9.じわじわ来るイケメン

 「7.イケメン認識力を目覚めさせた男」の冒頭小話で、仕事のストレスをかわすために、中国ショートドラマあるあるな「身分を偽っていた令嬢」ごっこの妄想をしている話を書いています。当時はまだ小出し状態でしたが、少し前にとうとう「実はわたしは令嬢だったんだ。あんたたちなんかもうこっちから願い下げだ!」と、元の家族や婚約者(もしくは夫)に三下り半をたたきつけました!


 やっちゃった。


 しかし、わたしは普通のしがない社畜のおばさんですから、切り札を切った時にドラマなら「俺が彼女の新たな後ろ盾」だと宣言して登場してくれる「イケメンの新彼ぴ」は、いないわけですよ。

 なので、ドラマのように後ろから守ってくれるイケメン王子さまさえも、自分でどうにかしなければいけません。調達してくるか、自分自身がイケメン王子様になり切るか。せちがらー。って当たり前ですね。


 というわけで、一瞬はざまぁできましたが、事態の収集も自分でつけていくという間抜けな状態に陥っております。


 ですがですが。


 人って、そういう場面になったら、本当にオーソドックスなパターンなセリフを吐くのね!


 あくまでも仕事の話なので、台詞まんまではありませんが。

 たとえば、ドラマでクズ元カレが叫びがちな、あるあるな以下の台詞。


「その新彼ぴが本当にお前なんかを大切にすると思っているのか」


「何を脅しているんだ。所詮は金か」(といって、新彼ぴからみたらはした金をたたきつけてくる)


「何が不満なんだ。〇〇か?それなら俺だって満足させられるじゃないか」


 きれーに全部言ってくれました!何回も言いますが、これが恋愛系だったら、このセリフに翻訳できるぞ、っていう言葉では言われてますよ。


 もう、だんだん聞いていて笑えちゃって笑えちゃって。

 まさかまさか、あそこまで虐げておいて、いまさら「いなくならないでくれ」とかよく言えたな!何の冗談なのさ。そんなにいてくれなきゃ困るんだったら、よくもまぁ、何かのトラブルを全部こっちのせいにしてくれたな。


 テンプレートとかあるあるな話の取り回しとかあんまり好きじゃなくて、そうじゃない表現を狙いたいという天邪鬼というか中二病的なところがあるのです。ですが、いや、テンプレートとかあるあるって、自然の反応だから使われ続けるんだ!と心から納得させられました。


「離婚したいって言うから、離婚してあげるっていって書類まで持ってきたんじゃない!早く署名してよ!あんなにつらく当たってきたんだから、署名できてうれしいでしょ?なんで署名してくれないの!」


 という、女主1のあるある台詞を吐く日があろうとは!!!


 わたしは我慢を知らないわがままな女なので、実際の恋愛でこのセリフを言うことは絶対ない(我慢する前にとっとと別れるタイプ)のですが、いやぁまさかまさかの仕事で言わせてもらえるとは!!


 ちなみに、仕事のキャラはとっても我慢強い菩薩キャラです。家族からは詐欺だといわれるぐらい別人のキャラで仕事してます。その菩薩キャラで怒らせるんだから、相当ひどいんだ、と思います。同僚からは、しょっちゅう「よく我慢できますね」って言われるので、菩薩キャラは本人の思い込みではないと思います。


 それにしても、世の中どんなことでも学びになるのだなと、痛感しています。


 ただね。

 経験はしたくないよなー。横で聞いてるぐらいがちょうどよいです。しょうがないけど。

 

 さてさて。

 フラフラの週末でしたが、だからこそ、夕方帰宅してからは絶対ショートドラマ全部見倒してやるっ!!!と決意し、全てを放り出して(執筆はもちろん家事まで)、地道にロックを解除しておいたドラマを見てました。


 それが『真夏のベンデラ』(DramaBox)。

 これがね!よかったのよ想像以上に。ロックは解除済みだったので、心おきなく最後まで見ました。というか、引き込まれちゃって止まれなくなりました。

※ショートドラマと言いつつ、一話が2分とか短いだけの話で、通しで見ると1時間半~2時間という映画並み長さになります。


 なんだろ、話の筋がもうそもそも中国ショートドラマあるあるではないです。派手な事件とかはなくて、二人の恋愛模様がどう移ろっていくかを丁寧に積み重ねていってる。まぁ、愛人の子の方が実の子よりかわいがられているっていうあるある設定はありましたが、それが前面に押し出されずにいい感じです。

 カメラワークも、通常の横型ドラマって言うか何なら映画を意識したかな?っていうぐらいきれいだったんですけど。

 あえて一個難点を言うと、中盤の動画編集担当者が素人でしたかね。せっかくのきれいなカメラワークが、雑!ワンシーンを、いろんな角度でとって、その素材を編集でつなぎ合わせていくのが今のドラマの撮り方だと思いますが、そのアングル違いの映像をつなげていくときに、前のとかがちょっとちらっと残るの。気になる……。

 あれがなかったら満点だったなー。


 で。そんな素敵な映像でしたが、なにより主演のお二人の演技が、抑制的で目の演技が素晴らしく、それがなかったらこんなに素晴らしいドラマにならなかったかもしれません。


 女主さんは郭宇欣 。男主さんが刘萧旭。


 今回はこの男主さんの刘萧旭についてです。郭宇欣も素敵ですが、今は我慢しておく……。


 わたしが刘萧旭を初めて見たのは、『逃げる花嫁と運命の新郎』(DramaBox)。

 うん、イケメンなんだ。なんだが……なんというか、あんま華があるタイプではない。そのうえ、どうも落ち着いているせいか実際の年よりも上に見えるのね。そのせいか、「小おじさん」という愛称がついているらしいのですが(愛称?)、このドラマでも、「年いっているせいで夜の仲良しができないんじゃないかって疑われるおじさん」扱いされておりましてね。なんか不憫なんです。


 でもなんか、最後まで行くと、女主さんに対する純愛をまっすぐ貫くし、落ち着きの中にもにじみ出る誠実感と安心感でなんか惚れてしまうといいますか。


 きゃーかっこいい!!!


 って騒がれる感じじゃないんですが、彼の作品を見ているとじわじわとイケメンぶりがしみ込んでくる、そんな味わいのある素敵なイケメンさんです。


 『真夏のベンデラ』も、自分の立場をよく理解したおちついた「おじさん」で登場しています。なんでそんな立ち位置ばっかり。


 でも、物語が進むにつれて、だんだん愛が深まっていく様子を表情や目の動かし方、体の動かし方でとても繊細に表現されていて、いいもの見れました!!!


 これ、再生回数が恐ろしいほど伸びたみたいで(中国のショートドラマ制作会社のFacebookアカウントで1億回って見た記憶ありますが、わたしの記憶が違うかもです。すみません)、特別にファンミが開催されたようです。


 でもそれも納得の出来。


 でね。このドラマ実は、スピンオフだったみたいなんです。

 そういえば、宣伝のところとかでちょくちょく、「何健麒、王格格」という出演クレジットが追加書いてあることがあって、ん?主演級のお二人がなんで?とわけわからなかったのですが、(中国語わかんないからな)確かに最後、お二人が出てくる。だがしかし、このお二人が出てこないといけないほど、ここのシーンって重要だったか??はてなんで?ん??とすごく不思議だったんです。


 が、見終わったあとに、たまたまどこかのまとめサイトで『「何健麒、王格格」が主演の別ドラマのスピンオフです』って書いてあるのを見て、納得!


 そしてそのドラマ、わたし前に見ていたんでした。『私の復讐妻』(DramaWave)。


 こちらもまぁ幼馴染だけど政略結婚ですれ違って、新カノの嫉妬による妨害とかのあるあるもあったりはするけど、まぁ割と中国ドラマあるあるっちゃぁそう。みたいな感じです。そういえば、派手なビンタシーンとかはなく、静かに淡々撮っているのは『真夏のベンデラ』と同じだったので、スピンオフも納得。

 っていうか、刘萧旭出てたっけ??みたいな感じで、思わず見返したのですが……出てる!すっごくでてる!!


 たぶん、『私の復讐妻』を見たときは、わたしがまだ刘萧旭を認識できていないときだったので、記憶できていなかっただけなのだとは思います。知ってたら、あれ、この脇役レベルで刘萧旭??って思えていたはず。


 ただ、かりに刘萧旭と認識できたとしても、あの演技のすごみは、『真夏のベンデラ』を見てからじゃないとわからなかったな……


 スピンオフで、刘萧旭が主役のドラマをもう一本作る、というのは当時からは織り込み済みだったとは思います。だからわかってて演じていたでしょうが、裏で進行しているドラマでの感情の盛り上がりとか、そういうのをちゃんと演技上経験していないときなのに、なんとまぁ、『真夏のベンデラ』を見てから戻ってみても、「あ、いまはあの頃のことだ!」っていうのがわかる演技をされているんですよ、刘萧旭は。


 『私の復讐妻』では、完全に脇役に徹しているのに、そういうのがわかるってすごいことだと思うんですよ!ただものじゃないぞ、このイケメン。


 もともと、才能があると認めてから好きになる傾向があったので、この『真夏のベンデラ』→『私の復讐妻』と見た後の刘萧旭の評価は、わたしの中で赤丸急上昇中です。


 ぱっと見は目立たないんですが、じわじわとそのイケメンぶりが効いてくる刘萧旭。すごいですよ。彼の抖音のフォロワー数が、この半年で爆増したという話もXかどこかで見かけましたが、たぶん、この「じわじわ効いてくる」のが如実に表れたんだと思います。


 しかしね……本当に年上に見える……

 刘萧旭、兄役をやっていますが、実は弟役の何健麒よりも、実年齢3歳も若い!なのに兄役やってて何の違和感もない!何健麒が若く見えることもあると思いますが、いや、お二人違和感なかったんだろうか??


 ちなみに、YouTubeでは『夫にしたい中国俳優ドラマ』というまとめの中に刘萧旭入っていました。うん、わかる。

 なんというか、何健麒、爆イケメンだから仮に結婚しちゃったら(そんなの起こりえないけど)、浮気が心配っていうか、なんでこんな美しい人がわたしなんかを愛してくれるわけ?なにかおかしいんじゃ?って疑心暗鬼になると思うのですが、刘萧旭だったらうん、美しいけど安心できるって言うか、そこまで気後れしないって言うか。そういう安心感のあるイケメンって、じつは結構貴重だと思うので、アイドル的イケメン苦手なのよね、という人がいらっしゃいましたら激しくお勧めしたいイケメンさんです。


 すっごく文字数使って書いてますが、まぁそれだけ素晴らしいっていうのはありながらも、多分、わかりやすいイケメンじゃないからだとは思います。刘兰博とかのAIかな?というイケメンぶりとはまた違いますから。


 それでも推したい、じわじわくるイケメン刘萧旭のお話でした。


---------

プチあとがき

 途中で「主演級の二人」と書いていますが、こういうのがわかる程度にはとうとうドラマを見倒したんだ!とちょっと自分に感慨を持っています。

最近、俳優さんたちの中国読み(ピンイン)がわかるようになってきているしねぇ。何事も続けるってすごい。

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