雨とシャワーと、ひかるキミ
ヤマメさくら
1
帰り道、突然、雨が降り出した。
「もうっ、こんなの聞いてないよ」
たまたま校舎の昇降口で出会って一緒に帰っていた幼なじみのひかりが横でぼやく。
公園の東屋。
僕たちは雨宿りをしている。
「そうか? 俺は聞いた。確か天気予報で、午後は急な雷雨がどうこうって……」
言いながら僕はひかりの方を見て、気づいた。そしてスクールバッグからタオルを取り出す。大判のやつ。持っていてよかった。
「ほい。使えよ。きれいだから」
「え? いいよ、自分が拭きなよ」
「拭かなくていいから、肩にかけろよ」
「え?……うあっ」
ひかりの夏服のシャツは雨に濡れて透けている。僕はしっかりとは見ていない。今だって目をそらしている。ひかりが慌ててタオルを肩にかけている気配がする。
「ありがと」
「うん」
僕はひかりの方を見る。タオルはちゃんと役立っていた。
「あ」
目を見開いて、ひかりが声を出した。
「何?」
「今、もっとよく見ておけばよかったって思ったでしょ?」
「思ってねえよ!」
「冗談だよ」
ひかりが笑う。
♪ キラキラ
ん?
やけにひかりの笑顔がきらきらして見える。
「あ、雨あがってる。帰ろうよ」
「あ、ああ」
なんだ、きらきらは、雲の間から太陽が出て、陽が濡れた髪に当たったからだな。そっか……。
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