トラップだらけの住宅展示場で100億円を目指してひたすらに滞在する
消化代行
第一章 始まり編
第1話 滞在スタート
国内有数の不動産会社、住宅メーカーが資金協力し作られた巨大地下住宅展示場。通称SHP(シークレット・ハウジング・パーク)
そこには表には出さない様々な実験的住宅が展示されているという。
そのPRとして、住宅展示場にある物件で1年間滞在することができた者全員に100億円の賞金を配るというぶっ飛んだ企画が持ち上がった。
ただし、この企画に参加できるのは全国で抽選を通った100名のみ。
その100名の枠に、なんと僕こと薄井健太は受かったのであった。正直言って信じられない。
今朝の星座占いは12位。学校では退屈な授業を聞いて、早々に家に帰ってラノベを読もうとしたら見慣れない黒い封筒が投函されていた。
封筒を開くと、ノリで応募した地下住宅展示場への居住権獲得のお知らせの手紙で、次のように書かれていた。
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おめでとうございます。あなたは我々日本住宅連合が主催する最新住宅展示場、通称SHPへの居住権を獲得しました。
今から1週間後の9月27日13時にM県M市にあるM坂駅まで手ぶらでお越し下さい。詳しい説明は現地で行います。
日本住宅連合 田中
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最初に見た時には詐欺を疑ったけど、押印されている日本住宅連合の印は偽造が難しく少なくともネット上に載っている、本物である証は全てクリアしていた。
とはいえ、今の精巧に作った偽物であることも考えられなくはない。何せ応募総数1000万人の中の100人である。
9月27日は幸いにして土曜日。詐欺だったとしてもM県に"観光"として行ってくるだけでもいい思い出が作れる。
バイト代もそこそこに貯まっていることだしワンチャン100億の旅と行こうか。
9月27日 AM 8:45
当選が本当だった時のために念のため次のような置き手紙をしておいた。
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母さんへ
前に話した住宅展示場のイベントに僕が当選したかもしれません、1年ほど戻らない可能性もあるので学校には伝えておいて下さい。
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我ながら言葉足らずな手紙だと思った。
置き手紙にしたのは、直接話したら絶対に止められると思ったからだ。
9月27日 PM 12:45
僕はM坂駅前にいた。
うわぁやっぱり当選は本当かも。
そこには、老若男女様々な人が集まっていた。手持無沙汰にスマホを眺める者、遠くを見ている者がおり、明らかに何かを待っている様子だった。
ヤンキーみたいな人にギャル、車椅子の老人に、腕が丸太みたいなマッチョの人もいる。皆明らかに観光に来たとは思えないようなギラついた目をしている。
と、そこに知り合いがいるのを見つけた。
「あれ?ケンタじゃんか、お前も受かったのか?」
「トモキ!じゃあトモキも!」
目の前にいる短髪爽やか男子校生は佐藤智樹。同じ高校のクラスメイトで親友である。そもそも今回の応募もトモキによる推しによるものだった。
「同じ高校から2人も出るなんてなんか抽選怪しいな。正直詐欺なんじゃないかと思ってんだよね」
「だよね、でもラッキーだったよ」
「ところでよ、さっき見つけちまったんだよな、芸能人の戸田唯!何かの番組かとも思ったんだけどさ、いや~びっくりだったわ」
戸田唯は清楚系かつ演技派で知られる女優であった。トモキも僕も、戸田唯のディープなファンだった。
「え、僕も見たいな」
僕も是非とも生トダユイを見ようとして目を凝らしていると、駅のロータリーに黒塗りのベンツが何台も滑り込んできた。
「おい!なんだよあれ」
こじんまりとしたロータリーに似つかわしくない、無骨な車の登場に周りの人たちにも動揺が走っているようだ。
先頭のベンツから人が下りてくる。
「SHPご参加の皆様は、紹介状を近くの黒服にお見せください」
その言葉を合図に参加者と思われる人たちが最寄りのベンツにいる黒服に紹介状を見せ、次々とベンツに乗り込んでいく。
手近な黒服に紹介状を見せると車に乗るよう促された。乗り込むと目隠しをするよう指示があった。
目隠しをされ暫く経った頃、車が止まった。
「こちらでお降りください。目隠しは外していただいて結構です」
黒服に手を引かれ目隠しを外すと、そこには広大な空間が広がっていた。
均された地面が果てしなく広がり、その上を何台ものトラックが行き交っていた。何やら地下に向かって運び込んでいる。その敷地は果てが見えないほどである、日本のどこにこんな大きな敷地があるのだろうと思う程だった。
「すげー広いよな」
いつのまにかトモキがすぐ近くまで来ていた。
トラックの搬入口とは別に僕達がいる近くにも巨大なエレベータがあった。
「それではこちらにお集まりください」
拡声器を使い、先ほどの黒服が呼びかけている。
「では、これよりルールを説明します。
まずは皆様、今回は我々が主催する最新住宅展示場——通称SHPへの滞在に応募していただきありがとうございます。
応募要項にも書かれております通り、我々が主催する住宅展示場において脱落することなく1年間滞在していただいた方にはもれなく100億円を贈呈します」
ここで、参加者の中から歓声のようなものが上がった。
「ただし、注意事項にありますが、本住宅展示場においては命の危険にさらされることもあり大変危険な企画となっておりますので、その旨はご了承ください」
命の危険…その言葉に僕は緊張した。
「続いて、住民権剥奪となってしまう場合についてご説明します。住民権剥奪となってしまう場合は以下の3つの場合となります。
1:死亡した場合
2:本人の意思で脱落したい旨を申し出た場合
3:滞在物件の滞在可能日数を超えてしまった場合」
ここで一旦黒服は言葉を区切った。
「それでは、これから皆さんにはこの地下にある住民票受付に向かっていただき、住民票を発行していただきます。今私が言ったルールも住民票に記載されますので忘れてしまった場合は確認をお願いします。」
黒服がそう言うと『チン』という音が鳴り、僕たちに近くにあったエレベータの扉が開いた。参加者の100名はゆうに乗れる広さがある。トモキと一緒にエレベータに乗ると地下に向かって降りていく。
「なんか、いよいよって感じだね」
「だな、俺は脱落する気がしねえけど」
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