第8話 尊敬する人
駅まで歩いて行って東と西でざわついた心持ちになった。
駅の東のトイレで用を足していると、夢の中でおしっこをしたようなそんな錯覚に嫌な感じがした。
駅を歩いていると私の尊敬する人が一人亡くなったと直感で思い、
めったに泣かない私が急激に涙がぼろぼろ出てきた。
最初、なんで泣いているのか分からなかったが多分そういうことなのだろう。
*
その尊敬する人は一人の女性を愛していたが、
それを胸の中にしまいこんで最期までその女性には伝えなかった。
それは、もう一人の男性がその女性をやはり愛しており、
だからこそ伝えられなかったのではないのか。
二人の男性に愛された女性は私にアドバイスをくれた。
「実写映画の監督になりたいのならなれる。へなちょこ監督だけど、
そのかわり作品は素晴らしいものが出来る。素晴らしいと言われるのは作品だけでもいいじゃない。
三作長編を作りなさい。」
私が尊敬する人が亡くなるずいぶん前にその女性は亡くなっているのだが、
その女性が亡くなりそうなとき、尊敬する人に「好きなのです。」と言うと、
「私はあなたとは結婚できません。もう一人の男性がいるじゃないですか。」
と言って泣きながら女性の手の甲に接吻をした。
*
また、もう一人の尊敬する人に「死になさい。」と言われ、
トイレで頭をガンガンと打って、その後しゃがんで急に立ち上がったら、
治が頭のほうまでまわらず表面的に私が死んだような気がした。
そうしたら、その人が死になさいと言われて本当に死ぬとは、とショックを受けていた。
「死ねるものなら死んでみなさい。」を「死になさい。」と聞き間違えていたのだ。
歯ブラシで血を流すのは歯が歯槽膿漏か何かで血を流すと
健康な歯茎になっていくから。
それをその尊敬する人は心配性になり勘違いをして、
を流して痛みを知ろうとしたのか、それとも痛みを痛く感じなくなっているのか、と思っていた。
昔新聞紙を切り裂いてストレスを発散しているのが私。
お姉ちゃんは新聞紙を切って窓を拭く、すると綺麗になる、
そんな感じの勘違いだったのでしょう。
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