第34話 衝突

(篠宮視点)


喫茶店でのことだ。


「まぁ。そう言うことなら分かった。しかし、車をどうするかだな。流石に私用でタクシーは使えないしな」

「そうですね」


仕方が、ない。そのことは分かっていた。

『夢咲セイラに少なくとも逃げる選択肢くらいは提示したい』――セイラが音楽の道へ進んだ経緯も見てきているからこそ、抱いた俺のエゴ。

このエゴを貫くために、縁談会場近くで車を待機させておきたかったのだが、、

俺は、頭を抱えていた。


「貸しましょうか?」

「「え?」」


俺の悩みを解消してくれる。

鶴の一声を発した人物は、カフェ・アンリミテッドのマスターだった。




「やっちまった?」

「どうやらそのようですね」


烈火と天命が二人で話している。

俺は、近くの電柱に潜んで奴らの動向を観察している。


「チッ。おれは、取り合えずあの車、追うぞ!」

「分かりました。私は社長に連絡を」


空気が破裂したような音が聞こえる。

烈火は、マスターの車を追い始めたようだ。



「逃げられました」

天命が、社長に連絡を入れている。

『何をやっているバカが!』と黒田の怒鳴る声がここまで聞こえる。


『どうしてくれるんだ』

「烈火は、怪しげなワンボックスカーの方に向かいました」

『お前はどうなんだ!天命!』

「私は、運命の収束を待つだけです」


取り留めのない会話を続けている。


『ッチ。そもそも、何があったんだ?ワンボックスカーより先に回収できただろう』

「ワンボックスカーより先に、行動できる私たちよりも早く行動をした伏兵がいました」

『伏兵?』

「はい。少年でした」

少年。

忠野少年だ。


『まぁいい。お前も早く行動しろ。』

その黒田の声が漏れ着こえたところで俺は動き出した。


「分かりま──

俺は、持参したバットで天命の頭を狙う。

天命は、寸前で俺のバットに気が付き、避ける。



喫茶店にて


「天命と、烈火。二人が、いる可能性が高いですね」


マスターから、その言葉が出た時。

途中で、合流した佐伯含め二人はポカンとした顔だった。


対して俺は、「えっ」と声を出してしまうほどには驚いていた。


烈火と天命。

原作において、たびたびと登場する黒田の私兵『グンタイ』に所属する何でも屋。

そんな、人物を一般人が知っているとは思えない。


「どう、、して?」

彼らを知っているんですか?



「まぁ、こんな仕事を何年も続けているといろんなコネクションができてね」

「はぁ」




『どうした?』黒田が電話を介して天命に尋ねる

「すみません。ちょっと厄介なことが、発生しました。かけ直します」

天命はそう答えると、黒田の電話を切る。


「誰だか、知りませんが運命の名の下に死んでもらいます」


天命が拳銃を取り出す。


天命には、特殊能力がある。人を動けなくする催眠だ。

動けなくなった人間に弾丸を撃ち込む。それがベーシックな奴のスタイルだ。



天命は俺を睨みつける。

能力を発動させた。


俺は──体を硬直させる。ことには、ならず。

天命に近づき拳銃を持つ手をバットで殴る。


油断をしていたのか、銃は路上に落ちる。


唖然とした、天命が一言。

「どうして、、」と言った。




「えーそんなヤバい奴らが、いるんですか?」

俺がした、烈火と天命の説明を聞いて佐伯が驚く。

烈火は、銃は躱せ、投げ飛ばされたらひとたまりもない『人間兵器』

天命は、睨んだものを動けなくする『催眠術』の使い手。動けなくなった奴は銃弾を撃ち込まれ死ぬ。


「そんなの、アニメとかドラマの世界の話ですよ。」

ゲームの世界だ。惜しい。


「まぁ、信じれないよなぁ」

佐伯が信じられないのは、当然だ。

逆に、マスターの口から天命と烈火のことが出てきたことが驚きだった。


「それが、本当なら車で逃げられなくないですか?」佐伯が俺にいう。

「どうして?」

「だって、運転手を動けなくしたら事故るか止まるじゃないですか?その車」

「はぁ。なるほど」


その会話を聞いていたマスターが口を挟む。

「ヒントになればいいのですが、、、天命の『催眠』のタネをお教えしましょうか?」

「タネ?」


天命の催眠術のタネなんて、ゲームでも明かされてなかったぞ。

「なんですか?」

「『死』の想起ですよ」

「死の、、想起?」

「そうです。」

「それがどうして?」

「人は、経験していないリスクに対する評価が過大になるものなんです。究極的に体験し得ない未知のものつまり死は、人にとって最大のリスクなんですよ」


「あんまり分かりません」佐伯が釈然としない様子でそう言う。


「そうですねぇ、、たとえばトラウマってあるじゃないですか?」

「はい。」

「あれは、衝撃の大きい思い出を何度も反復することで正確なリスクを測ってよく知っていることに変えるんです。思い出すことは、和らげることなんです」

「思い出すことの出来ない『死』と言う体験は和らげることの出来ない観念?」


しかし、なぜ天命は死を連想させられるんだろう。俺は、転生したから死というものがなんたるかなんとなく思い出せるけど、、、あれ思い出せる


「ええ。死を連想した脳は、逃げ場を見失い、筋肉を硬直させる。パニックの極致ですね」


俺は腕を組みながら聞いていた。確かに理屈は通っている。

俺は思い浮かんだ一つアイデアを尋ねる。


「死を経験している場合は、、どうなりますか?」

「無効化、出来る可能性はありますね。彼の催眠を」

「じゃあ」




唖然とした、天命が一言。

「どうして、、」と言った。


「体質みたいなもんだよ」俺はそう答える。


「まさか、、これも運命ということなんでしょうか」

「運命だかどうだか、知らないが俺は、お前をここで倒す」


天命がいた場合、車で逃げることがほぼ不可能になる。

俺は、ここで天命を仕留める。









◆(???視点)


私は、コツコツと夜の街を歩いていた。

ネオンが怪しく光っている。

所謂、風俗街を歩いている。


別に、利用者としてきた訳ではでない。

人探しでこの街に訪れた。




「あら、何かしら?」

道ゆく女性の一人に話を聞く。


私は、写真を取り出した。

「この人物を知らないかって?知らないねぇ。それにしても、写真の子。あんたの娘かなんかかい?」


違う。

私は、彼女とはそういった関係ではない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る