第21話 キョウガク

私、宮園沙耶は篠宮 蓮の話を聞いて驚愕しました。


「まさか……」


思わず、口に出していました。

私のグループのメンバーが、ストーカー被害に加担しているなんて。


しかし、心当たりは確かにあった。

衣装がなくなったり、

立ち位置が変えられたり──。

けれど、それを現実のものだと認めるのは、怖かった。


「考えすぎですよ……」


私は、篠宮 蓮の言葉を遮った。

その時は、信じたくなかったのです。


その日は結局、二人を帰らせてしまいました。



後日。


仕事終わり、マンションへ帰る途中のこと。

背後から、低い声が響きました。


「……男を呼んでたなぁ」


振り返ると、

あのストーカーの男性が立っていました。

顔は紅潮し、歯を食いしばっている。

「男が、、男がいたのか!」


怒号とともに腕を振り上げられ、私は思わず目をつぶった。


──ドンッ。


衝撃は来なかった。

代わりに、私と男の間に誰かが割り込んでいた。


「やめろ」


篠宮 蓮だった。


男は驚きに目を見開いた。

「な、なんだよお前!……」


蓮は一歩も退かず、まっすぐ男を見据えた。


「お前が宮園にぶつけてるのは怒りじゃない。自分が壊れた痛みだ」

「家族に逃げられて、何もかも失ったのは分かる。けどな、だからって彼女にぶつけたら、本当に帰る場所がなくなるぞ」何のことを言っているのかわからない。


けど、男の肩が震えた。

(動揺してるんだ、、)私はそう感じる


蓮の声は、荒くも優しくもなかった。

ただ、真っ直ぐで揺るぎない。


「お前、家族との縁を本当に復帰できないものにしたいのか?」


男はその場に崩れ落ちた。

「……ワタシは、何をしてたんだ」


私は、息をするのも忘れてその場を見ていた。


──篠宮 蓮が、私を守った。


それだけじゃない。人を説得して、壊れそうなものを繋ぎ止めてくれた。


胸の奥に、じんわりと温かいものが広がる。


「……ありがとう」

気づけば私は、小さな声でそう呟いていた。



篠宮 蓮は振り返り、いつもの少し皮肉げな笑みを浮かべただけだった。




数日後。

篠宮 蓮に呼ばれ、

私は再びカフェ「アンリミテッド」へ

足を運んでいた。


そこには蓮と、あの“ファンの男性”がいた。

彼は俯いたまま、震える声で話し出した。


「……ただ、誰かに従って生きたかった。妻と娘に逃げられたワタシは生きる指針を失っていたんです。でも、彼女の指示は、段々エスカレートして……」


次々と語られる内容に、私は息を飲んだ。

衣装隠し、マイクの音量操作、ポストへの写真。

そして──「襲わせる計画」。


「そんな目で見るな。最初は拒んだんだ!でも、……」

男は机に額を打ちつけ、嗚咽を漏らした。


私は声を失っていた。

同じグループのメンバーが、自分を潰そうとしている。

しかも、それに利用されたファンまで……。


「……まさか、そんな……」


絶句する私の前で、篠宮 蓮は静かに口を開いた。


「だからこそ、逆手に取る。相手の計画を潰すには、まず相手に“成功する”と信じさせなきゃいけない」


「逆手に……?」


蓮は頷いた。

「亜久屋は、ファンを使って君を追い込むつもりだった。なら、そのファンが“協力してるフリをして裏切る”形にすれば、奴は確実に足をすくわれる」


男は涙を拭いながら、小さく頷いた。

「……俺に、できるでしょうか」


「できる。お前がこれ以上、誰かを傷つけたくないならな」

蓮の言葉に、男は力強く首を縦に振った。


私は、胸の奥がざわめいていた。

怖い。

でも、篠宮 蓮の眼差しには迷いがなかった。


「宮園。大丈夫だ。俺がそばにいる。必ず守る」


その言葉に、不思議と心が軽くなった。

あの学生時代、嫌な奴だと思っていた彼が、今は頼れる存在に見える。


私は小さく息を吐き、頷いた。


「……わかりました。お願いします」



こうして計画当日。

一方的に悪い人と決めつけていた蓮くんに

私は都合が良すぎると、自分でもわかっている


けど、


頼ってしまう自分がいた。

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