第17話 防衛都市の家 6日目

AM 9:00

[カザキリサイド]

 1丁目の住居とした家でここまで判明したルールを改めて紙に書いていた。

 滞在も6日目、折り返しである。

 それにしても本当に私は仲間に恵まれた。私1人であればせいぜい2日目の防衛あたりで退去してしまっていたと思う。危ない局面が何度かあったが、みんなの力があったからこそ乗り越えられたのだ。

 結局私は対レベル1でしか役に立っていない。指揮だけではなく私も頑張らなければならないと改めて思った。


PM 1:00

[ケンタサイド]

 カザキリに呼び出されて3丁目の学校に僕達は集合していた。

 「まずは今日こそルールを改めて確認するわね。今朝私がまとめておいたから改めて目を通しておきなさい」

 そう言って配られた紙を見ると次のように書かれていた。


防衛都市ルール

基本ルール

 ①滞在には任意の空き家を使うことができる。

 ②必要な物資はショップで入手可能。

 ③東西南北は北から東南西と順に1丁目2丁目3丁目4丁目の名称が付いている。

 ④民家にはシールドが存在し、性能はそれぞれ異なる。

 ⑤都市そのものの機構を変える装置が5つ存在している

 ⑥19時~23時の間ヒューマロイドによる進行が行われる

 ⑦ヒューマロイドは強さによってレベルがある

 ⑧都市中央の時計台が防衛対象で倒壊すると全員即退去となる

 ⑨10日上記時計台を守り抜くと転居可能となる


質問によって判明したルール

 ①時計台は移動可能

 ②襲撃が行われるWAVEは経過日数に応じて回数と頻度が異なる

 ③損傷したシールドは防衛都市変換装置(防衛都市の治癒)でのみ回復可能

 ④『防衛都市の治癒』で回復できる『装備』は防衛都市で設置してある武器、

   および他防衛都市変換装置で出現したもの。

   回復の間10分間は敵が一時的に消滅する。

 ⑤街中にヒューマロイドは隠れていない。襲撃時のみ出現。

  防衛都市変換装置の防衛システムとして致死性のトラップは存在しない。


「ある程度把握はしていると思うけれど。都度確認すること。いいわね?」

 カザキリは全員を見渡すと言った。

「さて、今回はこの学校の謎解きに挑戦しましょう。学校の謎解きと言えば…

 そう、学校の7不思議ね。まずは校長室に移動しましょう」

 カザキリに促され、全員で校長室に移動した。

「おお、すげえ」

 校長室には『学校の七不思議を解き宝玉を収めよ』と書かれた看板があり、7つのくぼみがあった。

「これは、探索しているときに見つけたものよ。さて7不思議を見つけるわよ。私一人の独壇場にしてもよいのだけれど、折角これだけ人数がいるのだから手分けして見つけましょう。まず、

グループ1新井健、私と来なさい。

あとはグループ2として薄井健太と佐藤智樹、

最後にグループ3戸田唯と無情彩香よ」

 カザキリは勝手に決めると去って行った。

 

[カザキリサイド]

「定番なのは13階段かしらね」

 学校の東側の階段に来ていた。

 学校にはいくつか階段があるのだけれどここだけ木造の階段で如何にも怪しかった。

 ギシッ

 ギイィ

 踏む箇所によって階段の軋む音が異なる。

 なるほど、階段の横幅のうち、ギイィとなる面積の方が少ないわね。

 12段ある階段をすべてギイィと鳴らすと、13段目が現れていた。

「うぉお13段目がある」

「木造だから段の音が違う方を踏むと段の高さが下がるのでしょう。そしてそれが12段分集まって13段目が現れるという仕組みね。あとは」

 バキッ

 13段目を踏むと脆くも壊れた。中から球のようなものが覗いていた。

「これを踏むと宝玉が出てくるという仕組みというわけね」


[ケンタサイド]

「音楽室に来たけどよ」

 学校の7不思議の1つと言えば音楽室で鳴るピアノ。それからベートーベンの目が光る。

 僕たちは一挙両得で音楽室に来たのだった。

「まずは『ベートーベンの目が光る』だね。でもこれは楽勝だね」

 そう言うと僕はベートーベンの肖像画をはがした。すると宝玉がそこにはあった。 

「なるほどまんまだな。あとはピアノの方だけど」

 僕たちはそう言うとピアノの方に歩み寄る

「これもこういうことかな」

 ピアノの屋根を開くとシーソーのような装置とその上に宝玉があった。

「なるほどな、この球が転がって音が鳴るという仕組みか、なんにせよこれで2つゲットだな!」


[トダユイサイド]

 あーしたちは学校3階の女子トイレに来ていた。

「こ、これってトイレの花子さん探しですよね……私幽霊は非常に苦手なのですが」

「はー…ムジョウちんはホントにサイカちゃんとは真逆すね」

 一番奥のトイレの個室に入ってみる。

「あーしの予想すけど宝玉はトイレのタンクの中っすね」

 そういってトイレのタンクを開くと案の定、球が入っていた。

 球の横にスピーカーのようなものが繋がっている。

 なるほど、返事とかはこのスピーカーでやってる感じなのか。

「はー…よかったです。早くここから出ましょう」

「わぁっ!」

「ひいぃぃぃ」

「はは、ホント、ムジョウちんはビビりすねー」


[カザキリサイド]

「音楽室に薄井健太達がいたわね。私たちは模型系を攻略しましょう」

「模型系ってなんだよ?」

 新井健が腑抜けた顔で問いかけてくる。

「『二宮金次郎の像が動く』と『人体模型が動く』でしょう。まずは人体模型の方ね」

 そう言って理科室の扉を開いた。

 人体模型の像が入り口付近に置かれている。

「なぜ動くのか考えれば明白ね。ほらここ…隠されているけれど心臓のパーツをずらすと…ほらあったわよ」

 そこにはモーターと宝玉が収まっていた。

「モーターで動く仕組みってことか」

「そういうことねおそらくカメラで見張って人が来たら動かすのでしょう、さて次は二宮金次郎よ」

 そういうと学校の玄関に向かう。

 二宮金次郎の石像があった

「これも心臓か?」

「いえ、これはおそらく後ろに背負った薪の方ね」

 そう言って二宮金次郎像の薪を調べると中央から2つに割れ、中に宝玉が入っていた

「驚いたわ、これ、中に人が入れるようね」

「うげ!、てことは動かしていたのは人だったってことかよ」

「そのようね」

 これには私も予想外だった。


[トダユイサイド]

「学校の七不思議と言えば、階段の踊り場の鏡も有名ですね見るとあの世に連れていかれる…とか」

 ムジョウちんがビビりながらも説明してくる。

「ここっすね」

 唯一鏡のある階段の2階の踊り場に立つ

「鏡を割ったらでてきそうなんすけどねー…そだ!」

 思い立って安全ピンを取り出した

「てい!」

 ぷすとムジョウちんを指すと間もなくサイカちゃんがやってきた

「ワシを呼んだかのう?」

「うん、あの鏡割ってー?」

「お安いごようじゃ」

 そう言うと大鎌を取り出して鏡に叩きつける。

 ガシャアアアン

 中から球が出てきた。そして鏡の中にはプロジェクターがあった。

 なるほど。これでいろんな映像を見せているんだろう。

「なんじゃあこの球は?」

「なんでもないよ、お休み!」

 そう言って安全ピンで刺したところに絆創膏を貼る。

「…ええと、何かあったのでしょうか?」

 ムジョウちんに戻っている。

「終わったよん!他も終わってるでしょ。校長室に戻ろ」


[ケンタサイド]

 音楽室以外の僕が知っている7不思議は全部解かれていたようだったので校長室に戻った。

「みんな終わっているわね?宝玉を渡しなさい」

 僕はケンタと集めた宝玉をカザキリに渡した。

「私たちが3つ、薄井健太チームが2つ、戸田唯チームが2つね」

 カザキリが言いながら宝玉をくぼみに入れる。

 すると校長室の奥、トロフィーなどが飾られている部分が開き、中から扉が現れた。

「おお隠し扉か」

 扉を開くと、防衛都市変換装置がありそこには次のように書かれていた。


防衛都市の目

 このレバーを引くとスマートデバイスおよび情報受信デバイスに敵の情報が常に表示されるようになります。


「これは便利そうね」

 そういうとカザキリはレバーを引いた。

 ………

 今のところは敵がいないからか何も起こらなかった。

「とりあえずは防衛の時に情報が受信されるはずよ今はその時を待ちましょう」


PM 6:30

 僕たちはまた時計台のある民家に集まっていた。

「集まったわね。では作戦会議よ。おそらく今日の『防衛の目』で敵の位置情報は何らかの形で受信できるはずだから、一旦は全員この家で待機よ」

「バイクもあるからすぐに駆け付けられるしな」

「運転できるのはアライっちだけすけどねー」

「うっせ。お前らも練習しろ」

「いいから静かに、今日の質問をするわ

 質問⑥:WAVEの最大数はいくつなのいい加減教えなさい?」

「回答⑥:防衛も半分を折り返したためお答えしますWAVEの最大数は『5』となります」

 なるほど、この情報は大きい。つまりWAVE5が来ればもうその日のそれ以上の進行の心配はなくなるのだ。

「聞いた通りよ。これで戦力の分散など戦略の組み立てが一気にしやすくなるわ、さあ、あとは敵が来るのを待ちましょう」


PM 7:00

 ビービー

「WAVE1 1丁目北東にレベル1人型ヒューマロイドが7体出現。直ちに防衛に向かってください」

ピコン

その時リビングのテレビが付き、街の全容と思われる地図と右上に7つ丸印が表示された。丸印は、明滅しながら動いていた。

「なるほど『防衛都市の目』ね、スマートフォンにも位置情報が届いているわ」

 そう言われてスマホを見ると、専用のアプリがいつの間にかインストールされていた上に勝手に立ち上がり、テレビと同じ位置に丸印が付いていた。

「この距離なら新井健のバイクで行くのが早そうね。乗せていきなさい」

「おう、…てかなんか今日おれとの絡み多いな」

「仕方ないでしょうあなたは引き立て役で、唯一のバイク乗りなのだからほらさっさとする」

「お、おう。じゃあ行くぜ」

 そう言うとカザキリとアライはバイクで走り去って行った。


PM 7:10

 テレビ上で7つの丸印が一気に消えたことを確認した。カザキリがうまくやったのだろう。

「うっし風切りさんはうまくやったようだな」

「だね、でもそろそろレベル1も出てこなくなるかもね」

 しばらくするとカザキリとアライがバイクで戻ってきた。

「舞ちんお疲れー!」

 ビービー

「WAVE2 1丁目北西にレベル2犬型ヒューマロイドが2体、レベル3狼型ヒューマロイドが1体出現。直ちに防衛に向かってください」

 テレビ上で見ると画面の右上、相変わらず街の外周上にヒューマロイドが出現したようだった。

「狼型がいるようね、では薄井健太、サイカちゃんの2人で…」

「おい、待てよ!風切りさん。俺も装備を新調したんだぜ」

 そう言ってトモキが待ったをかける。

「スタンガンナックルだレベル2までには確実に効くし、なんならレベル3にも効くと思う」

 そういうとトモキはスタンガンをいくつも連結した腕まで覆う武器を見せつけた。

「僕もあるよ」

 そう言うと僕はサバイバルナイフとスタンガンを小手のようにした装備を見せる。

「この武器に名前はないけどレベル2とレベル3なら相手にできると思う」

「あなたたち準備していたのね」

「新井さんとトダユイが強くなって、俺たちだけ弱いままってわけにはいかないからな」

「いい覚悟ね、ではあなたたちで行きなさい」

「おう」「はい」

 そうって僕たちはアライのバイクに乗り込む。

「ワシの出番はまだかのう」

 サイカちゃんのぼやきが聞こえた。


PM 8:00

[カザキリサイド]

 WAVE2の敵の丸印は消えていた。薄井健太達はうまくやったようね。

 ビービー

「WAVE3 3丁目南西にレベル4狩人型ヒューマロイドが4体出現。直ちに防衛に向かってください」

「お待たせ。サイカちゃんあなたの出番よ」

「ワシの出番ついに来たー!!」

「しかしあなた、さっきはよく我慢したわね」

「あやつらのやる気を感じたからのう。ワシが強いのは当たり前、殺人鬼は増やすに限る―!!」

「別に殺人鬼を目指しているわけじゃないと思うわ」

「よいよい、殺戮タイムスタート!!」


[サイカちゃんサイド]

 「ぬん、ぬん」

 出現場所に向かう間に狩人型が定期的に矢を放ってくるので

 跳躍して矢を叩き落としておった。

 しばらくすると目の前に狩人型が4体並列に並んでおるのが見えた。

 斬!してもよいが長らく放置しておった技をおいおい使ってゆくか

「サイカちゃん流奥義 その1

 さい しゅう

   らい

 ジグザグに鎌で狩人型を斬った。

 狩人型は斬った部分で切断される。

「【Lv2】サイカちゃん流奥義 その1~3は災禍レベルが上昇しおる!とりあえずは今後に備え、レベル上げじゃな!!【Lv2】」


PM 8:30

[カザキリサイド]

 ビービー

「WAVE4 3丁目南東にレベル3狼型ヒューマロイドが2体出現、レベル5熊型ヒューマロイドが1体出現。直ちに防衛に向かってください」

「おい!熊型が出たぜ、高出力レーザーを使うか?」

「いえ、一旦はサイカちゃんにお願いするわ力が通用するか確認しておきたい」

 先ほどの狩人型戦からサイカちゃんは家に戻していた。

「【Lv2】いいじゃろう!あの熊とは再戦したいと思っておった【Lv2】」

 

[サイカちゃんサイド]

画面に出ておる情報をもとに行ってみると狼型と熊型がおった。

「【Lv2】まず雑魚は失せい!【Lv2】」

 ザン、ザン

 狼型をガラクタに変えた。

「【Lv2】熊公リベンジじゃあ!!【Lv2】」

 熊型に鎌を振り下ろす。

 ガン

 ヒビこそ入ったものの刃が通り切っておらぬ。

「【Lv2】ちぃ硬いのう【Lv2】」

「ヴォオオオウ」

 熊型が突進してくる。

 スピードはワシに遥か劣るので軽く避け、大鎌を振るった。

 ガン、ガン、ガン、ガン

 ヒビが増えているが刃は相変わらず通らない。

「ヴォウ、ヴォウ、ヴォウ」

 熊型が爪を振り回して来よる。

「【Lv2】やるしかないか【Lv2】」

 熊型と距離を取って鎌を前方に突き出し、構える。

「【Lv2】サイカちゃん流奥義 その3…【Lv2】」

 熊型を見据え、鎌に力を込めて振りかぶる。

「【Lv2】

 災禍惨劇さいか

 災禍惨劇さん

 災禍惨劇げき!!

 【Lv2】」

 左袈裟、袈裟、左一文字と鎌を振る。

 ガン、ガン、バキィ

 三撃目で熊型の体に穴が開いた。

 体に災禍の力が更にみなぎるのを感じる。

「【Lv3】ふふLv3ここまでの力を使わせるとは【Lv3】」

「ヴォ…オ…ウ」

 熊型は背中に穴が空いておりその場で身動きが取れぬようじゃった。

「【Lv3】じゃがこうなった以上は終いじゃ【Lv3】」

 ザシュ

 と熊型の首を跳ね飛ばした。


PM 9:00

[カザキリサイド]

 熊型を含むWAVE4までの敵全てが消滅したことを確認した。

 熊型は前回見たときサイカちゃんの鎌が通っていなかったのに倒したというのね。

 今は、WAVEがあと1つということもあり、全員を時計台がある家の周囲東西南北に配置している。私は時計台がある家の中にいた。

 まさかここまで戦いの中で強くなっていくなんて。改めて思う。私は本当に仲間に恵まれている。

ビービー

「WAVE5 」

 最後のWAVEのアナウンス来たわね。

「中央広場周辺の民家に」

 しまった!外周以外からの出現はないと読んでいたのに!

 途端に背後で物音がする

「レベル6忍型ヒューマロイドが1体出現。」

 銀色の忍を模したヒューマロイドが目の前にいた

「直ちに防衛に向かってください」

「神盛り探偵道具……」

 とっさに何かしようとしたが、

 ドスッッ

 何もできないまま、小刀が腹部に深々と刺さった。

「う…あ…」

 反撃…を…しな………


[トダユイサイド]

「舞ちん!」

 アナウンス直後家にダッシュすると、忍型にカザキリが刺されていた。

「ちっ。女優七変化:カウガール チサト・タナカ!このやろーー!!」

 バン!バン!

 忍型に向かって銃弾を撃ち込む

 シュンッ

 シュンッ

 躱した!

 そのまま小刀が迫る。

 まさに小刀が刺さろうという時、思わず目を閉じた。

「【Lv3】それで速いつもりか?【Lv3】」

 目を開くと、忍型の顔の真横に瞳孔を開いたサイカちゃんの顔があった。一瞬の後、大鎌が忍型の首が跳ねた。

 忍型の目から光が失われ活動を停止した。

「【Lv3】熊程硬くはなさそうじゃの【Lv3】」

 サイカちゃんはつまらなそうに言った。

「それより、舞ちんを助けないと!女優七変化:ナース 森本千夏!」

 私は半年前に演じたナースになりきり、実地指導で培った応急処置を舞ちんに施した。舞ちんは目を覚まさない。

「一旦はこれでよし!アライっち!病院にバイクで連れて行って!」

「お、おう」

 そばでおろおろと見ていたアライっちに指示を飛ばす。

「3人乗りは初だが、飛ばすぜ。しっかりつかまってろよ」

 アライっちの背に舞ちんを括り付け、私はさらにその後ろから、サンドイッチのようにして乗った。

 ブゥンブン、ブゥーーーーーン

 バイクが猛スピードで病院の方に向かっていく。


PM 9:10

[トダユイサイド]

  4丁目の病院に着くと、病室がある2階まで舞ちんをアライっちに背負わせた。

 薬類を探し病院内を駆け回っていると『集中治療室』と名のついた部屋があった。どうやらAIが全自動で治療をしてくれるらしい。

「アライっち!こっちに『集中治療室』がある。舞ちんを運んできて!」

 残念ながら私には女医の役者経験はない。ナース演技時に手術シーンがあったがメスなどを医者に渡すとか患者の体を拭くとかそのレベルのことしかしていない。手術の実施そのもののことはさっぱりだ。

 アライっちが舞ちんを背負ってやってくる。私が手伝って舞ちんを手術台の上に寝かせ、ためらいなく手術開始ボタンを押した。

手術オペを開始します。患者以外の方は速やかに集中治療室から出てください」

 とアナウンスがしたので、アライっちと部屋から出た。

「舞ちん、お願い…これで目を覚まして…」


PM 11:00

[トダユイサイド]

 ピンポンパンポーン

「本日の敵勢力の進行が停止しました。防衛お疲れさまでした」

 アナウンスがした。舞ちんはいまだに集中治療室の中だった。

 アライっちには、倒したと思っていたヒューマロイドが生きていたなどのトラブルに備えて、時計台がある家に戻ってもらった。すごくここにいたそうだったけど。

「戸田唯さん!風切さんは大丈夫ですか?」

 しばらくすると薄井健太を始め、仲間の面々が集中治療室前に集まってきた。

「【Lv3】ワシがもっと速ければのう【Lv3】」

「カザキリは変わらねえか?」

「風切さん…」

 皆が心配を口にしていた。

「手術はずっと続いていて目を覚まさないみたい」

「みんな…防衛お疲れ様…」

 その時集中治療室からマイクの音声のような音質の舞ちんの声が聞こえた。

「カザキリ!」

「風切さん!」

「まだしゃべっちゃだめよ!」

「いえ…明日の指示だけ…明日は…薄井…健太…あなたが…指揮を執りなさい」

 舞ちんはそれだけいうと口を閉ざしたようだった。


[ケンタサイド]

 全員の顔を見回すと、僕は言った。

「皆さん防衛お疲れ様です。風切さんの言葉に従って僕が代理を努めます。

 明日は残り2つの防衛都市変換装置を探しましょう。サイカちゃんは現時点で最高戦力なのでレベル4以上の敵の相手をお願いしようと思っています。レベル1~3は僕とトモキで、新井さんのバイクの高性能出力ブレードは緊急時に使いましょう。戸田唯さんはまた中央の防衛をお願いします。今日は以上で解散にします」

 僕はそう言ったが誰一人この場を動くものはいなかった。

 カザキリ、本当に僕が指示役で明日を乗り越えられるのかな。

 病院の窓から防衛都市の深い闇を見据えながら僕はそう思った。

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