俺の関ケ原
猫提督
第1話関ヶ原の戦い
時は、慶長5年(1600年)9月15日。
「
石田三成も大坂に逃げるべく、
彼の側には、供回り数人がついてくれており、
「この伊吹山を超えれば、領国に入れます。頑張ってくだされ、殿」
腕利きの家臣である
「待て塩野!殿の足はもう限界なのだ。もう少しゆっくり進まれねば」
側役を務める
険しい山道を、戦で疲れ切った体で超えるのは、並々ならぬ精神では難しく、緊張感が続いていた戦場を抜けるまで持った者はそう多くなかった。
三成は、元々奉行であったこともあり、戦場の空気に慣れないため、すぐに疲れてしまっていた。
「すまぬ平太郎。儂の事は気にせんでいい」
三成は、行尚を前へと押し出すと、自身の体が限界なのか崩れ落ちて来たので、勘平が途中で抱きかかえた。
「大丈夫ですか?もうすぐ、麓の集落があります。そこで一時休憩したら佐和山に戻りましょう」
勘平がそう言って三成を説得すると、すでに体力の限界であった三成がこくりと頷いた。
「よし。勘平の案を採用しよう」
三成が腰を上げて歩こうとするのを、行尚が再度支える。
三成たちがたどり着いたのは、伊吹山の麓にある
三成は、近くにある馬小屋にて身を隠すことにして、清助と勘平が村人から食料などを分けてもらうように交渉しに出向いて行った。
村の中央にある名主屋敷に出向いた勘平たちに、名主である丈一郎という初老の男性が出迎えてくれた。
「名主殿でいらっしゃるか?儂は石田家の家臣で塩野と申す者だが。訳あって食い物などを求めたいのであるが、お主の家より分けてくれぬか」
清助が礼儀正しく要求すると、丈一郎は笑顔で承諾した。
「佐和山様の申し出とあらば、儂らに断る理由などございません。何なりとお申し付けください」
丈一郎の承諾に安堵した清助であったが、門前で待つ勘平の顔は、少し不安がっていた。
丈一郎の使用人である何人かは、ひそひそと清助らの顔を見ながら何かを話しており、村人たちも何か不安げな顔をしていた。
清助が戻ってくると、勘平がその気味の悪さを伝えることにした。
「塩野殿。急ぎ佐和山に向かって援軍を求めるべきではないか?この村は、あまり良くない気がする」
勘平の不安を聞いた清助は、少し周囲を見渡した後に考えた。
「・・・・このまま殿を置いて行く訳にはいかない。少なくとも今日明日は、ここに隠れることにしよう」
清助の決定に勘平も少し不安を感じながら納得するが、やはり気になってしまうのか、夜の見張りを一番に買って出たのであった。
松明を掲げ、周囲を見渡すように歩いていると、村の角地にある荒れ道に人影を見つけたので、松明を消した勘平が、影を追っていった。
人影たちは、目印になるであろう大きな杉の木に辿り着くと、そこにいる追撃隊に話を仕掛けてきていた。
「そうか。よくやったぞ」
後で見ていた勘平は、腰に下げた日本刀に手を掛けると、素早くその中に躍り出ていった。
「何者じゃ!拙者は、石田家家臣渡辺勘平である」
周囲の追撃兵に割って入った勘平に、彼らは刀槍を向けて睨みつけた。
彼らの旗印を見るに、同じ近江出身の大名である
「石田の残党じゃ!捕らえて三成の場所を吐かせよ」
組頭が大声で指示すると、近くの兵士たちがいっせいに切りかかっていった。
「とうりゃ!ってい!」
勘平の振り回す刀は、近づいてくる田中兵を打ち払っていくと、組頭を含めた者たちは、怖気づいたかのように走り出していった。
「こりゃまずいな。殿!」
勘平が三成たちが立てこもっている馬小屋に走っていくと、既に数本の松明と、田中家の旗印である「左三つ巴」が掲げられていた。
「石田三成であるな!出てまいれ」
侍大将であろう兜飾りをつけた武者が奥に松明を灯すと、三成がよろよろとふらつきながら出てくる。
体と精神がぼろぼろになっていた三成は、もはや戦うことができなかった。
「三成様!うぐっ」
飛び出そうとしていた勘平を、清助が頭を押さえて止めた。
「塩野殿!何をなされる」
「馬鹿をするんじゃない!あんな中に突っ込んだら返り討ちにあうのがおちだ」
「しかし、このままでは殿が」
「今飛び込もうと、助けられん。諦めよ」
憤慨する勘平をどうにか説得する清助の目の前で、三成が田中家の兵士たちに連れていかれる姿を見つめるしかなかった。
これより1月後、石田三成を含む今回の騒乱を起こした者たちは
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