第3話 俺氏、思い出してから、初めての戦闘
<軽いあらすじ>
辿り着いた村で、女の子が行方不明となったのを聞いた俺。
今、絶賛その娘さんが居なくなった森で、戦闘中なり。
以上。
シカモ、キイテナイ。
『キシャあああ!』
奴の両手から、鞭で打つみたいに、蔓で連続攻撃をしてくる。
奴の攻撃は、途絶える事なく、攻撃してくる。
「さすがにこう連続で来ると、面倒だな!」
一旦、距離を取る為、木の影に隠れる。
そして、そこから身を潜ませて、様子を伺う。
どうやら基本的には、蔓で捕らえて、それで食すようだ。
植物系の魔物には、基本は火の魔法を使う。
だがここは森の中なので、火事になる可能性を考えると使えない。
氷系の魔法でなんとかするしかない。
「アイス・バレット!」
木の後ろから、奴に向かって、氷魔法で作った氷塊をぶつける。
『キシャあああ!!』
弱めで打った為、案の定、蔓で弾かれ、地面に打ち付けられる。
それでも続けて、今度は魔力を込め、数を増やし、氷塊を放つ。
「喰らえ!」
放った氷塊は、奴の蔓を撃ち抜いたが、奴はなんとも無いかのように攻撃して来る。
しかも蔓の数を増やしてきた。
『キシィイィ!!』
「...あんま意味ないか。じゃあラマ・ディ・ベント(風の刃)!」
今度は風魔法を使って見るが、こちらも奴の体と蔓を切り裂いたものの、
ほとんどダメージが無い。それどこかまた蔓が増えた。
しかも今度は先端に、口が開いている触手まで出てきた。
奴は手立てが増えたのをいい事に、蔓で攻撃して来る。
「はあ。めんどいなあ。」
とっさに風魔法を連発し、切り裂きながら、奴を倒す手立てを考える。
記憶を思い出す前は、どうやって倒したっけな?
確か昔は、炎魔法で倒していたが、それも森じゃなかったからできた事。
さっきの風魔法でもダメージは与えていたが、
ギリシャ神話のヒュドラの首みたいに、
蔓や触手が増えた事から、剣、斧等で斬るのも意味がない様だ。
本体に攻撃すればいいだろうが、奴の多くの蔓が襲ってきて近づけない。
もっと強い氷魔法や風魔法を使ってもいいが、使えない。
それは、俺の後ろにある結界だ。
魔法で作られた障壁の一種みたいで、
どうやら外界に解らなくさせる隠密の作用もあるみたいだ。
先ほどの目に魔力を込めないと分からなかった程、高度な結界。
だがこういうのは、実はどれか一つの効果に特化している事が多い。
その理由としては、
この世界の住民が基本的に扱えるのが、一つの魔法のみが多いから。
つまり火の魔法だけだったら、それしか使えない。それのみ、適性がある。
結界も、結界魔法しか使えないものが多い。
それに加えて結界魔法の場合、
隠密の効果、あるいは防壁の役割とか、どれか一つの効果にしか使えない事が多い。
つまりこの結界を生み出した人物が、隠密の効果のみにしか振れないなら、
防壁としての強度が、緩い可能性がある。
まあ攻撃されたら、一溜まりもないという事。
取り敢えず俺がこの結界の中に入っていいのか分からないし、
崩されてしまっては元も子もない。
「しかも俺、こいつをどうやら連れてきてしまったみたいだからな。ミスったなあ。
娘さん探すのに気を取られすぎたな。」
こういう植物系モンスターは、森となってくると同化しやすいからか、
どこからか襲ってくるのか分からず、
たまに、索敵の魔法にも引っかからない奴もいる。
今回はその索敵の魔法に掛からない奴だった上に、
俺が行方不明者を探すのに集中しすぎたのもある。
そして気配を感じたのが、結界に近づいたときだった事から、
攻撃をこっちに向けているものの、狙いは結界の中だろう。
なぜ結界の先に行こうとしているのか分からんが、ここで止める必要がありそうだ。
「先には行かせないぞ! ラマ・ディ・ギアッチョ(氷の刃)!ティフォーネ(台風)!」
先ほどより、強い氷魔法と風魔法で攻撃する。
けれども、どんどんと奴が近づいてくる。
「むむ。」
まずいなと思って居た矢先、奴が急に立ち止まり、口を閉じた。
そして体を後ろに傾けさせ、何かを溜めている様子を見せる。
「...ん?...はっ!やべ!」
俺は咄嗟に手拭いを出し、顔半分をそれで隠し、木の影に隠れる。
そして次の瞬間、奴は口を開き、息を吐き出した。
そしたらなんと俺がさっきいた地面が溶け、周りの植物は爛れていた。
「おいおい。香りで催眠状態とか麻痺状態にするんじゃなく、
粘液で溶かすのかよ...。こんな奴がいるって聞いたことないぞ...。」
どうやら匂いとかで操ったり、動けなくするのではなく、
何でも胃液で溶かしたり、食べたりする特性であるようだ。
こういう奴は見境無く、自分の欲望に忠実だ。
...余計に達が悪い。
しかも奴の口の中をよく見て見ると、
犬らしき動物の骨が落ちてきたり、犬の尻尾らしきものが舌にこびり付いていた。
「なるほどな。最初は狼達を獲物として食べ、食い終わったら次は俺という事か。」
どうやらこいつが村の人を襲った狼を追いかけ回した上で食い殺し、
獲物がいなくなったら、俺がたまたま迷い込んできたのか。
「はあ、やれやれ。自分の食欲に忠実だこと。」
まるで、某有名ゲーム会社のピンクの悪魔かよ。
しかも結界の事を考えると、出来るだけ早く倒さなければいけない。
どうやら奴の息は結界を溶かすらしく、結界の一部が溶けていた。
再生はされていたものの、このまま奴のブレスを受け続けたら、全て溶けるだろう。
「やっぱり強度はなかったか...。まずいな。どうするか...。」
どうやって近づき、攻撃するか考えていると、
ふとある事を思いついた。
「...あれ使えるな。記憶を思い出した今ならやれるか...。よし!」
俺はその作戦を思いつくと、咄嗟に奴に向かって、走り出した。
まず走りながら、剣を取り出した俺は、その剣に魔法を込めた。
すると剣は光を帯び、黄色く光り始めた。
その状態で、俺は奴に斬りかかる。
当然奴は鞭のごとく、蔓と触手を使って、俺に向かって伸ばしてきた。
俺はそのままさっきの剣で、斬る。
そしたら切った先が焦げ、先端が元の通りに復活しなくなった。
『キシャあああああ!?』
どうやら奴は元に復活しないのに驚いているようだ。
「異世界モノではよくあるものだけどな。この世界にはその概念がないからな。」
そう。俺が施したのは付与魔術だ。
この世界では、実際に特性を持った素材で、武器を作り上げ、効果をもたらすようにする。
まあ簡単に言い換えると、
炎の剣にしたければ、炎の魔石といった、
元から燃えている素材を使用しないと、錬成できないという事。
なぜかこの世界では、その認識が強く、
付与魔術自体、そもそも見たことがない。
今回俺が施したのは、「再生不可」の状態異常にさせる効果。
その剣で触手を切り裂いた事により、復活させなくさせたのだ。
「まだまだやらせてもらうぜ!」
そのまま引き続き、剣で奴の蔓や触手を切りまくった。
想定どおり、奴の手は復活しないまま、次々と切り落とされる。
『キシャあああああ!?』
「これでトドメだぜ。」
そういった俺は、剣に魔力を込め、剣をそのまま空中に投げた。
「3...2...1...。」
カウントダウンしながら、マンイーターを見るとビビって逃げようとしていた。
「もう遅いぜ。
剣はそのまま魔力が込まれ、最大限に溜まったと同時に、奴の体に刺さった。
そして発動する。
「0。
ドゴーン!!!!
『キシャあああああ!!!!!!!!』
その瞬間、雷がマンイーターに向かって直撃し、
まるで地震が起きたかのように、鳴り響いた。
投げる瞬間に、付与魔法で「魔力増加」の効果をつけておいて正解だったな。
直撃されたマンイーターは体が燃え広がり、何も言えぬまま、倒れた。
こうして、俺の前世を思い出して、最初の戦いが終わった。
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