第8話:絶交
あの日以来、僕は光と話せる機会を狙って学校に通っている。いじめはあるけど、それ以上に光と話したい気持ちが勝っていた。五十嵐達にはいじめらる、もはや俺が知ってる五十嵐は居ない。
昼休み、五十嵐と光のふたりは最近よく一緒にいる。昼休みも二人で食べることが多かった。僕は遠くからその様子を見つめる。
「ねぇ、いつまで学校来んの?」
声をかけてきたのは『朝日 ヒナ』だった。光の親友である。
「え……?」
「え?じゃないわよ。五十嵐のこと殴ったんでしょ?謝ったの?私は暴力は嫌いじゃないけど、謝らない人は許さない」
「……」
「なんか言えよ、本当にウザイ。」
僕は顔を伏せ、言葉を出せずにいた。朝日は腕組みをして、じっと僕を見下ろす。教室のざわめきとは別の、重い視線が僕を押しつぶすようだった。
「まじで、ずっと光のこと見てて。ホントキモイ。痴漢したらしいよね」
言い訳すらできない。
「……」
「まじ、なんも言わないの?有り得な。さよなら。五十嵐にも光にも、近づかないでね」
朝日はそう言い残すと、軽やかに教室を出て行った。
♢♢♢
その日偶然起きた、光と話せる。わかってるでも1回だけ話したい、お願いだから、光が1人の時を狙って僕は声をかけた、
「光──」
「ひぃ、な、なに。」
一瞬びっくりした様子を見せて、光は僕の方を見た。教室のざわめきが遠くに感じる。
「あ、あのさ。この前の事なんだけど、あれは誤解で……あいつ、五十嵐は光の体が目当てなんだ。聞いたんだ、僕、あいつが光のことを──」
「あんたさ!!」
僕が少しでも近づくと、光は後ずさりした。その瞳には怒りと戸惑いが混ざっている。声が少し震えているのもわかる。
「なんで今さら……!五十嵐君の悪口言うの?信じられない、あんたは五十嵐君を殴ったんだよ?謝らないでさ、それにあの人は庇ってくれたじゃん、動画にしないでって優しいじゃん。なんでそんなこと言うの?本当に最低だよ、あんた。少なくとも今のあんたより私は五十嵐君の方がかっこいいから」
「え……いや、待って。え?」
信じられない、信じたくなかった。あいつの方がかっこいい?ありえない、あいつは──僕の目には、あの日駅での出来事で見せた悪意しか残っていない。暴力的で、ずるくて、ずっと憎んでいたはずなのに──。
「ち、違う……そんなこと、ない……」
声が震える。言葉にすると自分の弱さが露呈するのが怖かった。でも、光は僕の視線を逸らさず、冷たく、でも真剣に言う。
「本当に……信じられないよ、あんた。今のあんたは、自分のことしか考えてない。五十嵐君は少なくとも……私のこと守ろうとしてくれたじゃない!」
光はペンを構えていた。あの目……僕は知っている。恐れている、怖がっている、その瞳の奥には本気の警戒がある。
僕は光の恋人だった。だからこそあの目を見れば、光が僕を、本気で嫌がってることも。
その時だった、扉が開いた。そこに居たのは五十嵐と朝日、そして斉藤だ。
「てめぇ、何してんだ!!」
五十嵐が俺の方に向かって走る、そして拘束した。朝日は光に駆け寄る、大丈夫と背中を撫でているホッとした光は少し涙目になっていた、斉藤は光と僕の間に入って通させないようにしている。
「ざまぁみろ……ゴミが。これも全部俺が仕組んだ、これからの俺と光の事をじっくりと見とけ、ビデオぐらい送ってやるからよ」
五十嵐が俺の耳に誰も聞こえない声で囁いた。
♢♢♢
「おい、そこのガキ!」
背後から怒声が飛んできた。慌てて振り返ると、屈強な男がこちらを睨みつけて立っていた。
「すみません……」
しかし謝る間もなく、男は一気に距離を詰め、俺の胸元を力強く掴む。思わず息が詰まる。
「てめぇ……何をふざけて歩いてやがる!」
その握力は尋常ではなく、逃げようにも腕が絡め取られ、身動きが取れなかった。
「
その声に、俺はハッとした。振り向くと、そこには幼馴染の『星野 瑞希』が立っていた。
ギャル風だった彼女も、中学生になり、さらに可愛らしさが増していた。
「こいつ……痴漢暴行野郎だ。五十嵐から聞いたぜ。その顔、間違いないな。とりあえず、俺の女に近づかないようにしてもらおうか」
「ね、本当に帰るよ!」
星野の声が背後から届くが、皇の拳は容赦なく飛んできた。殴られ、蹴られ、僕の体は地面に叩きつけられる。痛みが全身を走り抜け、声すら出せなかった。
「お前。まあ、いい金持ってんじゃん、ありがたくもらっておくわ。んじゃ、またな。次に俺の女に近づいたら、容赦しねぇからな」
血と痛みの中、僕はただ身をすくめるしかなかった。周囲の風景が歪み、世界が暗く沈んでいく。
「ごめんね、またね。これ、治療費」
星野は僕だと気づいていないようだった。そりゃそうだ、かつての小学生の頃の僕が、今ではこんな陰湿な男になっているのだから。
そして、目に映ったのは星野の横に立つ皇──。仲良く歩いていく。あの頃の無邪気な笑顔はどこにもなく、僕の心にぽっかりと穴が開いた。
この日僕は決意した 死のう──。
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