第28話 光の湖畔と、夜のごほうび 💧
星空観測が終わると、私たちは「星見の高台」から湖のほうへ歩いていった。
空はすっかり暗くなり、風が少し冷たかった。
でも、みんなの足どりは軽い。これから花火大会が始まるのだ。
午前中、そうたくんがバスの中で言っていた。
「オレ、洞爺の出身なんだ。湖のこと、ちょっとだけ詳しいよ。
着いたら案内するよ。おすすめの場所、あるんだ」
その言葉どおり、そうたくんが先頭に立って、私たちを案内してくれた。
歩きながら、湖のこともいろいろ教えてくれた。
着いたのは「光の湖畔」。アスレチックの遊具が並ぶ広場のはしっこに、ちょっとした芝生のスペースがあった。
トイレも近くて、駐車場も見える。だけど、人は少なくて、静かだった。
「ここなら混まないし、花火もよく見えるよ」
そうたくんが言った。
みんなが「すごい!」「ナイス!」と声をそろえて、レジャーシートを広げた。
私は、さくらちゃんと並んで座った。
湖の向こうに、光の船がゆっくりと動いていた。
まるで夜の水面をすべるように。
夜の八時四十五分。
最初の花火が、音を立てて夜空に上がった。
ドン、と響いて、空に大きな光の花が咲いた。
湖の水面にも、赤や青の光がゆれていた。
「わあ……」
さくらちゃんが、小さく声をもらした。
私は空と湖を見ながら、星の光と花火の光がつながっているような気がした。
さっき見た星座の線が、まだ頭の中に残っていた。
赤、青、緑、金色の光が、空に次々と咲いていく。
ゆうとくんがぽつりと言った。
「星もきれいだけど、花火もいいね。夜空がぜんぶ、光ってるみたいだ」
みのりちゃんは、カメヤマさんに写真をお願いしていた。
たけるくんは「花火ってどうやって作るんだろう」とつぶやいた。
りくくんとたくみくんは、芝生のまわりを元気に走り回っていた。
ときどき空を見上げては、「今のすごかった!」と声をあげていた。
そうたくんは、みんなの様子を見ながら、うれしそうに笑っていた。
花火が終わると、私たちはバスに乗って宿泊施設へ戻った。
夜はもう遅かったけど、軽めの夜食が用意されていた。
卵、ツナ、野菜のサンドイッチ。
それから、冷たくてさっぱりしたフルーツゼリー。
ツナの塩けがちょうどよくて、ゼリーの冷たさが体にしみた。
みんなは静かにサンドイッチを食べていて、少しだけ眠そうだった。
私は、さくらちゃんと並んでゼリーを食べながら、今日の空を思い出していた。
星の光。花火の光。湖の光。
どれも、ちがうけど、どれもきれいだった。
声をかけたことも、星を見たことも、全部が自分の中でつながっていた。
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