何が起こったか


※ 礼賛視点


数分間、外で待っていると小屋の中から黒谷が出てきた。

一人の大男を引きずっていた。


「黒谷!」


僕は黒谷の名を呼ぶ。

黒谷は僕に気づいたようで、僕に近づいてくる。


「全部終わった、今回の事件の犯人は俺の魔術で消滅したが、大物を捕まえたぞ」


黒谷は引きずっている大男に目をやる。


「そいつは?」


「魔術テロリストの『皮の中の虚無』その幹部だ」


「はー、そういうのもいるんだな」


「こっから一回帰って上の連中から判断を仰ぐ、そっち持ってくれ」


「あぁ、分かった」



と言うわけで今、僕は戻って自分の部屋にいる。

あの時黒谷が捕まえたやつは僕が思っていたよりやばいらしく、本部に到着した瞬間、鎖でぐるぐる巻きなされてお札とかを貼られていた。

黒谷は僕が思っているより強いらしい。

回収しにきた明らかに僕たちより年上の人にさん付けされていた。

僕の初任務は一体どこに行ってしまったんだ。

結構楽しみにしていたんだぞ。



 

一方その頃、黒谷では


ある会議室。

そこには黒谷と、五人程度の魔術師がいた。


「では、聞かせてもらおうか、無為を捕らえた経緯を」


「はい、私は新人の礼賛の初任務補助のため、バルバトス召喚儀式が行われているという小屋に向かいました。相手は三人の魔術師という話でした。まず現場に到着したら、新人の礼賛魔術師と私が魔力探知をした時、小屋の中には一人しかいないことがわかりました。緊急事態の可能性があると判断した私が一人で乗り込んだ結果。中に無為がいたのです」


「なるほど、では使った魔術についてを」


「はい、セフィロト術式のイェソドを経由したガブリエル、ホドを経由したラファエル、イェソド、ホド、ネツァクによる魔術的三角形による現実世界への干渉を行いました」


「結構です、黒谷魔術師。今回はよくやってくれました。貴方が破壊した小屋内部の空間については現在ゼロから再構築を行なっています。礼賛魔術師の初任務についてですが、親維シタイ魔術師も同行させたらどうでしょう?」


頸梨クビナシとですか?」


「はい」


「わかりました、そうします」





僕がベッドで寝っ転がっているとノックの音が聞こえてきた。


「俺だ、黒谷だ、入るぞ礼賛」


「おう」


黒谷が扉を開けて入ってくる。


「お前の初任務が決まった。早速現地に向かいたいところなんだが、紹介しなくちゃいけない人がいる」


黒谷はそう言うと部屋の外に「入ってこい」と言った。

そうすると魔術師が一人、僕の部屋に入ってきた。

僕は、それを知っていた。

あの時、あのクラスで、僕を殺しそうとした、美しさという概念。


「紹介するよ。今の俺の相棒、頸梨親維だ」


「はじめまして、私は……」


数秒間の沈黙。

黒谷が彼女の耳元で何かを囁いた。


「あぁ、そう、頸梨親維、十七歳。よろしくね」


「え、あ、はい、よろしくお願いします」


僕は立ち上がり頭を一度下げる。

彼女は僕の方を見ず空を見つめている。


「詳しいことは俺が言おう」


黒谷がぐいっと頸梨さんの前に立つ。


「彼女は俺と同じぐらいの時にこの『夜明け前』に入った魔術師だ、少し変わっているやつだが、仲良くしてやってくれ」


「え、あ、うん」


あぁ、なんて美しい人だろう。

短い髪でよく見える首。

そして大きな身長。

美しさの化身のような人だ。


「おらぁ!」


そんな事を考えていると黒谷が唐突に僕の事を殴ってきた。


「な、何するんだ!」


「すまん礼賛。けど早い段階でこれをしとかないと大変なことになるんだ」


「はぁ?」


「頸梨は、サキュバスなんだ」

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