第2/5話 弱い者イジメ

 徳光は藤谷の執拗な憤りに恐怖を感じていた。徳光は、友人の斎藤優紀に助けを求めた。斎藤は高校時代、生徒会長を務め、問題解決の出来る正義感の強い人物だった。普段温厚な斎藤だったが友人が危険な目に遭うかも入れないと徳光に同行することにした。6月16日、徳光と斎藤は藤谷に指定された公園に怯えつつ、問題を長引かせたくないという思いで出向いた。そこには藤谷以外にも数人がいた。

 藤谷もまた東大阪大学短期大学卒の友人の石上徹也に相談していた。石上は短大を卒業後、職に就かずふらふらし、金に困っていた。

 

石上「落とし前として、慰謝料を頂こうぜ」


 石上は、知人の会社員の木下博(21)と20歳の専門学生の西村剛治を「小遣い稼ぎしないか」と呼び出し、連れてきていた。藤谷と斎藤は身構えた。話し合いのつもりが様子が可笑しい。二人に緊張感が走った。戸惑う暇もなく、徳光と斎藤は、藤谷・石上・木下・西村に暴行を受けた。戦意を喪失してぐったりする二人を「誰かに見られたら不味い」と石上の支持で車に押し込んだ。

 藤谷と斎藤は、約五時間車内で四人の愚痴やストレスの対象となった。その後、藤谷と石上は、徳光に50万円の慰謝料を要求した。その際、石上は著名な指定暴力団の名前を出して「6月19日までに50万円を支払わなければ殺す。海に沈めるか。生き埋めにしてやる」と脅した。

 冷静な第三者がいれば、やくざの名前をだしたが、沈めるか埋めるかしてやるとあたかも自分たちが「やる」と語っている所からヤクザの介入はないと考えるべきだった。そもそも50万円程度でやばい仕事を受けるかも疑問だと気づけたかもしれない。

 徳光と斎藤は、ガソリン代として5千円を奪われ、解放された。二人を解放した車内では、近日中に金が手に入るとお祭り騒ぎだった。

 

 徳光と斎藤にとって50万円は大金だ。おいそれ用意できるものではなかった。恐怖に追い詰められた者は被害妄想の悪魔の餌食になり、その場から何が何でも逃れたいと考える。逃れるためにはリスクを犯すことも少なくない。斎藤の脳裏に目には目を歯には歯をが朧げに浮かんだ。その時、頭に浮かんだのが中学の時の同級生だった無職の大林隆治(21)だった。斎藤から「頼むから10万円貸してくれ。やくざに埋められる」と頼まれた。大林は、人から頼りにされたことを「男気」と感じていた。優等生の斎藤から泣く程辛いことの頼みごとをされたことで大林の自己承認欲求が満たされていくのを大林は感じていた。

 助けを求められた大林は直ぐに中学時代の同級生である大阪府立大学の三年生の古畑友則(22)に連絡を取った。大林にとって自分の事を理解してくれる頭のいい奴と思っていた。古畑友則は、普段は優しい感じだが、怒ったら何するかわからず、とにかく怖いと周囲から言われていた人物だ。古畑は実は、中学時代は校内で不良グループを結成しており、そのリーダー格だった。大林とは事件の1年程前に一緒に海外旅行に行ったのがきっかけで関係が深まっていた。


大林「知り合いが暴行を受け、脅されている、どうすればいい」

古畑「そうだな、まず、暴行を受けた奴に警察に被害届を出すように伝えろ」

大林「わかった」

 

 暴行を受け、金を要求されているので古畑の対応は適切だった。事件をどう速やかに鎮静化させ終わらせるか話し合うために、石上・古畑・徳光・斎藤は居酒屋に集合した。




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