唇のふくらみに押し当てた一本の鉛筆

純文学が好き

第1話 赤い服の女

女性用のミサンガ(祈りを込めた腕輪)のような糸で編み上げた足の指輪。

鮮やかな赤と深い緑に灰色の賑わいのある色の糸でできた足の指輪。

そのうち何個かの足の指輪に蟻の模様がある。

それ以外の足の指輪に幾何学模様がある。

夏には真っ赤な色でざらめいた肌触りで、その中に麻の力強さがあるワンピース。

冬はウールでまったく同じデザイン。

赤いワンピースの模様は本人のよく目につくところにあり、腕から手首の辺りに迷路のようになっていて、つい見続けてしまう癖が本人にはある。

その腕のところが毎日着るたびに伸びているのではと錯覚かなにかしてしまい、母親が継ぎ足しているのではと疑っている。

それが赤いワンピースの裾模様もで、足が隠れるくらい長いワンピースである。

毎日同じ洋服を日中に洗って着る。

小学校の廃屋で夕方から朝まで特別な時だけ踊り続ける。

洋服は夏にざっと洗える麻のワンピース。

下から着るとストンと着られる。

痩せても太っても同じような体型に見える。

ワンピースのふちを触る癖があり、それで少しずつぼろぼろになっているのに本人は「馴染んできた」と言い張る。

何度洗濯しているか分からないが、赤い糸の多くが色褪せるのに、赤い糸が赤いままのところがある。

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