第21話 キョウガク
私、宮園沙耶は篠宮 蓮の話を聞いて驚愕しました。
「まさか……」
思わず、口に出していました。
私のグループのメンバーが、ストーカー被害に加担しているなんて。
しかし、心当たりは確かにあった。
衣装がなくなったり、
立ち位置が変えられたり──。
けれど、それを現実のものだと認めるのは、怖かった。
「考えすぎですよ……」
私は、篠宮 蓮の言葉を遮った。
その時は、信じたくなかったのです。
その日は結局、二人を帰らせてしまいました。
◇
後日。
仕事終わり、マンションへ帰る途中のこと。
背後から、低い声が響きました。
「……男を呼んでたなぁ」
振り返ると、
あのストーカーの男性が立っていました。
顔は紅潮し、歯を食いしばっている。
「男が、、男がいたのか!」
怒号とともに腕を振り上げられ、私は思わず目をつぶった。
──ドンッ。
衝撃は来なかった。
代わりに、私と男の間に誰かが割り込んでいた。
「やめろ」
篠宮 蓮だった。
男は驚きに目を見開いた。
「な、なんだよお前!……」
蓮は一歩も退かず、まっすぐ男を見据えた。
「お前が宮園にぶつけてるのは怒りじゃない。自分が壊れた痛みだ」
「家族に逃げられて、何もかも失ったのは分かる。けどな、だからって彼女にぶつけたら、本当に帰る場所がなくなるぞ」何のことを言っているのかわからない。
けど、男の肩が震えた。
(動揺してるんだ、、)私はそう感じる
蓮の声は、荒くも優しくもなかった。
ただ、真っ直ぐで揺るぎない。
「お前、家族との縁を本当に復帰できないものにしたいのか?」
男はその場に崩れ落ちた。
「……ワタシは、何をしてたんだ」
私は、息をするのも忘れてその場を見ていた。
──篠宮 蓮が、私を守った。
それだけじゃない。人を説得して、壊れそうなものを繋ぎ止めてくれた。
胸の奥に、じんわりと温かいものが広がる。
「……ありがとう」
気づけば私は、小さな声でそう呟いていた。
篠宮 蓮は振り返り、いつもの少し皮肉げな笑みを浮かべただけだった。
◇
数日後。
篠宮 蓮に呼ばれ、
私は再びカフェ「アンリミテッド」へ
足を運んでいた。
そこには蓮と、あの“ファンの男性”がいた。
彼は俯いたまま、震える声で話し出した。
「……ただ、誰かに従って生きたかった。妻と娘に逃げられたワタシは生きる指針を失っていたんです。でも、彼女の指示は、段々エスカレートして……」
次々と語られる内容に、私は息を飲んだ。
衣装隠し、マイクの音量操作、ポストへの写真。
そして──「襲わせる計画」。
「そんな目で見るな。最初は拒んだんだ!でも、……」
男は机に額を打ちつけ、嗚咽を漏らした。
私は声を失っていた。
同じグループのメンバーが、自分を潰そうとしている。
しかも、それに利用されたファンまで……。
「……まさか、そんな……」
絶句する私の前で、篠宮 蓮は静かに口を開いた。
「だからこそ、逆手に取る。相手の計画を潰すには、まず相手に“成功する”と信じさせなきゃいけない」
「逆手に……?」
蓮は頷いた。
「亜久屋は、ファンを使って君を追い込むつもりだった。なら、そのファンが“協力してるフリをして裏切る”形にすれば、奴は確実に足をすくわれる」
男は涙を拭いながら、小さく頷いた。
「……俺に、できるでしょうか」
「できる。お前がこれ以上、誰かを傷つけたくないならな」
蓮の言葉に、男は力強く首を縦に振った。
私は、胸の奥がざわめいていた。
怖い。
でも、篠宮 蓮の眼差しには迷いがなかった。
「宮園。大丈夫だ。俺がそばにいる。必ず守る」
その言葉に、不思議と心が軽くなった。
あの学生時代、嫌な奴だと思っていた彼が、今は頼れる存在に見える。
私は小さく息を吐き、頷いた。
「……わかりました。お願いします」
◇
こうして計画当日。
一方的に悪い人と決めつけていた蓮くんに
私は都合が良すぎると、自分でもわかっている
けど、
頼ってしまう自分がいた。
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