。
しかし、私の脳裏には不思議と響いた。
彼のその呟きを聞き
目の前を向く。
そこには、黒服の集団がいた。
そして拘束された人たちも。
その拘束された人間の中には——右目も左目も撃ち抜かれ、胸を抉られた烈火の身体が崩れ落ちていく姿があった。
耳鳴りがする。
目の奥がじんじんと痛む。
烈火が死ぬはずがない。烈火がいなくなるはずがない。
けれど、現実は容赦なく迫ってくる。
胸の奥に、嫌な予感が広がった。
烈火がいない、この瞬間から何もかもが崩れていく――。
そう直感した。
私は、反射的に篠宮の腰から銃を引き抜いていた。
「おい……!」と彼が驚きの声を上げるのも聞こえていたが、意識はもう引き金の方へ向いていた。
黒服たちのざわめきが、波のように押し寄せる。
「やれ!」黒田の怒声が響いた。
一斉に迫る刃と鉄の群れ。
私は烈火の死を想起させられる恐怖を、そのまま能力に変換した。
黒服の一人がぴたりと止まり、瞳孔が開く。
硬直した肉体を迷わず撃ち抜いた。
パァン。
乾いた破裂音が夜に溶ける。
「な……動けない……!」
「ひっ、ひぃ……!」
次々と私の視線に捕らえられ、体を固められた黒服たちが、リズムのように撃ち抜かれていく。
烈火、お前が言っていたな。
――能力に頼りすぎだ。
その通りだ。けれど今は、これしかできない。
撃つたびに胸が抉られるようだった。
烈火の存在自体の不在が、私の背を押していた。
黒田が、額に汗を浮かべながら震えていた。
「動け……ない……!?」
彼の太い首筋に血管が浮き出ている。全身が鉛のように固まり、目だけが見開かれていた。
しかし、私には黒田のことなど関係がなかった。
「天命」と私の名を呼ぶ拘束された男がいた。
彼もどうでも良かった。
私は、ただ烈火の元へと足を進めた。
「烈火!」私の叫びに彼が反応しこちらの方向に顔を向ける。
「天命、、なのか?」
「ええ。私です。」
「そうか、、今。何も見えなくてな」
そういい、彼は私の方向に手を伸ばす。
彼の手が私の頬に触れる。
「また、見えるようになりますよね」
私は、自分でも馬鹿な質問をする
「まぁな。お前を捨てて先に廃業は出来ねぇよ」
彼は、そう呟く。
段々と、彼の声が弱々しくなる。
「でも、今は、少し、、眠いんだ」
「待ってください」
「すまねぇな。どうもこの眠気には抗えそうもない。こんなことになるんだったら、アイツらのこと痛めつける必要なかったな」
烈火は言う「アイツらには、お前の方から謝っといてくれねぇか?」
「烈火の口から謝ってくださいよ。貴方がやったことでしょう、、」私の言葉は、彼に届いたのか分からなかった。
他に言うべきことがあった。
そう気がついた時には、全てが遅すぎるだろう。
◇(篠宮視点)
「篠宮くん。。」
セイラの声が聞こえる。
「あぁ」
俺は、生返事しかできない。
烈火と天命の姿を見ていたからだ。
いきなり行われ出した俺は突然の事になんだか現実味というものを感じれずにいた。
ふと、俺は考えた。
俺が、介入したから烈火が重傷を負ったでは?
「篠宮くん、、」
セイラに声が聞こえる。
彼女にしてもそうだ。
彼女は酷く罪悪感を感じたはずだ。
彼女のために傷ついた人々へ。彼らは皆、俺が巻き込んだんだ。
現在進行形で、行われている全てのことが突然の出来事で感情移入も、その前提になる理解も出来てはいない。
だから俺は助かっているのかもしれない。
自己嫌悪感に押しつぶされる事態から。
「篠宮くん!」
セイラの叫ぶ声が聞こえる。
俺は彼女の方向を向く
セイラは言う
「黒田社長がいない」
あーだめだ。
◇(3人称視点)
「ぜぇ、ぜぇ」黒田は、『狂言街』の方まで逃げ出し乱れた息を整えていた。
天命の拘束からは、なぜか自分は逃げることができた。
「オレは、選ばれた人間なんだ」
ネオンが輝く夜の街。
道路の中央で黒田が叫ぶ。
「あいつらは、絶対に殺す。セイラは、、セイラはオレの――」
オレのものだ!
黒田には、その言葉を紡ぐことは出来なかった。
黒田は自分の腰に違和感を感じたからだ。
自分の腰の一部がやけに熱い。
振り返る。
そこには1人の女がいた。
女は言う
「私の赤ちゃん、返して」
女の言葉で、黒田は目の前の人物が誰か気がついた。
「お前、大門の娘だな」
「なぜこんな所に」
疑問を呟き、黒田は自分の腰にとを触れる。
触れた手を見る。
黒田は、自分の手が真っ赤に染まっている事に気がついた。
次いで、自分が刺されたことを理解した。
「まさか――」
視点を女がいた方向へ合わせる。
しかしそこに、女の姿はなかった。
「うろだろ」
その呟きを最後に黒田は路地に倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます