第13話:創造者の玉座と伏線の清算

魂の深淵の扉をくぐると、圧倒的な威圧感が一行を包んだ。目の前に広がるのは、広大な玉座の間。黒と金の柱がそびえ、床は鏡のように光を反射する。中央に巨大な玉座、そこに浮かぶ最後の鍵――光と闇が混ざった螺旋の鍵。迷宮の最下層――創造者の玉座。空気は重く、心臓を握り潰すような静寂が支配する。

「うわ…これ、ラスボスの部屋じゃん! ゲームなら最終セーブポイント!」カイトがリュックを握りしめ、震え声で叫ぶ。サングラスが汗で滑り、慌てて直す。

「油断するな。創造者がここにいる」リナが剣を構え、玉座を睨む。彼女の目は鋭く、魂の深淵での戦いで強くなった決意が滲む。

セレナはフードを外し、金髪が玉座の光に輝く。「ここは『創造者の裁き』。最後の鍵は玉座の前。でも…創造者と対峙する覚悟が必要。現実の伏線、全部清算するよ」

悠斗はセレナの言葉に胸が締め付けられる。(現実の伏線…佐藤玲奈を無視した後悔、ノートに書いた『日常を壊したい』。それが創造者を生んだ。俺たちの願いが、迷宮そのものだ) ポケットの十一の鍵――金、銀、青、鉄、黒、虹、赤、青白、白、紫、黒――を握る。鍵の映像に映る創造者の顔が、なぜか自分自身に似ている。

「清算って…どういうことだ?」悠斗が尋ねる。声が玉座の間に反響し、妙に大きく響く。

セレナの目が悲しげに揺れる。「創造者は君たちの願いから生まれた。現実で逃げたもの――後悔、繋がり、欲望――が形になった存在。最後の鍵を取るには、創造者と向き合い、伏線を回収するの。失敗したら…現実には戻れない」

カイトが首を振る。「現実か…俺、文化祭でクラスメイトに話しかけられなかった後悔、思い出した。あの時、勇気出してれば…これ、全部伏線だったんだな」

リナが静かに言う。「俺も。暗殺者だった時、仲間を裏切った。ノートに書いた『自由になりたい』…それが創造者の罠。清算するなら、今だ」

悠斗は頷く。(佐藤玲奈の笑顔、無視したあの瞬間。『日常を壊したい』って書いたノート。あれが迷宮の鍵だった。現実に戻るには、全部向き合わないと) 記憶が鮮明になる。放課後の教室、玲奈の声。「天海、悩みあるなら話してよ」 無視した自分。その直後の光が、迷宮への入り口だった。

「行くぞ。創造者を倒して、現実に戻る」悠斗が声を張る。一行は玉座へ進み始めた。


創造者の玉座:最終試練

玉座の間は静かだが、時折、空間が歪み、闇の魔物――シャドウガーディアン――が現れる。影のような姿で、剣や魔法を吸収する。リナの剣が一閃で切り裂くが、魔物はすぐに再生する。

「こいつら、倒しても復活する! どうすんだ!?」リナが叫ぶ。

「カイト、道具だ!」悠斗が叫ぶ。

カイトがリュックを漁り、LEDランタンを取り出す。「これ、魂の深淵で効いたやつ! 闇をぶっ飛ばす!」光を放つと、ガーディアンが悲鳴を上げて溶ける。

「ナイス、カイト!」悠斗が笑う。絆が試練を切り開く。

玉座に近づくと、空間が揺れ、巨大な影が現れる。創造者だ。顔はぼんやりとしか見えず、悠斗、リナ、カイト、セレナの顔が混ざったような姿。

「お前たちが私の駒だ。願いは私の力。鍵を渡せ」創造者の声が心に響く。

その瞬間、幻影が現れる。

悠斗の幻影は、佐藤玲奈。「天海、なぜ無視した? 現実を捨てたお前は、私の一部だ」と囁く。

リナの幻影は、暗殺仲間。「お前が裏切った。私を殺した。お前は私の影だ」と非難。

カイトの幻影は、文化祭のクラスメイト。「佐伯、なぜ逃げた? 孤独なお前は、私の駒だ」と嘲笑。

セレナの幻影は、創造者の玉座。「お前は私の道具。転移者を裏切れ。お前は私だ」と命令。

「創造者が…俺たちそのもの!?」悠斗が頭を押さえる。幻影の言葉が心を抉る。現実の後悔――玲奈を無視したこと、ノートに書いた願い――が、創造者を生んだ。

セレナが手を上げ、聖なる光を放つ。「これは最後の試練! 創造者は君たちの闇! 伏線を清算し、倒せ!」

だが、創造者の影が光を吸収。「お前たちの願いが私だ。現実を捨てた罪、逃れられない」

リナが剣を振り、幻影を切り裂く。「罪は認める! でも、俺は今、仲間と生きる!」

カイトがランタンを振り、光で幻影を押し返す。「俺も! 孤独だったけど、みんながいる!」

悠斗は歯を食いしばる。(玲奈を無視した。日常を壊したいと願った。でも、今は違う。彼女に謝って、現実を取り戻す!)

「行くぞ! 鍵を取る!」悠斗が叫び、玉座へ突進。

だが、創造者が手を振ると、シャドウドラゴンが現れる。闇と光の鱗、口から魂を吸う波動を吐く。咆哮が玉座を震わせる。

「ラスボスだ!」カイトが後ずさる。

リナが剣を構える。「私が引きつける! 鍵を取れ!」

ドラゴンが波動を吐き、リナが避ける。セレナが加護を放ち、波動を弱らせる。カイトがランタンでドラゴンの目を眩ませ、隙を作る。

「悠斗、今!」リナが叫ぶ。

悠斗は玉座に飛びつき、螺旋の鍵を掴む。触れた瞬間、映像が流れ込む。

――創造者の真相。迷宮は転移者の願いを吸収し、永遠に閉じ込める。「お前たちの伏線――後悔、欲望――が私を生んだ。鍵を全て集めた時、現実に戻るか、永遠に私の駒になるか」

悠斗はハッと我に返る。「創造者は…俺たちの心の闇! 現実に戻るには、願いを清算するしかない!」

その時、玉座の奥から気配。敵グループだ! リーダー男が現れ、鍵を八つ持つ。

「お前ら、よくここまで来た。だが、鍵は俺たちが頂く!」


玉座の決戦:敵との清算

敵は15人。魔法使いが闇の矢を放ち、剣士が突進。リナが剣で受け止め、カイトがランタンで牽制。セレナの加護が敵を弱らせる。

「悠斗、鍵を守れ!」リナが叫ぶ。

だが、創造者が笑う。「敵も私の駒。願いのぶつかり合いが、私を強くする」

悠斗は気づく。敵グループも、現実の伏線に縛られている。リーダー男の目には、悠斗と同じ後悔の影。「俺も…現実を壊したかった」と呟く。

「同じだ! お前も現実の後悔に縛られてる!」悠斗が叫ぶ。「一緒に創造者を倒そう!」

リーダー男が一瞬揺らぐ。「…ふざけるな! 鍵は俺の願いだ!」

戦いが激化。リナが剣士を抑え、カイトがロープで魔法使いを絡めとる。セレナが加護を全力で放ち、敵を弱らせる。

悠斗は創造者に突進。「お前のゲーム、終わらせる!」

創造者が手を振ると、ドラゴンが波動を吐く。悠斗は鍵を握り、螺旋の鍵から光が放たれる。十一の鍵が共鳴し、創造者の影が揺らぐ。

「今だ! みんな、力を合わせて!」悠斗が叫ぶ。

リナがドラゴンの鱗を斬り、カイトが火薬で爆破。セレナの光が創造者を弱らせる。敵グループも混乱し、リーダー男が叫ぶ。「くそっ…俺の願いは…!」

創造者が笑う。「願いは私の力。全てを喰らう!」

だが、悠斗は鍵を掲げる。「俺たちの伏線、清算する! 現実に戻る!」

鍵が輝き、創造者の影が砕け始める。ドラゴンが倒れ、敵グループが膝をつく。玉座が崩れ、空間が光に包まれる。


休息の間:現実への一歩

戦いが終わり、一行は崩れる玉座の間で休息。光が薄れ、静かな空間が広がる。カイトが缶詰を分け、みんなで水を飲む。

「はぁ…創造者、マジで強かった…」カイトが息を吐く。「でも、俺たちの心の闇って…キツいな」

リナが剣を磨きながら言う。「俺の後悔、裏切った仲間。あの伏線、清算できたかな。現実に戻ったら…自由に生きる」

悠斗は頷く。「俺も。佐藤玲奈に謝りたい。『日常を壊したい』って書いたノート、あれが創造者を生んだ。現実に戻って、彼女と話す」

セレナが微笑む。「私の願いも、創造者から解放されること。君たちのおかげで、近づいてるよ」

敵グループのリーダー男が立ち上がる。「…俺も、現実で逃げた。鍵を奪おうとしたのは、過去を消したかったからだ」

悠斗が手を差し出す。「一緒に現実に戻ろう。伏線を清算して」

リーダー男が一瞬躊躇し、握り返す。「…わかった」

セレナが最後の扉を指す。「次は本当の最下層。創造者の心臓。全ての伏線が回収されるよ」

悠斗は螺旋の鍵を握る。「現実に戻る。みんなで、創造者を倒して、伏線を終わらせる」

扉が開き、光と闇の渦が広がった。物語は最終局面へ。

(続く)

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