魔術実践


その後数回の訓練の末、僕は気づくことがあった。


・この魔術によって浄化対象に選べるのは複数可能。

・炎は必ず僕の身体の一部、もしくは全身から放たれる。

・遠距離技として使うためには手のひらから放つ必要がある。

・完全詠唱は魔術オフにした後にもう一度使う時まで必要ないことがわかった。ただし「浄化せよ!」は必ず言わなくてはならない。

・一度放った炎はその場に残り続け、僕によって操作することができる。

・一度に身体から出せる炎には限界があるが、その限界にはこれまで放った炎は関係ない。


このぐらいだろうか。

何回も魔術を放った後、黒谷は満足そうにしていた。


「明日は真白井と戦ってみよう」


というわけで、翌日。


『今回は模擬戦だ。互いに相手を傷つけることのないように魔術の対象はしっかり選ぶことだな。相手の魔術を喰らえば負けだ。互いに準備ができたことを確認してから開始しろ』


黒谷の声がスピーカーから響く。


『頑張れよ礼賛、応援してる』


プツン、とスピーカーから音が消える。


「というわけで、よろしくお願いします、真白井さん」


「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。まぁお話は試合後にして、早速始めますか」


真白井さんが杖を構える。


「はい、よろしくお願いします」


僕も拳を構える。


「では、失礼して」


その言葉と共に真白井さんの周囲に青い光が浮かび上がった。


「神聖なる炎は不浄を浄化する。

神に作られし正義の象ちょッ!」


詠唱を続けようとした瞬間、真白井さんが水を放った。

僕は間一髪で体を逸らし避ける。


「詠唱をさせてくれると思いましたか?残念ですがそういうわけにもいかないんですよね」


真白井さんの攻撃は止まない。

休みなく攻撃が襲いかかる。

しかし一度に放たれる攻撃の量は少なく避けれないわけではない。

恐らく詠唱をさせないための攻撃。

どう詠唱するか。

さっきの攻撃で詠唱が途切れた。

また最初から詠唱をしないといけない。

ならば!

僕は右に身体を向け足に力を込め走り始める。

僕が即興で考えた作戦、それはひたすら走ることだって。

走りながら避けるのではなく、走るという行為自体が避けることになるように走る。

これによって脳のリソースを詠唱に割くことができる。

そして次に重要なのが、早口である。


「神聖なる炎は不浄を浄化する神に作られし正義の象徴我が身体から放たれ不浄を浄化せよ!」


「は、早口……」


身体の奥底から熱い何かが膨れ上がる。

僕は両手のひらを真白井さんに向け炎をの球体を放つ。

その球体が真白井さんの攻撃に衝突した瞬間、爆炎が起こった。

真白井さんをも巻き込むほどの爆炎。

しかし、炎の中から青い光線が放たれた。

その光線は僕の頭の近くを通った。

炎の中から真白井さんはゆっくりと姿を現した。

真白井さんは水の玉の中にいた。

レジャー施設にあるウォーターバルーンを彷彿とさせる姿だった。


「ここからが本番……ですよね?礼賛くん」

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