第6話 冬支度
レオハルトとエルドが、キメラ討伐に出掛けた、その日の午後。
家の掃除を済ませたリディアは、いつも持ち歩いている革鞄からノートを取り出した。
ぱらぱらとめくり、小さくつぶやく。
「これだわ」
開いたページには、冬支度について書かれている。
先日、冒険者ギルドに行った際、エマが教えてくれたのだ。
「ローザリンデはすごく雪がふることがあるから、みんな冬支度するの!」
「まあ、大変! わたしもしないと。何をするの?」
「そうね。薪を集めたり、ストーブの準備をしたり、あとは保存食なんかも作るわ」
そして、教えてもらったものを全てノートにメモし、わたしもやろうと帰って来た、という次第だ。
リディアはノートをながめた。
まずは保存食作りから手をつけよう、と決める。
そして、彼女は庭から林檎をとってくると、ジャムを作り始めた。
鍋に砂糖と林檎を入れてグツグツと煮ると、甘い香りが家の中に広がる。
その後、ドライフルーツを作ろうと、葡萄と柿を収穫して、日当たりの良い場所に並べる。
(ふふ、何だか楽しいわね)
――こんな感じで保存食作りに熱中すること、4日。
夕方近くになって、疲れた顔のレオハルトとエルドが帰ってきた。
どうやらキメラがなかなか見つからず、方々を探し回ったらしい。
その日は、3人で楽しく夕食を食べる。
そして、翌日、
「また来ますね! 次は弟とか言われないで下さいよ!」
「……うるさい、早く帰れ」
こんな会話を交わしながら、エルドが立ち去った後、2人は冬支度を始めた。
レオハルトは、庭で干し肉やベーコンを作り、リディアはピクルスやスープベースを作って瓶に保存する。
街に行って温かいブーツやコート、ふわふわの羽毛布団などを買う。
たくさんの荷物を抱えて街を歩きながら、リディアが横を歩くレオハルトを見上げた。
「雪って見たことある?」
「ええ、ありますよ。ディーン帝国の北部はかなり寒いですからね。リディアはないんですか?」
「あるけど、たくさん積もっているところは見たことがないから、少し楽しみだわ」
「そうですか。多分あと少ししたら嫌というほど積もると思いますよ」
そんな会話をしながら、家に帰る。
そして、食料貯蔵庫が美味しそうな食料でパンパンになった頃には、ローザリンデの街に雪がちらつき始めていた。
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