第48話 ただのお礼だからな

「マルスさん、だいぶ腫れが引きましたね」

「ああ、助かった。あっ、後であの薬を売っているところを教えてくれ」

「いいですよ」

「あっ、あと……」

「なんですか?」


 私は制服のポケットから、ハンカチを雑に取り出した。


「こ、これをやる」


 今朝、何かお礼を渡そうと思いつき、無難なものを選択したつもりだ。買いにいく暇がなかったのもある。

 私の好きな色のものを持っていてもらいたい。

 そんな気持ちはさらさら――いや、少しある。恥ずかしいが。


「昨日の礼だ」

「えっ、いいんですか?」

「ああ、早く受け取れ」


 私は顔が熱くなるのを感じ、つい目を逸らして強く言ってしまった。

 もう、恥ずかしいから早く受け取れ。


「すみません。ありがとうございます」


 そう言って、ハンカチを受け取るべく、私の手にラルの指が触れた。


「ひうっあ」

「ど、どうしました?」

「な、なんでもない」


 当然、そうなることは分かっていたのに、つい声を上げてしまう。

 その時だった。

 不意に社長が現れ、皆に聞こえるような声でこう言った。


「あー、みんな、手を止めて事務所に集まってくれ」

「は、はい!」


 そう言って、私は近くにいたみどりに生産ラインを止めるように指示をする。

 彼女が小部屋に入って操作すると、機械が大きな音を立てて止まった。

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