第8話 インタラクション・デュアリング・ブレイクタイム

「……アドル艦長……『運営推進本部』に向け…戦闘の終結と状況の報告を送信しました……確認して対処するから待機せよ…との返答です……」




「……了解した…カリーナ……『ハンナ・アーレント』の状態を教えてくれ……」




「…はい……損傷率は39%……総合的な観測に拠れば…物理的な艦体の損傷よりも、艦内システムがこうむっているダメージの方が大きいようです……」




「……うん……ミサイル100基分の一点爆破は……艦内システムに対して、予想以上のダメージを与えるようだね……」




「……艦長! 『運営推進本部』から本艦に対しての通達が来ました……受信…記録…保存……要点を読みます……授与される賞金は3000万……付与される経験値は1000万です……休憩時間は60分……経過したら30秒で、セカンド・ステージへ転送されます……『トライアル・ミッション』に於いて…昼食休憩時間…夕食休憩時間…ミッドナイト・タイムの申請は、受け付けていないそうです……以上です……」




「……了解したよ、カリーナ……経験値の分配付与はこれまで通り、20項目に亘って実施してくれ……賞金の管理もこれまで通り、ハル参謀に一任する……」




「……分かりました……」




「……承知しました……」




「……カリーナ…もう一度、ハリエット・エイクランド艦長をコールしてくれ……」




「……呼び出しています………繋がりました……」




「……度々の呼び掛けで申し訳ありません……ハリエット・エイクランド艦長……聴こえますか? アドル・エルクです……」




「……こちらは良好に聴こえます……アドル・エルク艦長……まだ映像交信が出来ない状態でして、それは申し訳ありません……ですが、貴方の『ディファイアント』と対戦できました事は…我々にとって貴重な経験となりました……感謝申し上げます……」




「……こちらこそです……ハリエット・エイクランド艦長……ファースト・ゲームを6th・ステージまでクリアされた貴艦と出逢え、対戦できましたのは…私にとっても『ディファイアント』にとっても幸運でした……ありがとうございました……」




「……恐縮です……新たに知己として…お近付きになれましたので…私の事はどうぞ、ハリエットとお呼び下さい……」




「……分かりました……それでは、私の事はアドルで…宜しくお願いします……付きましては、ハリエット艦長……ブレイクタイムは60分と通達されましたか? 」




「……はい……そのように通達されました……」




「……そうですか……この時間を可能な限り有効に使うのであれば…修理・修復・調整に全力を傾けるべきと思います……そこでもしも…貴艦司令部の同意が得られるのでありましたなら……私が自ら本艦の機関部チームを率いて、そちらに乗艦させて頂き…お手伝いしたいと考えておりますが、如何でしょうか? 」




 ハリエット・エイクランド艦長は暫く言葉を発さなかったが、それも30秒とは続かなかった。




「……アドル艦長……大変に有り難いお申し出を、ありがとうございます……感謝に耐えません……私個人としては、諸手を挙げて歓迎したい処なのですが……如何せん、これは私の独断で決定できる事ではありません……失礼ながら暫時頂きまして、艦司令部で協議を致します……決定しましたら…改めてこちらから交信します……」




「……分かりました…どうぞ、協議に入って下さい……こちらはこのまま待機します……アドル・エルクより、以上です……」




 私はここで言葉を切って交信を終えた。




「……エマ…『ハンナ・アーレント』の左舷に本艦の右舷を接近させて……距離30mに着けてくれ……」




「…了解…」




 ……『ハンナ・アーレント』……




「……よし…では…アドル・エルク艦長の申し出を吟味して、討議に入ろう……私としては、この申し出を全面的に受け容れて協力を仰ぎ……あまり時間は無いが可能な限り修理・修復・調整を施して、次のステージに臨みたい……意見を頼む……」




「……私も彼らの協力を得て、修理を進める事に賛成です……本艦の経験値はルーキーに戻りましたので、次に転送されたフィールドで出会う艦も同じ程度のレベルでしょう……それなら、出来るだけ修理した方が良いですね……」




 キャスリーン・ケイツ副長がそう言って、ハリエット・エイクランド艦長の意向に賛同する。




「……ありがとう、キャシー……他に意見はあるかな? 」




「……『ディファイアント』の彼らを信頼されるのですか? 」




 『ハンナ・アーレント』の保安部長、ボブ・ハミルトンが訊いた。




「……勿論、彼らは100%信頼できるよ、ボブ……何故なら彼らはその言動の総てを撮影されているんだし……もはや戦う力の無い我々を騙して…何をする必要がある? そんな事に何の意味がある? 」




 そう返された保安部長は、そのまま口を閉じて座った。




「……もう時間が無いし、他に代替案や意見も無いようならこれで決めたいがどうかな? 」




 20秒待ったが、声は挙がらなかった。




「……よし…これで決定とする……『ディファイアント』との交信を再開してくれ……」




「……了解……」




 ……『ディファイアント』……




「…艦長! 『ハンナ・アーレント』からコールです……」




「…接続…」




「……こちらは『ハンナ・アーレント』…ハリエットです……お待たせしましたが、アドル艦長のお申し出を全面的に受領させて頂き…お言葉に甘えたいと思います……」




「……分かりました…それでは先ず、私と機関部長と副機関部長の3名で乗艦させて頂きたいので、許可を下さい……その上でこちらからシャトルで出ます……頂けますか? 」




「……勿論、許可します……」




「……ありがとうございます…分かりました…早速伺います……右舷のシャトル・デッキは開きますか? 」




「……少しお待ち下さい……」




 その後10数秒の間を置いて…




「……開きます…右舷のシャトル・デッキで収容します……」




「……分かりました…では、早速出ますので…取り敢えずこれで以上とします……」




 そこで交信を終える……リーア・ミスタンテ機関部長は、既に立ち上がって歩み寄って来ている。




「……リーア、直ぐに出るよ。ロリーナに言って、シャトルの発艦準備だ……ソフィー! パイロットをやってくれ! カリーナ、半径100mならデータリンクは大丈夫だな? 」




「…はい、その距離ならダイレクトで大丈夫です! 」




「…分かった。pad を持って来てくれ…行こう! 」




 それでもうブリッジから出て、シャトル・デッキに向かう……ソフィー・ヴァヴァサーも後に続く。




 ノーマル・シャトルで出るだけだから、直ぐに発艦できる……ロリーナ・マッケニット副機関部長とも一緒に4人で搭乗し、席に着くと直ぐにデッキ・ゲートが開く。




 発艦すると直ぐに回り込んで『ハンナ・アーレント』の右舷に出る……デッキ・ゲートは既に開いていた。




「…着艦します…」




 それだけ言ってスムーズに入り、着艦させて停止させた……さすがだ。




 開いた後部ハッチから降りると『ハンナ・アーレント』のメイン・スタッフメンバーとおぼしき数名が出迎えに来てくれていたので……ハリエット艦長と思しき男性に歩み寄る。




「……初めまして…ハリエット艦長ですね? アドル・エルクです……宜しくお願いします……」




「……こちらこそ、宜しくお願いします……ハリエット・エイクランドです……アドル艦長にお会いできて光栄です……」




「……こちらこそ……早速ですが、紹介します……リーア・ミスタンテ機関部長に…ロリーナ・マッケニット副機関部長……サブ・パイロットのソフィー・ヴァヴァサーです……」




「……ありがとうございます……お世話になります……宜しくお願いします……それでは……副長のキャスリーン・ケイツ……参謀のアラン・クーパー……機関部長のリアム・オリアリー……メインパイロットのライアン・クロス……保安部長のボブ・ハミルトン……メイン・センサーオペレーターのへレーネ・トラントフ……メイン・ミサイルコントローラーのユリアーネ・ラントルート…です……」




「……分かりました……宜しくお願いします……もうあまり時間がありませんので…転送時刻までに、確実に治せる処を治しましょう……必要な物資・資材・交換用部品で…足りない物は本艦から拠出します……今から全員で損傷箇所を観て回り…状況・状態に関する情報は本艦とも共有して、取り掛かる箇所を決めましょう……」




 そう言い終えてから歩き出して総ての損傷箇所を観察し、総合的な状態も確認した上で…転送時刻までの残り時間を鑑み…全エンジンと総ての姿勢制御スラスター……ディフレクター・グリッドとシールド・ジェネレーター……損傷している対艦ミサイル発射管に取り掛かる事にした。




 そうと決まれば人数だ……私は機関部員と保安部員を全員呼び寄せ、作業の割り振りはリーアとロリーナに任せて…わたし自身も彼女らの指示に従って動く事にする。




 転送時刻まで15分……もう撤収し始めないと間に合わなくなるから…無理矢理に作業を止めさせて、撤収を指示する。




 結果として……不充分であり、不満足でもあったが……限られた時間の中で…やれる事はやった……ツールや作業で使ったマシンは総て引き上げたが……物資・資材・部品は残して帰る事にした。




「……ハリエット艦長……まだ不充分な状態で帰らなければならなくなってしまいました……申し訳ありません……」




「……言わないで下さい…アドル艦長……我々にとっては、本当に充分過ぎる程の支援でした……ありがとうございました……」




 お互いに汚れた手袋を脱いで握手を交わす。




「……物資・資材・部品は残して行きますので、活用して下さい……健闘を祈ります……これは手書きですみませんが、携帯端末の通話とDMのアカウントです……入港したら、一報を下さい……気を付けて……既にお聞き及びとは思いますが……また、宜しければお時間のある際にでも【『ディファイアント』共闘同盟】への加盟について……軽く考えてみて下さい……次にお邪魔する時には、お気に入りの1本を持参しますよ(笑)……それでは、また……見送りは結構ですから、転送に備えて下さい……」




 手書きのメモを渡して、別れの挨拶を告げる……2人の艦長は笑顔で、最後にまた握手を交わして別れた……シャトルに跳び乗って発艦……『ハンナ・アーレント』を大きく回り込んで『ディファイアント』のシャトル・デッキを目指す……滑り込んで着艦……停止したのは、転送時刻の5分前だった。

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