魔術訓練


黒谷に連れてこられたのはいつもの訓練場だった。


「よし、じゃあ魔術の構築だ」


黒谷はポケットからライターを取り出した。

すごく安っぽいライターだが、しっかりと火はついた。

火がついたライターを黒谷は僕の目の前まで近づける。


「この火を見ながら俺の話を聞いてくれ。お前が今から使う魔術は火による浄化だ。真白井の洗礼術式の火バージョンと言っても良い」


僕の目と鼻の先で小さなに火は揺らいでいる。


「いいか、お前はまだ未熟だ、故に真白井のように何の呪文も無しに使えるわけじゃない。そもそも宗教的には神聖の象徴だからな。いいか、今回必要なのは、何から、何を出して、それはどんな効果なのかを言うことだ」


黒谷はライターをしまい僕の横に移動する。


「両腕を前に突き出せ、詠唱は俺に続いて唱えろ、炎をイメージし続けるんだ」


黒谷の言う通りに従順に従う。


「神聖なる炎は不浄を浄化する」


「神聖なる炎は不浄を浄化する」


「神に作られし正義の象徴よ」


「神に作られし正義の象徴よ」


「我が身体から放たれ」


「我が身体から放たれ」


「不浄を浄化せよ!」


「不浄を浄化せよ!」


その時、身体の奥から熱いものが込み上げてくる感覚が身体中を駆け巡った。

熱さが流れ腕に、そして手のひらまで届いた時、前に向けている手のひらから赤い何かが吹き出してきた。

その赤い物はどんどん吹き出し球体に近い形になる。

炎、そう、これは炎だった。

そして僕は身体に従うまま腕に力を込める。

炎は発射され壁に激突した。


「よくやった、礼賛」


黒谷は僕の肩に手を置く。


「成功だ」

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