第5話
無事にワープゲートが完成して既に無人艦の往来が始まり、近いうちにワープゲートと前線基地建設ために派遣した艦隊と交代する前線基地要員や防衛のための艦隊が派遣される。
俺はもうすぐ18歳の誕生日を迎えるが、帝国では18歳で成人と認められ、成人したら父の持つ伯爵位を受け継ぐことになる。
代々、シュヴェート公爵位を継ぐ予定の成人した嫡子に与えられているそうで、父から受け継いだ爵位を皇帝陛下に承認いただくことで、俺は晴れてシルト伯爵アルス・フォルフットと名乗ることが許される。
爵位を認められたら続けて地球文明圏の高等弁務官として任命される。その時に俺が地球からの転生者であることと、地球に遠征軍を派遣することも発表して、出征式典をして…と、予定が詰まっている。
本来ならばもう少し余裕を持たせたスケジュールだったが、地球の情報が集まるにつれて急がねばならないことになった。
地球では既に世界大戦前夜とも言える状態が続いていて、いつ全面核戦争になってもおかしくないという。
前世の記憶では、相互確証破壊という概念が核保有国の中で共有されていたはずだが、帝国からすれば惑星ひとつ統一されていないような文明の人間がそこまで自制できるとは考えていないらしい。
別に地球が核に汚染されても調整すれば済む話ではあるが、せっかく調整しなくても良い環境が整っているのに、核汚染されるのはもったいない。という考えから少し早めに地球へと向かうことになった。
そして俺は今、第3皇女殿下に呼び出しを受けて帝城の離宮へと足を運んでる。
離宮は皇族の方々が住まわれている場所で、通常は部外者の立ち入りが許可されることはない。
だが今回は、俺が皇族の血を継ぐ公爵家の嫡子であることと、第3皇女殿下が未成年であるために離宮から出ることが出来ないことを考慮されて特別に許可が出た。
離宮の入口で入念に身体検査を受けて侍女の案内で離宮へと足を踏み入れる。
会談場所は離宮の裏手にある庭園のようで、離宮の内部はお目にかかれないようだ。
「あちらで第3皇女殿下がお待ちでございます。我らはお許しをいただいておりませんので、ここからはおひとりでお向かい下さいませ」
そうこうしているうちに庭園に着いたようだ。
侍女に示された場所へ目を向ければ、俺よりも透き通った白銀の髪を持つ少女がガゼボの下にいるのが見えた。
人払いがされていても、護衛や侍女から視界が通るようにはなっているらしい。
それでも隠れた護衛はいくらでもいるだろうが...。
「わかった。ありがとう」
「では、失礼いたします」
侍女と別れて庭園を進む。
「お初にお目にかかります、第3皇女殿下。シュベート公爵セトスが嫡男、アルス・フォルフットでございます。ご用命に応じ参上いたしました」
俺の口上に皇女殿下がこちらへと振り向く。
初めてお目にかかったが、あまりにも美しい少女だ。歳は俺の2つ下だと聞いたが、妖精や天使と例えても良いほどに綺麗な方だ。
「...初めまして、シルト伯。...ユリアリアです」
「お言葉ですが殿下、私は未だ成人しておりませんので、父の爵位も継承しておりません」
「...そうですか。...そちらに」
爵位についての俺の訂正にはあまり興味がなさそうに、自分の反対側に座るように促される。
「失礼いたします。...殿下、本日はどのようなご要件でしょうか」
「...あなたは転生者でしたね。...帝国に産まれた転生者は久しぶりだと聞きました。...あなたが出征する前にお話を聞きたいと思いまして」
なんというか、殿下はかなり落ち着いたお方だと感じる。
話し方も、容姿から受ける印象も、儚いという言葉を当てはめるのは失礼だろうか。
「どのようなお話をご所望でしょうか」
「...あなたは帝国が好きですか?」
...驚いた。俺の話を聞きたいと言うから、前世の、地球の話のことだと思い込んでいた。
だが帝国は好きか、か。これは諮問されていると解釈すべきだろうか。
公爵家の生まれといえど転生者。以前俺が陛下の御前で伝えたように、殿下は俺の忠誠を試しておられる...のか?
「お答えいたします。私は転生者ですが、この国に産まれこの国で育ちました。私は帝国こそが、私の帰属する国家であると認識しております」
「...そうではありません。...まぁ良いです。...また機会があればお話しましょう。...あ、それは食べてしまって良いですよ」
そう言って殿下は立ち上がり、行ってしまわれた。
後に残されたのは俺と、テーブルの上に残されたお茶と茶菓子のみ。殿下は食べてしまって良いと仰せになったが、ひとりでこれを食べて帰る気にはなれない。
というか、なぜ俺は呼ばれたのだろうか?
なんにせよ、すぐに侍女が迎えに来たために茶菓子を食べる時間などはなかったが...。
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